第70話 王都へ
王家の封蝋は、いつもより重く感じた。
国家制度運用会議。
つまり――
王都が、制度について決める場だ。
私を呼んだ理由は分からない。
だが一つだけ確かなことがある。
順番の話になる。
翌朝、私は出発の準備をしていた。
荷物は少ない。
帳簿。
制度設計書。
そして――
何も書いていない紙。
ミレイアが心配そうに言った。
「大丈夫でしょうか」
「分かりません」
「王都ですよ」
「ええ」
私は笑った。
「順番が嫌われる場所です」
ハロルドが腕を組んだ。
「連れて行くか?」
「いいえ」
私は首を振った。
「これは一人の話です」
制度の話ではない。
順番の話でもない。
国家の話だ。
広場に出ると、人が集まっていた。
倉庫の職人。
再訓練の人々。
商人。
皆、静かに立っている。
「行くんですか」
若い職人が聞いた。
「ええ」
「王都に」
「ええ」
彼は少し迷ってから言った。
「順番の話を?」
「多分」
沈黙。
焚き火が揺れている。
その火を見ながら、年配の職人が言った。
「守ります」
私は彼を見た。
「何を」
「順番を」
私は少しだけ笑った。
「お願いします」
馬車に乗る。
ミレイアが最後に言った。
「戻ってきますよね」
「ええ」
「制度は?」
「制度は」
私は焚き火を見た。
「ここにあります」
火は揺れている。
順番に薪が入り、
順番に燃えている。
誰も命令していない。
だが続く。
馬車が動いた。
辺境の道を進み、
平野を越え、
王都へ向かう。
遠くに城壁が見えてきた。
巨大な門。
国家の中心。
速さの場所。
命令の場所。
そして――
順番が試される場所。
私は静かに息を吐いた。
制度は、国家のものか。
それとも人のものか。
その答えが、
今、王都で待っている。
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