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――あれ?
予想外の手応えにヨシナリは思わず首を傾げる。
マルメル、アリス、まんまるで移動コースを制限し、ポンポン、ヨシナリで攪乱しつつ撃破を狙うというのが現状の組み立てだったのだが、躱される事を想定していたイラの一撃が当たったのだ。
何らかの手段で欺瞞しているのかとも思ったが、爆散した残骸はそのままで消える気配もない。
「仕留めた、のか?」
当てる気で振ったのは間違いないのだが、高い確率で躱されると思っており二手、三手先の事も考えていた事もあって困惑は強い。
「やったナ! 最後の動きが少し気になるが、中身があるならそういう事もあるんじゃないか?」
「……まぁ、そうですね」
気にはなったが、ベリアル達がまだ戦っているのだ。 そちらの援護に向かう必要がある。
ざっと戦況を確認。 タヂカラオ達はメガロドン型と交戦中だが、かなり押しており、あの様子だと助けは必要なさそうだった。
反対側ではヴルトム達が通信拠点に猛攻をかけている途中だが、こちらも侵入に成功し、これから制圧を試みるとの事。 こちらも問題なさそうだった。
後はベリアル達が相手をしている悪魔型を処理できたのなら見えている範囲でのイレギュラーの排除は完了と言える。
――さっさと決めに行くか。
あの悪魔型は確かに強いが総合力なら以前に戦ったドローン使いの方が格上だ。
加えて、例の強化装甲を使用していない事もあって前回に比べると脅威度がいくらか落ちている。
今回は既知の敵という事と戦力が揃っている事もあって、撃破は充分に可能と判断していた。
こっちの成長を見せつけて度肝を抜いてやる。 そんな気持ちもあって少し体に力が入ってしまう。
そんな前のめりな気持ちでヨシナリは機体を加速させた。
「ちょっとサリサ!?」
サリサの反応がロストした事で思わずジョゼが声を上げる。
――あー、ごめーん。 レポート作成しながら戦ってたら負けちゃった。
後は頑張ってねとやや投げ遣りな一文が送られてきた事でジョゼは小さく溜息を吐いた。
流石に責めるのはお門違いと理解しているジョゼは強くいえなかったのだ。
そもそも今回は彼女の担当だったところを無理にねじ込んだ以上、ジョゼに文句を言う権利はなかった。
正直、アメリアに煽られてムキになった結果という事もあったが、彼等とまた戦いたいといった気持ちに偽りはなかった。 負けたままで悔しいのもあるが、中々に心躍る勝負だったのだ。
アレをまた味わいたい。 そんな気持ちもあったからだ。
「これは負けるかな? 負けるかも? でも、まぁ、その時はその時」
アメリアとの賭けの内容を忘れた訳ではないが、どうせ元々自分達オペレーターに自由なんてあってないような物なのだ。 だから、制御を奪われたとしてもアメリアにはそこまで大それた事が出来ない。
やり過ぎると彼女自身が処罰される対象となるからだ。
ツガルの機体が高速で回転しながら突っ込んで来る。
それを躱すと下からユウヤが散弾砲で牽制射撃。
躱すと即座にふわわとベリアルが懐に入りに来る。 やや粗いが連携としての形は出来上がっていた。
ベリアルは前回に散々見た事もあって評価は覆らないが、ふわわ、ユウヤと当たるのは初めてという事もあって面白いとジョゼは思っていた。
こちらの反応速度が自身と同等以上と察して即座に小太刀の二刀に切り替え、正面から打ち合いに来る辺り、中々にいい性格をしている。
――というより、反応だけなら私と同等? 凄い!
ジョゼは特殊な方法でネットワークに接続している事もあって、通常のプレイヤーよりも高い反応速度を出し易い環境なのだ。 その為、同じ能力の相手なら圧倒できるというアドバンテージがある。
――にもかかわらず、反応速度が互角なのは素の能力で負けている事の証拠といえる。
ジョゼからすればちょっと信じられない話だった。
現に目の前のプレイヤーはそれを実行している。 訳が分からないが、面白い相手である事だけは分かった。 反応速度では負けているが、機体、環境による補正を乗せた総合力でなら勝っている事もあって一対一なら充分に勝てる相手だ。
だが――空間転移の兆候を感じて背後に短剣による斬撃。
現れたベリアルの分身を切り裂き。
その間に斬りかかって来るふわわの連撃を片手でいなして強引な加速で振り切る。
僅かに距離を取るとアドルファスとカカラが一斉射撃で頭を押さえに来た。
転移で回避するが回避先に居たシニフィエが組み付こうと肉薄。
こちらもふわわほどではないが動きがかなりいい。 二人ともソルジャー+とは思えないほどだ。
明らかに掴んでの拘束を狙っている点からも自らの技量と性能差をよく理解している。
四肢を器用に使って打撃に見せかけて組み付こうとする戦い方も面白い。
ただ、ふわわに比べると考えてから動いている分、反応が遅いのだ。
――崩すならここからかな?
モタモタしているとヨシナリ達も戻って来る。 そうなると完全に袋叩きにされてしまう。
それまでに数を減らしておかないと不味い。 シニフィエの蹴りが飛んでくる。
明らかに誘っている一撃だ。 だから、ジョゼは敢えて乗った。
短剣で斬り落とすべく一閃。 シニフィエの蹴りは途中で軌道を変えて腕に当たる。
足首で引っ掛けてそのまま腕に絡みつこうとした所で空間転移。
転移先は0.5メートル左だ。 それだけで組み付きの態勢になったシニフィエが無防備になる。
掴んだ右手が消失し、敵機の正面に出る形になった。 そこを一撃だ。
脇腹からコックピット部分を通るように下から斜めに両断。
反応がロストする前に残った上半分を串刺しにしてふわわへの盾に――しようとして回避。
液体金属刃が通り過ぎ、シニフィエの機体だけを両断した。
『ね、姉さん酷い……』
『どうせ落ちてるんやから一緒やろ』
シニフィエの機体が爆発。 それに紛れてユウヤの電磁鞭が足首に絡みつく。
放電。 だが、ジョゼの機体はこの手の攻撃は効果がない。 ユウヤの舌打ちが聞こえたが織り込み済みだったようでガクリと機体の高度が落ちる。 地上に引き摺り下ろす気だ。
流石に回避先が限定される地上に降りるつもりはなかったので短剣で電磁鞭を切断。
ユウヤの態勢が崩れたので追い打ちと行きたかったが、ツガルの突撃に邪魔をされてできなかった。
そこで時間切れとなった。 何故ならヨシナリ達が合流したからだ。
誤字報告いつもありがとうございます。
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