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婚約破棄された悪役令嬢が、追放先の詰んだ領地を“現代的な内政改革”で再建し、 気づけば王国の生命線になっていた話   作者: 蒼井リリス


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第48話 辺境に火種

 辺境からの第二報は、早かった。


 ――王都監査局の特別視察団、到着

 ――規則運用の柔軟化を要請

 ――一部商会と接触


 紙の上の文字は整っている。

 だが、行間は騒がしい。


(内部から揺さぶるつもりね)


 私は、即座に追加の指示を書いた。


 ――視察は公開会議のみ

 ――個別面談は全て記録

――規則変更は全会一致


 封をし、早馬に託す。


 レオンハルトが、静かに言った。

「早い対応ですね」


「遅れれば、形を変えられます」


「彼らは、あなたの制度を“改善”したいだけです」


「改善は、順番の後です」


 彼は、わずかに目を伏せた。


「あなたは、王都を信用していない」


「人を信用しています」

「仕組みは、信用しません」


 その夜、辺境の光景が何度も浮かんだ。


 焚き火。

 倉庫。

 規則板。


 そこに、王都の言葉が入り込む。


 ――効率化

 ――柔軟化

 ――成長促進


 どれも、正しい。

 だからこそ、危うい。


 翌日、さらに報告。


 ――商会代表、規則緩和を支持

 ――若手職人の一部、不満


 火種は、小さい。

 だが、確実に存在する。


(不満は、悪ではない)


 だが、利用されれば別だ。


 私は、王都での会議を一時退席し、

 通信室を借りた。


「ミレイア」


 魔導通信越しに、彼女の声が届く。


『……大丈夫です』


 少し、緊張している。


「状況は?」


『視察団は、規則の例外運用を求めています』

『特に、大口商会への優先枠を』


「拒否して」


『しています』


「揺れている人は?」


『います』


 私は、静かに目を閉じた。


「揺れていい」

「でも、記録を残して」


『……はい』


「公開会議を開いて」

「全員の前で議論させる」


『王都側も?』


「ええ」

「隠させない」


 通信が切れた後、

 私は深く息を吐いた。


 レオンハルトが、廊下で待っている。


「辺境が揺れていますか」


「ええ」


「当然です」

「制度は、硬いほど反発を生む」


「柔らかくすると、歪みます」


 彼は、静かに言う。


「あなたの制度は、王都でも注目されています」

「広げたい者もいる」


「歪めたい者も」


「ええ」


 彼は、一歩近づいた。


「あなたは、戻りますか」


「必要なら」


「国家改革は?」


「辺境が崩れれば、意味がありません」


 彼は、ほんの少しだけ笑った。


「あなたは、一貫している」


「それしか、持っていません」


 夕方、公開会議の記録が届いた。


 商会代表が、規則緩和を主張。

 若手職人が、成長機会の拡大を要求。


 そして――


 ミレイアが、静かに言った。


 『規則は、全員のためにあります』

 『例外は、誰かを切り捨てます』


 議場は、静まったという。


(よく言った)


 だが、火種は消えていない。


 王都は、速さを選ぶ。

 商会は、利益を選ぶ。

 若者は、成長を選ぶ。


 そして私は――

 順番を選ぶ。


 夜、私は決めた。


「明日、帰ります」


 レオンハルトが、わずかに眉を上げる。


「国家改革は?」


「制度は、場所を失えば死にます」


「逃げるのですか」


「守るのです」


 彼は、静かに頷いた。


「あなたは、王にならない」


「ええ」


「だが、領地を王以上に守る」


「ええ」


 辺境に火種がある。


 小さい。

 だが、確実に燃え始めている。


 私は、王都の灯りを最後に見上げた。


 ここは、速い。


 だが――

 私の場所は、あちらだ。


 焚き火のそばで、

 順番を守るために。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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