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婚約破棄された悪役令嬢が、追放先の詰んだ領地を“現代的な内政改革”で再建し、 気づけば王国の生命線になっていた話   作者: 蒼井リリス


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第50話 制度は、誰のものか

 視察団は、三日後に引き上げた。


 規則は変わらなかった。

 例外も作られなかった。


 だが――

 王都は、何も諦めていない。


 その証拠に、正式な通達が届いた。


 ――国家改革委員会への常任顧問就任要請


 名目は、助言。

 実質は、組み込み。


 私は、紙を静かに置いた。


「断りますか」


 ハロルドが聞く。


「いいえ」


 私は首を振る。


「断れば、別の形で使われる」


「受ければ?」


「表に出る」


 ミレイアが、不安そうに言う。


「象徴にされます」


「ええ」


 私は、少し考えた。


 王都は速い。

 政治は成果を求める。

 民衆は顔を求める。


 だが、制度は――

 順番を求める。


「受けます」


 二人が、驚く。


「ただし、条件付きで」


 私は、即座に返書を書き始めた。


 ――公開会議の義務化

 ――撤回規定の明文化

 ――失敗率の常時公開

 ――制度利用時の責任者明記


 書き終え、封をする。


「制度は、誰のものか」


 私は、小さく呟いた。


 王都のものでもない。

 私のものでもない。


 順番を守る者のものだ。


 数日後、王都からの返答が来た。


 条件の一部受諾。

 一部保留。


 妥協だ。


 私は、再び王都へ向かうことになった。


 だが今回は、違う。


 呼び出されたのではない。

 条件を持って行く。


 中央庁舎の会議室。


 レオンハルト。

 ヴィクトール。

 そして、カイゼルもいる。


「常任顧問、受諾いただけますか」


 レオンハルトが問う。


「条件付きで」


「撤回規定は、政治が嫌います」


「嫌ってください」


 室内が静まる。


「制度は、支配の道具ではありません」


 私は、はっきり言う。


「存続の道具です」


「国家は、時に強制を必要とします」

 軍務官が言う。


「ええ」


「では、なぜそこまで拘る」


「制度が、人を切る理由にされないためです」


 カイゼルが、低く言う。


「君は、政治を信用しない」


「信用しています」


 私は、彼を見た。


「だから、縛ります」


 沈黙。


 レオンハルトが、静かに口を開く。


「制度は、誰のものだと思いますか」


 その問いに、私は迷わない。


「順番を守る者のものです」


「国家は?」


「守るなら、国家のものです」


「守らなければ?」


「ただの刃です」


 長い沈黙の後、

 レオンハルトは頷いた。


「撤回規定を限定導入する」

「公開会議も、試験的に」


 完全ではない。

 だが、前進だ。


 カイゼルが、静かに笑う。


「君は、旗にならない」


「なりません」


「だが、国家を縛る」


「壊さないために」


 会議が終わり、私は廊下に立つ。


 王都の石壁は、冷たい。


 だが、その中に、

 小さな余白ができた。


 制度は、誰のものか。


 それは、

 速さを選ぶ者のものでも、

 象徴を求める者のものでもない。


 順番を守る者のものだ。


 私は、焚き火を思い出す。


 あの小さな火が、

 国家の帳簿の片隅に書き込まれた。


 勝ったわけではない。

 負けたわけでもない。


 だが――


 制度は、まだ私の手を離れていない。


 そして、


 私もまた、

 制度の外には立っていない。


 物語は、

 新しい段階へ入った。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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