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「鬱陶しいな!」
ヨシナリは旋回で躱してお返しとばかりにアトルムとクルックスでバースト射撃。
推進装置を撃ち抜かれたオビディエンスフレームが墜落していく。
反応炉に近づくにつれて敵の防衛線が分厚くなっていっていき、目視できる距離に達したら碌に進めなくなってしまった。
進み辛いとかではなく、物理的な話だ。
複数の機体が上から弾幕を張って押し返しに来る。
当てるつもりではなく、とにかく空間を埋めるようにばら撒きに来るので躱したければ距離を取るしかないのだ。
リミッター解除で通る所までは行けるが、取り付いて反応炉を掘り起こす作業が必要な以上、後ろを守ってくれる味方が必要だった。 誰かが追いついて来てくれる事を期待しての先行だったが、現状は少し厳しそうだ。 ベリアルを筆頭に空中戦ができる高機動機を持ったランカーは下に行ってしまった事もあって呼び出す訳にも行かない。
Bランク以下のプレイヤーも下での対処に忙しい。
欲を言えば攪乱もできるベリアルか、硬いポンポン、視野も広く、敵機の拘束もできるタヂカラオ辺りが来てくれると非常にありがたいのだが――
ベリアル、ふわわの反応がロストしている。 どうやら下でやられてしまったようだ。
ユウヤの反応が生きているので全滅はしていないが、最悪の場合オペレーターが上がって来る可能性も視野に入れなければならなそうだ。 そうなると詰む。
――急がないと不味いな。
ユウヤなら何とかしてくれると信じたい所ではあるが、焦りは止められない。
一か八かで行くか? 最悪、停止は諦めて爆発させれば一応、勝てはする。
パンドラのリミッター解除で突っ込んでイラで掘削、そのまま反応炉を破壊。
考えるができるかもしれないと判断するのは焦りが生んだ希望的観測だろう。
しくじった場合、非常に不味い事になる。 もう少し、せめて何機か上がってくるまで――不意に下から無数のレーザーが敵機を射抜き、巨大な弾体が柱に突き刺さった。
「へ、騎兵隊の登場だぜ!」
下から上がって来る味方機の反応。
まんまるの機体とその上に肩車のような形で乗っているマルメルのアウグストが見えた。
「え、援護しますぅ。 今の内に反応炉の処理をぉ……」
「本当は俺がぶっ壊してやりたいけどここは譲ってやるぜ!」
まんまるがプラズマグレネードを放って空中で炸裂させて敵機を散らし、マルメルがヨシナリを狙っている機体をリトル・クロコダイルで追い払う。
それに紛れる形で一機、上がって来る機体が居た。 ホーコートだ。
まんまるの爆撃で体勢を崩した機体をバトルライフルで次々と射抜く。
弾が切れたと同時にブレードを抜いて一閃。 敵機を一撃で両断。
その間にバトルライフルのマガジンを排出し、いつの間に付けたのかレーザー誘導で交換。
早い。 挙動がかなりスムーズだ。 特に敵機に対しての観察眼――当て易い相手を瞬時に見切る動きは以前に比べてかなり精度が上がっている。
――本当なら素直に褒めたいんだけどなぁ……。
視れば見る程にチート特有の硬さのような物を感じるが、ここまで気持ちよく撃墜している点からユニオン対抗戦で当たった連中と同じで相手に合わせた挙動を取るようにアップグレードされているのだろう。 単純に敵機を撃墜するだけでなく、明らかにヨシナリの突破を助ける動きをしていた。
チートは褒めたくないが、助けようとしてくれる気持ちだけは素直に受け取ろう。
そう切り替えてパンドラを200%で解放。 加速して敵の防衛線を強引に突破。
前回に比べると穴を開けるハードルは低い。 理由は反応炉の移動速度だ。
ゆっくりではあるが速度は一定。
つまりは内部が空洞か、エレベーターシャフトのような縦穴になっている可能性が高い。
なら狙うべきは少し上だ。 イラを抜きながら全開の加速。
放たれた矢のようにイラが柱に突き刺さる。 ギミックを起動。
内蔵された丸鋸が唸りを上げて肉を抉る。 血液のような液体が噴き出し、肉が飛び散る。
「これ、絵面的に合ってるのか?」
そう言いたくなるほどにショッキングな絵だった。
基本的にトルーパーでの潰し合いなのでこの手の流血表現はかなり浮いている印象だ。
敵機が止めろと言わんばかりに群がるがホーコートが一部を処理して穴を開け、それを抉じ開けるようにまんまるが機体を盾にするようにヨシナリの背後に付く。
マルメルがおらおらと吼えながらリトル・クロコダイルでまんまるの死角に弾をばら撒いて敵機を追い払う。 だが、数が違う事もあって弾幕が襲って来るが、二人の機体が展開したフィールドで防御。
ただ、フィールドの特性もあって敵機も実体弾に偏重している。 その為、二人は自前の装甲で文字通り、体を張って攻撃を防いでいた。
「ヨシナリ! 急げ! あんまり長くは保たねぇぞ!」
「悪い。 今やってる」
肉を抉ると金属質な固い感触に当たる。 やはり全て肉ではなかったか。
バキリと何かを破壊する感触。 手応えが違う。 恐らくは機体を吐き出す為の仕組みだろう。
機体が一気に沈み込む。 よし、中に入れそうだ。
突き抜けると空洞のような細長い空間に出る。
下を見ると巨大な球体がゆっくりと上がってくるのが見えた。
シックスセンスでスキャニングすると明らかだが、内包しているエネルギー量が桁外れで計測不能と表示されている。 惑星丸ごと賄っているという設定の代物なのだ半端ではない。
さて、この化け物。 どうやって破壊ではなく、機能停止に追い込めるのか?
実を言うと「思金神」では既に解体に成功しているのだ。 シックスセンスで流動を視ればどこで制御しているのかはすぐに分かる。 後はそこを破壊するだけなのだが――
「まぁ、そう簡単には行かないよな」
壁から敵機が次々と這い出して来る。
イラを投げ捨て、アシンメトリーを抜いて動き出す前に仕留め、銃口を反応炉へ。
こうして見ると人間の心臓みたいな見た目だなと思いながら制御部分に撃ち込むが通らない。
――何発が撃ち込まないとダメか。
二発、三発と撃ち込みながら上から来た敵機に対する処理――できなかった。
上からバラバラと敵機が降って来たのだ。 アシンメトリーだけでは処理しきれない。
肉薄した一機がホロスコープにしがみ付いてきた。 振り払おうとすると二機、三機とへばりつく。
「げ、やば――」
落ちながら推進装置を噴かす敵機の勢いに抗えずに縦穴を落下していった。
誤字報告いつもありがとうございます。
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