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流石に敵機も驚いてるのか動きが僅かに乱れている。
正確には攻撃行動ではなく、観察に入ったようだ。 気持ちはよく分かる。
確かにあの誘導兵器の特性上、射線を視認可能ではあった。
つまりはどう飛んでくるのかが分かるのだ。
後は発射のタイミングに合わせて撃てば当てられない事はない――はず。
だからといって可能かどうかと問われると答えはノーだ。 少なくともヨシナリには真似できない。
シックスセンスで敵のエネルギー流動が見える事を差し引いても合わせるタイミングはかなりシビアだ。
ふわわ並みの反応か未来予知でもない限りあそこまでの精度で合わせるのは難しい。
敵機もまぐれか何かと思ったのかもう一度見せてみろと言わんばかりに発射。
グロウモスは即座に反応。 また撃ち落とした。
しかもただ撃ち落としたのではない。 敵機は撃つタイミングを微妙に変えていた。
――にも関わらずグロウモスはそのタイミングを正確に掴んで合わせる。
敵機もまぐれではないと確信したらしく、グロウモスが被せに来るのを防ぐ為にタイミングをずらして何度も撃ち込むがその悉くを迎撃。 あまりの光景にその場にいた全員が絶句していた。
それほどの絶技だったからだ。
「あのグロウモスさん。 これ、一体どうやってるんですか」
「うん。 何となく分かった。 相手がこっちを狙って、撃とうとしてるのが分かって――ううん。 感じた? うん。 何かどのタイミングで引き金を引くのかが分かって、それに合わせる形でこっちも引き金を引けば撃ち落とせるって何となく分かって……」
グロウモスは自分でも上手く言語化できないのか答えながらもブツブツと自己に対する考察に移行していた。
「姉と同じですね。 グロウモスさんは恐らくですけど、相手の殺気のような物を感じ取ったのでしょう」
「さ、殺気?」「なんか漫画みたいな事を言いだしたナ」
馴染みのないツガルとポンポンは何を言ってるんだといった様子だったが、ふわわを散々見て来たヨシナリからすればああそっちかーといった感想しかなかった。
シニフィエ曰く、意識のフォーカスを感じ取るなにからしいが、射線が見える状態なら多少は感じ取り易くなるのかもしれないと勝手に納得した。 理屈がさっぱり分からないので、真似できる気が全くしないが、ある程度は許容しないと訳が分からないで脳が処理して対抗策を練れなくなってしまう。
映像の中ではグロウモスはケイロンの背に乗り不安定な姿勢にも関わらず敵機の攻撃を神がかかった狙撃で抑え続けていた。
その一点を切り取っても大活躍といえるが、彼女があの敵機を抑える事の意味は大きい。
何故なら空から飛んでくるミサイルの精度が大幅に落ちたからだ。
その様子を見てアドルファスが首を傾げる。
「こいつがエネミーを操ってたのは確定なんだろうけど、どんな感じで操ってたのか? まさか一機一機に指示出して他って訳じゃないだろ?」
「個別に指示を出してる訳じゃないと思いますけど、全体に対して割と具体的な指示を出してたんだと思います」
ミサイルに関しては着弾位置を細かく指定――恐らくはこの範囲にばら撒くような命令なのかもしれない。 映像を見返せば分かるが、ミサイルは移動する味方を追いかけるような落ち方をしている。
つまり、指示が出せなくなると移動した後も同じ場所にばら撒く形になるのかもしれない。
「――つまり、それを嫌がって狙う範囲をかなり広く指定して後は放置って形にしたんじゃないかと俺は思ってます」
突撃して来るエネミーに関しても似た傾向があった。
当初はしっかりと陣形を組んで突っ込んで来ていたが、余裕がなくなったと同時に崩れ、突破を許す形となった点からも大きく外していないはずだ。
「なるほど、ドローンの使い方に通じるものがあるな」
「これに関しては想像も含まれてますんで深堀したいならジェネシスフレームのアップグレードにかこつけて運営側に問い合わせてもいいかもしれません」
特にドローンを多用するアドルファスなら自然な流れで聞き出せるかもしれないと少し思っていた事もあったからだ。
「あぁ、そりゃいい。 値段次第なら俺も使ってみてぇな」
「エネミーを操るなんて便利すぎる代物は無理かもしれませんが、下位互換は行けるかもしれませんね」
そんな会話をしている間にも映像は進む。
視点は俯瞰。 南に向かったタヂカラオ達がエネミーを突破し、拠点を識別できる距離に近寄った所で正体を見極められたのだが、敵側もそれがスイッチだったようだ。
地下施設への直通の通路がある複合拠点。 これの厄介な点はメガロドン型が常駐している事だ。
タヂカラオ達の接近に気付いたメガロドン型がゆっくりとした動きで出撃。
射程に捉えたと同時に攻撃を開始した。
「苦労して突破したらこの仕打ちだよ」
「いや、本当にお疲れです」
肩を落とすタヂカラオに労いの言葉をかけながらも視線は北側へ。
ヴルトム達の方は通信拠点で他所からエネミーを呼び出す面倒な代物だった。
こちらに関しても拡大すると思わず顔を顰めたくなる。
何故なら大量の敵性トルーパーが待ち構えていたからだ。
「クソ過ぎる! 明らかに射程に入るまで待ってる感じだろ」
「明らかに見えてる動きね」
マルメルが声を上げ、アリスはやや他人事のように呟く。
――突破されるのも織り込み済みか。
動きのなさから突破された時の為の保険だろう。
この様子だとエネミーはいくらでも繰り出せるが、中身が入っているであろうトルーパーは替えが利かないのだろうか?
もしかしたら内部ルールで撃破されると同じ中の人は出撃不可という物があるのかもしれない。
タヂカラオの方は航空戦力を上手に使ってメガロドンを地上から引き剥がしつつ、削りに行っている。
だが、ヴルトムの方はそうもいかなかった。 「大渦」のメンバーが大多数を占めている事もあって、突破に手間取っていたからだ。
ヨシナリは無言でカメラを引いて更に戦場を俯瞰する形にした。
理由は北側で突出した機体が居たからだ。 ホーコート。
彼の動きはこれだけ引いてもよく目立っていた。 いや、もしかすると悪いのかもしれない。
ただ、働きに関しては大したものだった。 単騎で防衛線を突破。
拠点の上空に出て、敵性トルーパーの対空砲火を引っ張り出して伏兵が要る事をヴルトム達に知らせていた。
誤字報告いつもありがとうございます。
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