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婚約破棄された悪役令嬢が、追放先の詰んだ領地を“現代的な内政改革”で再建し、 気づけば王国の生命線になっていた話   作者: 蒼井リリス


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第69話 順番を選ぶ者たち

 アルヴェリックが去った翌日。


 辺境の朝は、いつも通りだった。


 倉庫の扉が開き、

 荷が運ばれ、

 焚き火が灯る。


 順番の朝。


 だが今日は、いつもと違う人々がいた。


 広場の端に、見慣れない馬車が並んでいる。


 紋章の違う馬車。


 別の領地のものだ。


 ミレイアが小さく言った。


「他領の方です」


「ええ」


 私は頷いた。


 馬車から降りてきたのは、三人の領主だった。


 中規模の領地。

 大きくも小さくもない。


 国家制度の適用が始まったばかりの地域だ。


「リリアーナ殿」


 一人が頭を下げた。


「話を聞きに来ました」


「何の?」


「順番の」


 私は焚き火を見た。


 火はいつも通り揺れている。


「国家制度は速い」


 領主は言った。


「だが……」


 彼は少し言葉を探した。


「人が疲れる」


 私は何も言わなかった。


 別の領主が続けた。


「番号は公平に見える」


「だが順番が消える」


 ハロルドが低く笑った。


「ようやく気づいたか」


 領主は苦笑した。


「遅かった」


 私は焚き火の前に立った。


「順番は教えられません」


 領主たちは少し驚いた。


「制度ではないからです」


「ではどうやって」


 私は火を見た。


「守る」


 それだけだった。


 沈黙。


 風が吹く。


 焚き火の煙が流れる。


 やがて一人の領主が言った。


「真似してもいいか」


 私は頷いた。


「順番は盗めません」


「どういう意味だ」


「守る人がいないと続かない」


 領主は深く息を吐いた。


「国家制度は」


 彼は言った。


「命令だ」


「ええ」


「順番は」


「約束です」


 広場の空気が少し変わる。


 人々が焚き火を見ている。


 順番の火。


 その時、遠くから馬が走ってきた。


 王都の伝令だ。


 馬を止め、紙を差し出す。


 封蝋は――


 王家。


 私は開いた。


 短い文だった。


 ――国家制度運用会議

 ――出頭要請


 ミレイアが小さく言った。


「王都です」


「ええ」


 ハロルドが笑った。


「来たな」


 国家が呼んでいる。


 制度のためか。


 順番のためか。


 それとも――


 止めるためか。


 私は焚き火を見た。


 火は揺れている。


 小さい。


 だが消えない。


 順番を選ぶ者が、

 少しずつ増えている。


 そして今、


 その火は――


 王都へ向かおうとしていた。

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