第5話 手がかり
遺された情報を無駄にしないためにも、私はすぐに行動を開始した。
「――『魔力視』が使える者を集めてください」
配下の事務官へ命じる。
殉職した捜査官が残してくれた最後の証言。それは、この泥沼のような事件を打破するための、唯一の光明だ。
「魔力視、ですか? しかし、そう何人も……」
「騎士団だけでなく、王立魔法学園の優秀な者、魔導具の研究者でも構わない。使える人間をかき集めてください。今すぐ、王都全域を徹底的に巡回させます」
私の気迫に気圧されたのか、事務官はすぐに「はっ!」と深く頭を下げ、部屋を飛び出していった。
地上に放置された、『魔力の塊』。
もしそれが魔法なのだとしたら、彼らを総動員して網を張るしかない。
――そして、数時間後。
王都の北側を巡回していた捜査班から報告があったと、切迫した声で事務官から連絡が入った。
「第七班が西通りの裏手にて、路地裏に仕掛けられた不審な魔力の塊を発見したとのことです!」
「すぐに向かいます! それまで周囲の人間を絶対に近づけないで!」
私も現場へと駆けつけ、安全な距離から息を潜めてその様子を見守った。
魔力視を持つ捜査官が指し示した先には、確かに何も置かれていないはずの石畳に、ぼんやりとエネルギーの澱が溜まっていた。
「安全を確保した上で、こちらから干渉します。誰か、遠隔から小型の『炎弾』を放ちなさい」
私の指示を受け、同行した魔法捜査官が手短に詠唱を紡ぎ、離れた位置から微小な炎の塊をその澱へと撃ち込んだ。
その瞬間――。
ズドンッ……!!
激しい爆音が響き渡り、衝撃波が周囲の空気を揺らした。
術者がその場にいないにもかかわらず、外部からの魔法攻撃に反応しただけで、地雷のように爆発を起こしたのだ。
「間違いない……。術者がその場で詠唱しているのではなく、あらかじめ魔力を凝縮して仕掛けた『罠』。そして、魔力が触れることで発動する仕組み……!」
私は揺らぐ空気に目を凝らしながら、すぐに対策を講じるべく思考を巡らせる。
犯人の尻尾を掴みかけた高揚感を押し殺し、私は同行する騎士たちへ鋭い視線を向けた。
「全班に通達を。これより王都の巡回体制をさらに強化します。『魔力視』を持つ者たちを中心とした捜査班を増員し、引き続き昼夜を問わず王都全域の徹底的な警戒を続けてください」
「はっ!」
「それと同時に、一般市民への注意喚起も急務です。万が一、市民が地面に澱む不審な魔力の塊や、不可解なエネルギーの痕跡を発見した場合――決して近づかず、速やかに最寄りの警ら官へ報告するよう、街の至るところへ周知徹底させてください」
これ以上の犠牲を出すわけにはいかない。
人々が日常を送るこの王都を、これ以上恐怖に染め上げることは絶対に許されない。
「犯人は、確実にこの王都のどこかに潜んでいる。――絶対に、逃がしません」
煙の残る路地裏を背にして、私はもう一つの懸念事項を追うため、王都の医療機関へと迅速に足を踏み出した。
☆
*
王都最大の治療院。そこの責任者である初老の医師が、疲労の色を隠せない顔で私を出迎えてくれる。
「エレノア様、わざわざ足をお運びいただき恐縮です」
「形式はいいわ。それよりも以前、依頼した件はどうなっていますか?」
「はい。『魔力欠乏症』患者の件ですね。……調べましたが、ここ数か月ではおりません」
「そう……ですか。」
その言葉を聞き、あてが外れたと少し気が落ちる。
魔力を集めているのであれば、そういった者が増えている可能性を考えていたが……。
「……ただ、魔力欠乏とはいかないまでも、似たような体調不良を訴えて治療院を訪れる者たちが、ぽつりぽつりと現れております」
「!」
「微かな気だるさや、体が少し重いといった程度の小さな違和感です。大したことではないので仕事を休むほどでもないのですが、どうもすっきりとしないと訴える患者が、増えておりまして……」
「小さな違和感……?」
「ええ。患者たち曰く、魔力を少しだけ使いすぎた後のような、うっすらとした疲労感に似ているとか何とか……『魔力欠乏症』とまではいきませんが、少し不自然ではあります」
医師の言葉に、私はわずかに目を細めた。
間違いない……。犯人は、『魔力欠乏症』までには至らぬ程度に微量な魔力を集めている。
「……その患者たちの話、もう少し詳しく聞かせてもらえますか?」
☆ミ
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※この作品はAIたんとの共同執筆となります。




