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続けて行こう。 アリス。
光学兵器主体の中距離戦機。 サリサと同様のホバーを採用している事もあってスタイルが似ている。
そこを加味すると悪くないといった結論に落ち着いた。
動きも攻撃のタイミングもランク相応の高水準。 あまり言う事がないというのが本音だった。
連携に関してはやや疑問符が付く面もあったが、そこは自身が起点になる事で補っているといった印象を受ける。 少なくとも自分自身をよく分かっている動きだった。
そこは高く評価したいとサリサは思う。 何故なら行動の裏には深い思慮があるからだ。
そういったプレイヤーは基本的に迂闊な行動をあまり取らない上、突発的な状況に対しての振り幅も小さい。 常に一定のパフォーマンスを発揮するのは良い事だ。 評価4.3/5.0。
ケイロン。 撃破済みだが、アリスと同様に終始安定した立ち回りと機体の形状を活かした連携に関しては可能性を感じさせてくれる。 迫るワールドレイドではああいった味方との連携を活かした立ち回りは非常に有効だ。 そういった意味でもサリサとしては良い印象を受けた。
ただ、その形状故に挙動は読み易い事もあって撃破は比較的容易だった事に関しては要改善といった所だろうか?
期待を込めて評価4.0/5.0。
カカラ。 基本的に拠点制圧をコンセプトとした大型機は役割が決まり切っている事もあって、あまり言う事がない。 技量は介在するが、性能でゴリ押せるという手段がある以上、どうしても評価は低くなってしまう。 低くし過ぎると上がうるさいかと少し悩んだが、私見を求められていると勝手に解釈して評価を決める事にした。 評価3.5/5.0。
アドルファス。 汎用的なスペック、スタイル、突出した強みがないように見えるが、それにプラスドローンを扱う事で評価を大きく引き上げていた。 ドローンのリアルタイム操作は特殊なセンス――才能が必要な事もあって扱えるだけでも高く評価したい。 その状態であのパフォーマンスを発揮できているのはなるほど、Aランクプレイヤーとして相応しい力量といえる。 評価4.5/5.0。
Aランクプレイヤーはこれで全部かと一通りのレポート作成を終えたサリサは次にAランク以下のプレイヤーの評価に移る。 流石に全員は無理なので気になったプレイヤー――有望な者だけに絞るが。
グロウモス。 彼女に関しては今回、最も高く評価したプレイヤーだった。
こちらの狙撃のタイミングを盗んでレールキャノンを撃ち落としたのだ。
躱すのとは訳が違う。 正直、サリサにも真似できるか怪しいレベルの絶技だ。
ただ、極限の集中を要求される事もあって身動きが取れなくなっていたという欠点があったが、それを味方で補い、揺れる手元を物ともせずに成立させたのは流石の一言。
サリサの見立てではAでも充分に通用する素晴らしい技量だ。
恐らくそう遠くない内に上がって来るだろう。
弱点も多く、総合的に見れば荒い面は多いが、狙撃手としての完成形といえる精度は芸術の域だった。
加えてあのボビーを撃破し、過去の記録を遡れば味方のアシストがあったとしても格上の機体を次々と撃破している実績も見逃せない。 将来性も込みで評価4.1/5.0。
ヨシナリ。 このチームの中心。
彼に関しては色々と思う所の多いプレイヤーだ。 何故ならロッテリゼに目を付けられている。
あの女とサリサは部署こそ違うが立場上は同僚なのでどんな人間なのかは知っているつもりだ。
MOD推進派の中でも比較的、声の大きい女でアメリアを嫌っており、ミツォノロプロフの事をもっと嫌っている。 サリサもアメリアの事は嫌いだが、MODの方が嫌いだった事もあってロッテリゼに対しては良い感情は抱いていない。 好きか嫌いかの二択で聞かれたら迷わずに嫌いと答える程度の相手だ。
MODをばら撒いている連中の考えも理解している。
いつまでもオーバーSランクの水準を満たすプレイヤーが現れないのだ。
特にスポンサーからの突き上げが酷く、現れないなら作ればいいだろうという結論に至ったのは自然な流れだろう。 ICpwのユーザーは全世界で億を軽く超えるのだ。
それだけいるのにオーバーSランクはたったの20人。
色々あって今は13人だが。 大半がβ版上がりの者ばかり。
少し前に血迷った愚かな者達がβを再現すればいいとやらかした事もあったが悉く失敗。
サリサも記録でしか知らないが、あれは狙って再現できる代物ではない。
ミツォノロプロフは彼等の事を『超人』――ツァラトゥストラと呼称した。
正直、サリサは彼にはユーモアのセンスはあると思っている。
何故なら神の死んだ世界の話を引用するのは中々に皮肉が利いているとは思っていたからだ。
――だって「神」はいるんだから――
それともミツォノロプロフにとってアレはそうではないのだろうか?
小さく息を吐く。 余計な思考だったからだ。
意識を戻そう。 ヨシナリについてだ。
彼は非常にバランスが良い。
機動、回避、指揮とどれも高い水準で纏まっており、何よりも人を乗せるカリスマのような物を感じる。 そうでもなければここまでの規模の人数を集める事は出来ないだろう。
ただ、タカミムスビや大手ユニオンのトップのような多くの人を導くような物ではなく、己の求道の道連れ――茨のような苦難へと誘うような歪なものであると解釈していた。
彼自身が引き寄せた因果のような物の結果かもしれないが、今の状況を見ればあながち的外れではないと思ってしまう。 オペレーターが二人も参戦しているマップを引き当てている時点で尋常ではない。
サリサとしてもそれに乗って更なる苦難を与えるのもいいかもしれないと思ってはいた。
見立て通りの人物であるなら敗北すら糧にして成長するだろうからだ。
プレイヤーとしては悪くなく、Aには簡単に至れる器だろう。
ただ、素直に評価し辛い相手でもあった。 その為、少し抑え目の評価4.0/5.0。
――えーっと次は誰にしようかな――あ、しまった。
余計な事を考えていた所為だろうか。 回避を失敗してしまった。
正確には成功したのだが、一手読み違えたのだ。
視界の端で機体からエーテルを噴出させたヨシナリの機体が想定以上の加速で先回り。
咄嗟にレールキャノンを構えたが間に合わない。
そのまま大剣による横薙ぎの一閃で両断されてしまった。
「あちゃ~」
思わず呟く。
これは後で怒られるかもと思いつつ、これでレポートに集中できるからいいかと開き直った。
誤字報告いつもありがとうございます。
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