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残夏の園(改訂版)  作者: ずんだもち
二章 軋轢
25/26

真実

ーー松村啓太視点ーー


彼女の話は凄惨な物だった。

私はと言うと、

終始開いた口が塞がらなかった。


「そ、それで、

里はどうなったんですか!」


一口。

清瀬さんは湯呑みを傾けると

それを側に置いて向き直った。


「舞さんと勇樹さんを

残して全滅・・・。

実質上、夜雀族は滅亡したわ。」


ーーー滅亡ッ!?


「じゃ、じゃあ沢見さんは・・・?」


「そう、まだこの話には

続きがあってね。」


清瀬さんは再度お茶を啜り、続けた。


「人里の病院の必死の救助のお陰で

二人は助かったの。

その時、舞さんが病室で

初めて娘の事を私に教えたの。


まだ里で隠れてるって。」


娘、可奈子さんだ。


「実際、彼女は言われた場所に

隠れてたわ。


命に別状は無かった。

傷も無かった。


でも、心が壊れていたそうよ。」


「・・え?」


「目の前であんな悲惨な状況を、

幼い彼女が見たら

気がふれるのは当然よ。」


ーーーPTSD。

私の脳裏にその4文字が頭を過った。


「・・・ですね。」


「それから人里の人達は彼女を連れて

診療所である程度治療したんだけど、

・・・治らなかった。


そして舞さんは夫と協力して

娘を療養することにしたの。


里より少し離れた所に

一軒家を建ててね。」


「そうですか・・・。」


「因みに里を襲った鬼達は、

私と他の部族で協力して、

根絶やしにしたわ。

もう悪さする奴はいないと思う。」


清瀬さんの目には怒りの色が

濃くなっている。


過去の出来事を

思い出しているのだろうか。


「で、あの子の事なんだけど・・・。」


私はそこではっとした。


「多分普通に話せてるのは

記憶喪失だからだと思うんだけど、

それにしてもおかしいわね。


里を襲った鬼達は

道具を使えるほど賢くないのよ。


言葉も話せないしね。


それに私達が駆逐したから、

もういないと思うし・・・。」


ここで沢見さんの話に繋がるのか。


「やっぱり、

罠にかかっただけですかね?」


「・・・でも虎ばさみって、

地面に置いてるものじゃない?」


木とかに吊っているなんて考えにくい。


「・・・うーん。」


腕を組んで考えてみても、

結果は同じ。


「一度、舞さんに聴いてみるわ。

明日は神社を空けるから、

留守番お願いね。


あの子、精神的にかなり不安定だから。」


「え・・・。」


さっきの話を聞いた直後なだけに、

かなり不安になる。


そう、この世界とて、

平和ではないのだ。


私は今まで、平和な部分しか

見ていなかったのだ。


「大丈夫よ、

幾重にも結界を張っていくから。


あの事件を教訓にね、

私はこの神社に結界を張ってるの。


前にも言ったでしょ?

"心悪しき者"は侵入出来ない

ようになってるって。


その代わり、絶対誰が来ても、

神社の敷地内から出ては駄目よ?」


清瀬さんは、努めて明るくそう言った。


「敷地内から、

出なければいいんですね?」


「うん。


結界の効果は神社の敷地内でしか

発揮できないから、絶対出ちゃ駄目。」


「わかりました。

清瀬さんもくれぐれも、

気を付けて下さい。」


「ふふっ・・・ありがと。」


明日から大変になりそうだ。

軽く挨拶を済ませ、

私達は沢見さんが寝ている

寝室へと向かった。


夏の終わり、

心地よい風が吹き抜けるこの神社で、

今までとは違った日常が幕を開けた。

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