第4話 魔力の塊
「――それで、教会の方はいかがでしたか?」
あれから数日後、私は執務室で積まれた書類の山と共に、騎士団からの報告を受けていた。
「駄目でした。信者たちを聞き取りし、神殿の関係者もくまなく調べてみましたが……有益な情報はもちろん、事件に関係する怪しい人物や不審な魔力の痕跡も見当たりませんでした。一部、寄付金を着服していた者などもおりましたが……爆破事件とは無関係のようです」
「そうですか……」
私は小さく息を吐き、こめかみを押さえた。
あの後も引き続き調査を続けてくれていた王子からの伝言でも、過去の文献に登場する聖女は等しく人々の病を癒やす等の奇跡を起こした美談ばかりで、今回の爆破事件のように魔力を悪用したような事例や前例は一切見つからないという。
聖女の”人々から魔力を集める”という手掛かりに飛びついたものの、結局捜査は行き詰まり、もどかしい閉塞感が胸を締め付ける。
――その時だった。
「失礼します!!」
静まり返った執務室に、激しい足音と共に扉が勢いよく開け放たれた。
息を切らせた騎士が、青ざめた顔のままよろめくように飛び込んできたのだ。
「どうした、そんなに慌てて」
事務官が騎士を落ち着かせるよう制するが、騎士は勢い収まらずまくしたてるように口を開いた。
「緊急の報告です……! 王都内を警戒巡回していた捜査官のひとりが、先ほど――路地裏にて、爆破の被害に遭いました!」
「なんですって……!?」
私は思わず椅子から立ち上がり、机に手を突く。
「怪我の程度は……! 救護は間に合わなかったのですか!」
私の焦燥を帯びた問いに、報告に来た騎士は絶望の色を浮かべたまま、震える声で告げた。
「……っ。それが……すでに現場で息を引き取っています……。ですが、息を引き取る前に、仲間へ情報を言い残したそうです」
「何を、言い残したのですか……!」
「……『魔力の塊を見つけた』……と」
どのような経緯でそれを見たのか、私はすぐに詳細な事情を聞き出すことにした。
そして聞かされた、その遺された情報は、大きな手掛かりだった。
☆
*
亡くなった捜査官は、魔力の残滓や痕跡を調べる『魔力視』が使える者だった。
魔力は目に見えないエネルギーのようなものだ。
それを見るには魔力を使って『魔力視』の魔法を行わなければならない。
しかし魔力は魔法を放つときに実体化(炎や癒しの光など)し目視できるため、わざわざ魔力を消費してまで”実体化前の魔力”を視る必要性は薄い。
使われるのは、相手の魔力量を測る時や、使用された魔力の残滓を調べる時くらいだろう。
そのため、魔法犯罪を追う専門の捜査官くらいしか使わないマイナーな魔法だ。
その捜査官は、たまたま『魔力視』を使いながら聞き込みを行っていたのだという。
そして、何もない路地裏の地面に――残滓では片づけられない量の”魔力の塊だけ”がそのまま置いてあるのを見つけた。
人の身から離れ、実体化もせず、ただの塊として独立して存在していることなどありえない。
それゆえに「何かあるのか」と不審に思い、そこへしゃがんでよく確認しようとした瞬間、その塊が爆発した――と。
顔面の半分が吹き飛び、息も絶え絶えの中、駆け付けた仲間の捜査官へ言い遺したのだ。
☆
*
話を聞き終えた私は、やり場のない怒りと、失われた命への悲しみでぐちゃぐちゃになりそうな心を、奥歯を噛み締めて無理やり押し込める。
亡くなった捜査官へ静かに冥福を祈りながら、私は目を閉じた。
「……絶対に、無駄にはしない」
目を開くと同時に無意識にそんな呟きが零れる。
いつの間にか握りしめた拳には、爪が食い込み痛みを訴えていた。
だが私には、そんなことが気にならないほど、心の中で冷たい怒りの炎が静かに燃え上がっていた。
☆ミ
下にある所から星を投げてくれると喜びます。
※この作品はAIたんとの共同執筆となります。




