フランクフルト到着! 異国の地で待っていたのは、まさかの「超日本なお総菜」!?
羽田空港を出発してから十数時間。
眼下に広がる広大な緑とヨーロッパ風の街並みを見下ろしながら、私の心臓はバクバクと音を立てていた。
(ついに……ついにドイツに着いちゃった……!)
岩間さんの丁寧な書類サポートのおかげで、ワーホリビザの発行は事前準備段階でバッチリ完了していた。
最大の難関だと思っていた入国審査(通関)も、パスポートと一緒にビザを見せると、コワモテの審査官が「Gut!(いいね)」とニッコリ微笑んであっけなく通してくれた。英語すらまともに話せない私にとっては、これだけで大快挙だ。
入国ゲートをくぐり、広いフランクフルト空港の到着ロビーへ出る。
大柄な外国人が行き交うアウェイ感に一瞬気後れしそうになったけれど、その不安は一秒で吹き飛んだ。
「咲さん、無事の到着お疲れ様でした!」
遠くから手を振っていたのは、オンライン面談の時と変わらない、トレードマークのすっきりとした坊主頭をした岩間さんだった。
遠くからでも一目で分かる存在感! 思わずホッとして、私は駆け寄った。
今回はオプション(+100€)で、フランクフルト空港からデュッセルドルフの住まいまで車で直接送迎してもらうプランをお願いしていた。大きなスーツケースを引きずって慣れない海外の電車に乗り換える必要がないのは、渡航初日の身としては神様みたいにありがたい。
車窓に広がるアウ토バーン(高速道路)の景色を眺めながら、岩間さんと楽しくおしゃべりすること約2時間半。車はデュッセルドルフの静かな住宅街に停車した。
◇
「ここが今日から咲さんが暮らす住居(WG)ですよ」
案内されたのは、3人でシェアする「WG(ヴェーゲー:ルームシェアアパート)」のお部屋。
鍵を開けて中に入ると、明るい陽光が差し込む一人部屋が待っていた。ベッド、机、棚、クローゼット、そして清潔なシーツ……生活に必要な家具や家電がすべて完璧に揃っている!
「一人部屋として十分すぎる広さ……!」
岩間さんによると、同居人は二人とも日本人女性とのこと。半年前から来ている人と、一ヶ月前に来たばかりの人。渡航前にメールで挨拶は交わしていたけれど、今は二人ともお仕事中らしく留守だった。
「本格的な生活オリエンテーションは明日行います。今日は長旅で疲れているでしょうから、近くのスーパーで買い物方法とおすすめ品だけ教えておきますね」
岩間さんに近所のスーパーへ案内してもらい、商品の買い方や「この冷凍ピザとパンが安くて美味しい」といった生活の知恵を伝授してもらった。
部屋に戻り、自分の荷物を解いてベッドでゴロンと体を休めていると——。
カチャリ、と玄関のドアが開く音がした。
「あ、帰ってきた……!」
緊張しながら部屋を出て様子を見ると、そこには優しそうな女性が立っていた。
「あ! 咲ちゃん? 初めまして! 相川です」
相川さんは26歳。おっとりとした癒やし系の雰囲気を纏っていて、すごく話しやすいお姉さんだ。
「部屋のルールとか、分からないことがあったら何でも聞いてね」と、丁寧にキッチンの使い方などを教えてもらっていると、再び玄関が開いた。
「ただいま〜! 今日もめちゃくちゃ忙しかった〜!」
元気な声とともに飛び込んできたのは、もう一人の同居人・斎藤さん(24歳)。
ショートカットが似合う、私と同じ「元気娘」というタイプで、会った瞬間に「あ、この人とは絶対に気が合う!」と直感した。
「咲ちゃん初めまして! 渡航初日でお腹減ってるでしょ? これ、私が働いてるバイト先から貰ってきた売れ残りのお惣菜! 今夜は咲ちゃんの歓迎会しよう!」
そう言って斎藤さんがキッチンのテーブルに広げたのは——。
「えっ……唐揚げ!? かき揚げ!? パスタサラダ……!?」
目に入ってきたのは、日本のデパ地下やスーパーでそのまま並んでいるような、完璧な日本のお惣菜ラインナップだった!
「デュッセルドルフの日系飲食店でバイトしてるとね、こうやって美味しいお弁当やお惣菜が貰えるんだよ〜」と斎藤さんがニシシと笑う。
「いただきます!」
一口食べた唐揚げは、サクサクでジューシーで、完全に「日本の味付け」そのものだった。
ドイツに到着した初日に、まさかこんなに美味しい日本の味に囲まれるなんて思ってもみなかった。
「デュッセルドルフは本当に日本人にとって暮らしやすいよ。バイトもすぐ見つかるし、ご飯も困らないし!」
「そうそう、休日はオランダまで格安バスで買い物に行ったりね」
相川さんと斎藤さんが、リアルなドイツ生活の楽しさをたくさん教えてくれる。
食卓を囲みながら二人の話を聞いているうちに、昼間までの不安は完全に吹き飛び、明日からのドイツ生活へのワクワクと希望が、胸の中で大きく膨らんでいくのを感じていた。




