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婚約破棄された悪役令嬢が、追放先の詰んだ領地を“現代的な内政改革”で再建し、 気づけば王国の生命線になっていた話   作者: 蒼井リリス


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第74話 試される順番

 鐘が鳴る前に、広場はざわついていた。


 昨日の会議から、一夜。


 まだ結論は出ていないはずだった。


 それなのに――


(始めたのね)


 私は足を止めた。


 中央広場の中央に、仮設の柵が立てられている。

 役人が配置され、紙が配られ、人が誘導されている。


 整えられすぎている。


「制度実験です!」


 役人の声が響く。


「国家制度に基づく順序管理の試験運用!」


 ミレイアが息を呑んだ。


「もう……?」


「ええ」


 私は静かに答える。


「止まらない」


 広場の中央には、三つの列が作られていた。


 左は番号列。

 中央は優先列。

 右は――自由列。


 説明が始まる。


「番号列は制度番号順に処理!」

「優先列は緊急・重要案件!」

「自由列は従来の順番!」


 ざわめき。


 人々が迷う。


 どこに並ぶべきか。


 速さか。

 優先か。

 順番か。


 選択を迫られている。


(これが狙い)


 アルヴェリックのやり方だ。


 比較させる。


 順番を、実験の対象にする。


「どうしますか……」


 ミレイアが不安そうに聞く。


 私は答えなかった。


 答えは、見れば分かる。


 人が動き始める。


 多くは番号列へ向かう。

 次に優先列。

 自由列は――少ない。


 当然だ。


 速さを選ぶ。


 人はそうする。


 ハロルドがいれば笑っただろう。


 だがここにはいない。


 私はただ見ている。


 処理が始まる。


 番号列は速い。

 次々に進む。


 優先列はさらに速い。

 割り込みが許される。


 自由列は遅い。

 だが、静かだ。


 しばらくして、違和感が出る。


「おい!」

「番号が飛んでるぞ!」


 声が上がる。


 役人が紙を確認する。


「訂正します!」


 列が止まる。


 優先列で揉める。


「俺の方が重要だ!」

「いやこっちだ!」


 判断が遅れる。


 列が詰まる。


 自由列は――


 進んでいる。


 遅いが、止まらない。


 ミレイアが小さく言った。


「……逆転してる」


「ええ」


 私は頷く。


 速い列が止まり、

 遅い列が動く。


 その差が、少しずつ広がる。


 やがて。


 番号列が完全に止まった。


 紙の不備。

 順序の誤り。

 確認の連鎖。


 誰も進めない。


 優先列も止まる。


 判断が追いつかない。


 自由列だけが動く。


 ゆっくりと。


 確実に。


 アルヴェリックが現れた。


 広場の端。


 腕を組んで見ている。


 私は彼の隣に立った。


「どうですか」


 彼は言う。


 私は自由列を見た。


「動いています」


「遅い」


「ええ」


「だが止まらない」


 沈黙。


 彼は番号列を見る。


 止まっている。


 優先列を見る。


 混乱している。


 そして――


 自由列を見る。


 進んでいる。


「……興味深い」


 彼が呟く。


 私は静かに言った。


「順番は壊れない」


「違う」


 彼は首を振る。


「壊れても戻る」


 私は少しだけ笑った。


「それも順番です」


 沈黙。


 人々の声が少しずつ変わる。


「自由列に移れ」

「こっちの方が早いぞ」


 列が動く。


 番号列から人が離れる。


 優先列からも。


 自由列に、集まる。


 秩序が、変わる。


 命令ではなく。


 人の選択で。


 ミレイアが、震える声で言った。


「……選んだ」


「ええ」


 私は頷く。


「順番を」


 アルヴェリックは何も言わない。


 ただ見ている。


 そして、初めて。


 ほんのわずかに――表情が揺れた。


 だが。


「続けます」


 彼は言った。


「次の段階へ」


 私は彼を見た。


「まだやるんですか」


「ええ」


 彼は静かに言う。


「これは一度では決まらない」


 私は理解した。


 彼は諦めない。


 順番を認めても、握ろうとする。


 それが彼のやり方だ。


 広場では、自由列が主流になっていた。


 番号は捨てられ、

 優先は崩れ、

 順番だけが残る。


 だが。


「明日は」


 アルヴェリックが言った。


「違う条件で試します」


 私は目を細めた。


「どんな?」


 彼は答えない。


 ただ一言だけ言った。


「順番が守れない状況で」


 沈黙。


 私は、焚き火のない広場を見た。


 今日は、順番が勝った。


 だが――


 次は分からない。


 順番は弱い。


 だからこそ。


 試される。


 その限界が。


 明日。


 来る。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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