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婚約破棄された悪役令嬢が、追放先の詰んだ領地を“現代的な内政改革”で再建し、 気づけば王国の生命線になっていた話   作者: 蒼井リリス


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第59話 順番を守る者

 王都の改革会議は、以前より静かになっていた。


 声は小さく、

 議論は長く、

 結論は遅い。


 それは、以前の王都では考えられない変化だった。


 レオンハルトは、会議室の奥で資料を閉じた。


「北部試験領、安定」


 誰かが報告する。


「失業率は減少」

「再訓練成功率、回復」


 数字は、静かに改善していた。


 誰も拍手しない。

 歓声もない。


 ただ、頷きがあるだけだ。


「順番を戻した結果です」


 レオンハルトが言う。


 反論は出ない。


 以前なら、

 もっと速い政策を求める声が出ていた。


 だが今は違う。


 速さは、

 一度崩れた。


 その記憶が、部屋の中に残っている。


「……奇妙なものだ」


 軍務官が言う。


「制度を止めた者が、制度を救った」


 誰も否定しない。


 レオンハルトは、窓の外を見た。


 遠くに王都の街が広がる。


 整然としている。

 だが、以前より少しだけ遅い。


 その遅さは、

 悪いものではない。


 会議が終わった後、彼は一通の通信を送った。


 辺境へ。


 返事は、すぐに来た。


「順番は、守られていますか」


 短い文。


 彼は、少し笑った。


『まだ完全ではない』


『だが、崩れてもいない』


 少し間があって、返信が届く。


「それで十分です」


 それだけだった。


 レオンハルトは、通信を閉じた。


 制度は、誰のものか。


 以前の王都では、

 その答えは単純だった。


 国家のもの。


 だが今は違う。


 順番を守る者のもの。


 それが、静かに広がっている。


 夜、辺境では焚き火が揺れていた。


 人々は、いつものように働き、

 いつものように話し、

 いつものように火を囲む。


 制度は止まり、

 制度は戻り、

 制度はまた動き出した。


 だが、以前と同じではない。


 誰もが、少しだけ知っている。


 制度は壊れる。


 だから――


 順番を守る。


 ミレイアが火を見つめながら言った。


「国家は、変わりましたか」


 私は、少し考えた。


「少しだけ」


「それでいいんですか」


「ええ」


 制度は革命ではない。


 ゆっくりと、

 静かに、

 形を変える。


 焚き火が、静かに弾けた。


 小さな火。


 だが、その火は、

 もうこの領地だけのものではない。


 遠くの王都にも、

 少しだけ灯り始めていた。

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