語学力ゼロで初出勤!? SNSの噂を覆す、爆速バイトスタートと絶品まかない
「語学力ゼロで、ドイツ到着から数日で初出勤……これ、冷静に考えて凄すぎない!?」
鏡の前でエプロンを締めながら、私は思わず独り言を呟いた。
渡航前、SNSで「ヨーロッパのワーホリは仕事が見つからずに詰む」「家賃と生活費で貯金が底をついた」という絶望的な体験談を山ほど読んでいた。だから、仕事探しには何ヶ月もかかる覚悟をしていたのだ。
だけど、私の目の前にある現実は真逆だった。
デュッセルドルフに到着して間もないというのに、私はすでに市内でも人気の「日系ラーメン店」でのアルバイトが決まり、今日がその初出勤日なのだ!
(本当に、岩間さんのサポートのおかげでスムーズに進みすぎてる……!)
ドキドキしながら職場のドアを押し、「おはようございます!」と挨拶をする。
「あ、咲ちゃん! 初日よろしくね〜!」
迎えてくれたスタッフの方々は全員日本人。バックヤードで飛び交う言葉もすべて日本語だ。
一瞬、「あれ、ここ日本のラーメン屋さんだっけ?」と錯覚してしまうほど、日本でアルバイトをするのと全く変わらない安心感に包まれた。
「咲ちゃんは実家が小料理屋さんなんだよね? じゃあ、今日はサイドメニューの焼き場を担当してもらおうかな!」
店長から命じられたポジションは、餃子を焼き上げ、唐揚げを揚げて盛り付ける「焼き場・揚げ場」の係だった。
まさに、実家で毎日のように手伝っていた経験がそのまま活かせる大役!
「はいっ! お任せください!」
◇
いざ開店時間が訪れると、店内は一気に満席になった。
厨房に次々と滑り込んでくるオーダー伝票。オーダー自体はシステム化されているし、厨房内は全員日本人なので言葉の壁はゼロだ。だけど、とにかくお客さんの数がすごくて目が回りそうになる!
「餃子3人前入ります!」
「唐揚げ上がりまーす!」
次々と注文をこなし、キツネ色にこんがり焼けた綺麗な餃子をお皿に並べていく。
ホールへ繋がるカウンターの向こうからは、ドイツ人の現地客や多様な国籍の観光客たちが美味しそうにラーメンをすすり、私が焼いた餃子をほお張る姿が見えた。
(オーダーに応えるので必死で『ドイツで働いてる感』はあんまりないけど……でも、私の作った料理をドイツの人たちが喜んで食べてくれてる!)
初出勤の緊張と、ひっきりなしに続くオーダーの波に、上がるときには全身クタクタ。だけど、胸の中は最高の達成感で満たされていた。
◇
「咲ちゃん、初日お疲れ様! これ、今日のまかないね」
勤務終了後、店長が差し出してくれたのは、出来立てのアツアツラーメンと、大きなお茶碗に盛られたご飯!
「〜〜〜っ! 美味しいっ!!」
疲れた身体に、濃厚なスープと麺が染み渡っていく。
美味しいまかないをお腹いっぱい食べられて、なんとこの日の食費はほぼゼロ。ワーホリ生にとって、この「食費が浮く」というメリットは想像以上に大きかった。
「咲ちゃん、仕事手際いいね! これ、お店で使う簡単なドイツ語の接客フレーズをまとめた紙なんだけど」
店長から手渡されたのは、1枚の紙だった。
『Willkommen!(いらっしゃいませ!)』
『Vielen Dank!(ありがとうございました!)』
『Einen Moment, bitte.(少々お待ちください)』
「シフトの人数によっては、いずれホールで接客も任せたいと思っててね。少しずつでいいから覚えてみて!」
「はい! 頑張ります!」
簡易的ではあるけれど、ついに私の「リアルなドイツ語のお勉強」も働きながらスタートした。
アパートへ戻る帰り道、夜風を浴びながら今日一日を振り返る。
不安だった仕事も無事にスタートし、お金を稼ぎながら、食費を浮かせ、少しずつ現地の言葉も学べる環境が手に入った。
(はぁ〜……本当に順調すぎるくらい順調だなあ)
「明日は何しようかな? スーパーで安くて美味しい食材を探す? それとも、ランニングを試してみる?」
考えるだけでワクワクが止まらない。私のデュッセルドルフ生活は、まだまだ始まったばかりだ。




