第67話 決断の前
王都は、静かに揺れていた。
制度が広がる速度が、速すぎたからだ。
地方の領地では、国家制度の命令順序が導入され始めている。
番号。
優先順位。
統制。
速い。
確かに速い。
だが――
順番ではない。
王城の一室で、カイゼルは窓の外を見ていた。
王都は今日も忙しい。
馬車が行き交い、
役人が走り、
命令が飛び交う。
国家は速い。
「殿下」
レオンハルトが入ってきた。
「北部の報告です」
カイゼルは振り返る。
「どうなっている」
「制度は広がっています」
「順番は?」
レオンハルトは、少しだけ間を置いた。
「……命令です」
カイゼルは小さく息を吐いた。
「やはりか」
「アルヴェリックは止まりません」
レオンハルトは続ける。
「彼は正しい」
「そうだろう」
カイゼルは頷く。
「国家としては」
秩序。
速さ。
統制。
どれも必要だ。
だが。
「順番はどうなる」
レオンハルトは答えなかった。
答えがないからだ。
少しして、彼が言う。
「リリアーナは守っています」
カイゼルは笑った。
「だろうな」
「彼女の領地だけです」
「だから残る」
レオンハルトが眉を上げる。
「国家は広がる」
「順番は残る」
カイゼルは窓の外を見た。
「どちらが強いと思う」
レオンハルトは、少し考えた。
「国家です」
「そうだろう」
カイゼルは頷いた。
「だが国家は、壊れる」
沈黙。
「順番は?」
レオンハルトが聞く。
カイゼルは小さく笑った。
「壊れにくい」
それが問題だった。
国家は強い。
だが壊れる。
順番は弱い。
だが残る。
「殿下」
レオンハルトが言った。
「決断が必要です」
カイゼルは静かに頷いた。
アルヴェリックの制度。
リリアーナの順番。
どちらも正しい。
だが――
同時には存在できない。
窓の外で、鐘が鳴った。
夕方の鐘だ。
王都の人々が一斉に動く。
それは命令の順番だった。
カイゼルは、その音を聞きながら言った。
「まだだ」
「殿下」
「まだ決めない」
彼は振り向いた。
「もう少し見よう」
「何を」
カイゼルは、遠くを見た。
「どちらが残るか」
国家か。
順番か。
決断の時は、近づいていた。
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