第88話 国家の答え
静かだった。
さっきまで聞こえていた崩れる音が、遠くなっている。
完全に消えたわけではない。
だが――
ここでは聞こえない。
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列が動いている。
ゆっくり。
確実に。
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私はその流れを見ていた。
何度も壊れた。
何度も戻らなかった。
それでも――
残った。
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「……これが」
ミレイアが言う。
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「ええ」
私は頷く。
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「最後です」
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順番は。
ここにしか残らなかった。
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アルヴェリックが前に出る。
高い位置へ。
全体が見える場所。
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人が、彼を見る。
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国家の人間。
命令する側。
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だが今。
彼は――
少しだけ違う。
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「……聞け」
彼の声が響く。
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ざわめきが止まる。
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「本日の試験は終了する」
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沈黙。
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誰も反応しない。
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「結果は明確だ」
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彼は続ける。
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「順番は」
言葉を切る。
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全員が待つ。
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「国家では扱えない」
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ざわめき。
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だが。
否定は出ない。
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見てきたから。
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壊れる順番。
戻らない順番。
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そして。
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「だが」
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彼は言った。
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「消えない」
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沈黙。
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「選ばれる限り」
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その言葉は。
静かに。
だが強く。
広がる。
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私は見ていた。
彼を。
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(……変わった)
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アルヴェリックは。
認めた。
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順番を。
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「よって」
彼は言う。
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「国家は」
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少しだけ間を置く。
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「これを」
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そして。
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「残す」
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沈黙。
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誰も動かない。
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だが。
何かが変わる。
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「法律として」
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彼は続ける。
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「順番を守る場を保護する」
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ざわめき。
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「強制はしない」
「管理もしない」
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「だが」
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「壊された場合」
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彼は言う。
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「国家が介入する」
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沈黙。
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それは。
最初の答え。
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すべてを支配しない。
だが。
放置もしない。
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境界。
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ミレイアが、小さく息を吐いた。
「……決まりました」
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「ええ」
私は頷く。
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順番は。
勝たなかった。
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だが。
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残った。
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アルヴェリックが、こちらを見る。
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「これでいいのか」
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私は少しだけ考えた。
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そして。
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「ええ」
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答えた。
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「十分です」
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沈黙。
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彼は小さく笑った。
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「……不完全だな」
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「ええ」
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「だが」
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私は言った。
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「壊れにくい」
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彼は頷いた。
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それが。
答えだった。
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人が動き始める。
命令ではない。
順番でもない。
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それぞれの選択で。
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列は残る。
崩れる場所もある。
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だが。
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もう。
消えない。
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順番は。
国家に。
刻まれた。
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私は空を見た。
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何も変わっていない。
王都の空。
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だが。
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少しだけ。
静かだった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
ついに「国家としての答え」が出ました。
順番は勝たないけれど、消えない――その形が描かれました。
次はいよいよエピローグへ。
この選択が未来にどう影響するのかを描いていきます。
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