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婚約破棄された悪役令嬢が、追放先の詰んだ領地を“現代的な内政改革”で再建し、 気づけば王国の生命線になっていた話   作者: 蒼井リリス


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第68話 制度の境界

 国家制度の拡大から、半月。


 王都の命令は、各地へ確実に届いていた。


 番号。

 優先順位。

 行政順序。


 それは秩序のように見えた。


 だが、どこか違う。


 辺境では、今日も焚き火が揺れていた。


 人々は順番に薪を入れ、

 順番に倉庫へ並び、

 順番に再訓練を受ける。


 紙はある。

 帳簿もある。


 だが、命令はない。


 それでも続く。


 ミレイアが広場の様子を見ながら言った。


「国家制度の紙を持ってくる人が増えました」


「そうでしょうね」


 私は頷いた。


「不安だからです」


「不安?」


「命令があると、人は安心します」


 ミレイアは少し考えた。


「順番は安心じゃないんですか」


「安心です」


 私は焚き火を見た。


「でも、時間がかかる」


 順番は遅い。


 だから人は命令を求める。


 その時、馬の音がした。


 広場の入口で馬車が止まる。


 降りてきたのは――


 アルヴェリックだった。


 以前と同じ服。

 同じ姿勢。


 だが、今回は護衛が多い。


「また来ました」


 ミレイアが小さく言う。


「ええ」


 私は頷いた。


 彼はゆっくり歩いてきた。


「制度の確認に来ました」


「国家制度ですか」


「ええ」


 彼は広場を見渡した。


 人々が並び、

 順番に物資を受け取り、

 順番に帰っていく。


 アルヴェリックは言った。


「効率が悪い」


 私は少し笑った。


「知っています」


「国家制度なら三倍速い」


「でしょうね」


「なぜ使わない」


 私は焚き火を指した。


「火を見て」


 彼は黙って見た。


 薪が一本、入る。


 火が強くなる。


 次の薪はまだ来ない。


 しばらく待つ。


「遅い」


 彼は言う。


「ええ」


「国家なら」


 彼は続けた。


「命令で薪を入れさせる」


「できます」


 私は頷いた。


「でも火は」


 私は静かに言った。


「命令では燃えません」


 沈黙。


 アルヴェリックは焚き火を見続けた。


「あなたは」


 彼は言った。


「制度の境界を守ろうとしている」


「境界?」


「国家と人の」


 私は少し考えた。


「守ろうとはしていません」


「では?」


「越えないだけです」


 彼は少しだけ笑った。


「国家は越える」


「知っています」


「秩序のために」


「速さのために」


 沈黙。


 遠くで子どもが笑っている。


 倉庫の扉が閉まる。


 順番の音だ。


「あなたの制度は」


 アルヴェリックが言った。


「国家制度になった」


「ええ」


「つまり境界は消えた」


 私は首を振った。


「境界は残ります」


「なぜ」


「順番は」


 私は焚き火を見た。


「命令にならないから」


 火がぱちりと弾ける。


 アルヴェリックはしばらく黙っていた。


 やがて言った。


「国家は諦めない」


「でしょうね」


「制度は広がる」


「でしょうね」


「あなたの順番は」


 彼は静かに続けた。


「いつか飲み込まれる」


 私は答えなかった。


 焚き火を見ていた。


 火は小さい。


 だが消えない。


 国家は強い。


 順番は弱い。


 だが――


 弱いものは、長く残る。


 境界はまだある。


 そして今、


 その境界の上で、


 制度と国家が静かに向き合っていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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