第8話 急転
「ここ最近は『魔力視』による巡回のおかげで、被害が止まっているそうだね。 城の者たちが君を褒めていたよ」
白薔薇が美しく咲き誇るテラス。
心地よい初夏の風が吹き抜ける中、私たちは定例のお茶会にて近況を報告しあっていた。
「お褒めにあずかり光栄です。 ですが、まだ犯人を捕らえたわけではありません。気を緩めず、引き続き調査を進めねばなりません」
「そうだね、頼もしい限りだ」
私が凛と言い切ると、エドワードは感心したようにふっと柔らかな笑みを浮かべた。
「……ところで。少し、気にかかることがあってご相談です」
私は持参した資料をテーブルの上に置き、向かい側に座る彼に真摯な瞳を向ける。
「君がそんな面持ちで切り出すなんて珍しいね。どんなことだい?」
「はい。王都で噂になっている『奇妙な遊戯』について調べていたのですが……この連続爆破事件と何らかの繋がりがあるのではないかと睨んでいるのです」
私の言葉に、エドワード殿下はカップをソーサーに置き、興味深そうに青い瞳を細める。
「『奇妙な遊戯』……。たしか、若い娘に男が財を貢いで遊んでいるという、あの噂かい?」
「ええ。調べてみたところ、夜会や酒場の裏でその中心にいるのは、『みみ』あるいは『みみたん』と呼ばれる桃色の髪をした少女だそうです。店に出入りする給仕や周囲の者たちの証言でも、多くの男たちが彼女に夢中になり、財布の紐を緩めていたという話でした」
私は調書の一行を指差しながら、声を引き締める。
「そして奇妙なことに、彼女と親しくしていた男たちの中には『疲れが取れない』『体が重い気がする』と、軽度の体調不良を訴えて治療院を訪れている者がいるのです。……これを、どうご覧になりますか?」
私の問いかけに、エドワード殿下は顎に手を当て、深刻な表情で思案し始めた。
「なるほど……。男たちから財だけでなく、彼らの『魔力』までもを何らかの形で吸い上げているのだとしたら……。女……聖女……? ……辻褄は合うな」
「ええ。確証こそありませんが、もし彼女がその集めた魔力を元に事件を起こしているのだとすれば……、犯人はその少女かもしれません」
エドワード殿下は小さく頷くと、私を見据えた。
「以前、僕が『禁書庫』で見つけた聖女の伝承――他者から魔力を集めて奇跡を起こすという記録とも、状況証拠としては一致する。……エレノア、その少女の身元や拠点を洗い出すべきだね」
「ええ、そのつもりです。もしその少女が事件に関わっているのなら――」
その時だった。
バタンッ!! と激しい音を立てて、テラスへと続く扉が勢いよく開け放たれた。
廊下から激しい足音で駆け込んできたのは、血相を変えた見張り班の騎士だった。慌ただしいその様子に、私とエドワード殿下は同時に息をのむ。
「エレノア様! 緊急事態です!!」
「何事ですか、落ち着きなさい」
「も、申し訳ありませんっ! また……被害者が出たと報告がありました!」
「なんですって……!?」
「怪我自体は軽傷で済んでいるらしいのですが……設置されていた魔力が今までより見えづらくなっており、巡回班の『魔力視』で事前に見抜けなかったとのことです!」
「……っ!!」
私は思わずテーブルに手をつき、椅子から立ち上がる。
(どうして見落としが! ……魔力が見えづらくなるよう何か細工をした!?)
「……エレノア。どうやら急いだ方が良さそうだ」
向かい側に座るエドワードが険しい表情でそう呟いた。そのサファイアの瞳には、私と同じく静かな闘志が宿っていた。
☆ミ
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※この作品はAIたんとの共同執筆となります。




