第22話・光と到着
あくる日の朝。
今日も空は快晴である。
「うーん、気持ちいぃー!」
俺は朝の新鮮な空気を肺いっぱいに吸い込み、大きく伸びをする。
テントを俺用と、モミとカエデ用2つたてたのに、なぜか2人とも俺のテントの中で寝ようとしたため、ギッチギチになりながらの睡眠ではあったが、疲れはしっかりとれている。
モミもカエデもまだ寝ていたので、俺は静かにこうして1人で外に出ていたのであった。
「久しぶりに『ネクスト体操』でもやろうかなっと。」
俺はそう言うと、体を動かし始める。
ちなみに『ネクスト体操』というのは、俺が勤めていたIT企業で徹夜明けだと毎回行われていた体操である。
社長考案の社名が冠された体操で、やたら奇妙な動きが多く恥ずかしいが、なぜかよく眼が覚めるのだ。
「イッチ、ニー、サン、シー。」
俺は腰に手を当てて、大きく尻を振る。
……恥ずかしいが、なぜか目は覚めるのだ。なぜか。
「ウキョウ殿。」
「うわあぁっとぉ!!!??」
と、突然の声に俺が驚いて尻を引っ込め、振り向くとそこには有能な馬、ブラウンの姿があった。
「ブッ、ブラウンか。どうした?」
顔が火照っているのを自分でも感じながら、俺は慌ててそう訊く。
あれ?俺『会話』使ったっけ?
どうして会話できてるんだ?
「あ、私の体の中で、ウキョウ殿に昨日かけて頂いた魔法の魔素を練り込ませたため、これからは魔法なしでも私とウキョウ殿の会話は可能ですので、あしからず。」
ブラウンがこともなげにひひんとたてがみを揺らしながら話す。
ふむふむ、魔素を練り込ませたのか。
なるほど、まったく意味がわからん。
……まぁとにかく、さすがブラウンってことにしておこう。
「わざわざ丁寧にありがとう。それで、どうかしたのか…?」
「いえ、特にはありませんでしたが、朝の挨拶をしようと思いまして。」
あらやだ紳士じゃないの。
「と思ったら、とても魅力的なことをウキョウ殿がされているので、それに私も混じろうかと。」
あらやだ紳………………へ?
数分後。
眩しい朝日の下に、ひとりの人間と一頭の馬が、並んで腰をフリフリする地獄絵図が広がっていた。
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「ウキョウは今日早起きしてたみたいだね!」
「う、うん。目が覚めちゃったからね。いや、別に体操とかはしてないよ?」
「そんなことは別に聞いてないんだけど……」
あの後モミとカエデもしばらくしてから起きた。
……あの体操を見られなくて本当に良かったと思います、えぇ。
草原を出発してから数時間。
進行は有能なブラウンに任せて、暇な俺たちは車中で雑談に興じていた。
「ウキョウって、あの水の魔法以外に何か使えるの?」
モミが興味津々で訊いてくる。
どうやら、俺と盗賊の戦い(というほどものではないけれど)をこっそり見ていたらしい。
「んー、火魔法も使えるよ。他の魔法はまだ見たことがないからなんとも言えないけど……。」
「私の力不足ですみません……。」
カエデがしょげる。
すかさず尻尾を撫でる俺。
趣味だったモフモフは、今ではこうして励ますときにする意味のあるもの(?)へと変わっていた。
「別にカエデは悪くないって。カエデはよくやってくれてるよ。」
「あ、ありがとうございます…!」
「私も褒めて褒めてー!」
もじもじするカエデの脇で、モミが叫ぶ。
「あのな、褒めるところが今んとこモミにはないでしょうが。」
俺がそう諭すと、モミはニヤリと笑って俺を見る。
「ふふん、これを見てからも同じことは言えるかな?」
そう言うと、モミは朗らかな声で、
「『白光』!」
と何かを詠唱した。
すると、モミの掌の上に5cm大の光の球が浮かぶ。
「光属性魔法……!」
カエデが驚きながらそう呟く。
「今は馬車の中だからあんまり強いのは使えないけど、もうちょっと規模の大きいのも使えるよ!」
光の球をもてあそびながら、得意満面でモミが言う。
「どこで魔法なんて覚えたんだ?」
俺も驚いてそう訊くと、
「うーん……。1人で彷徨ってたときに、なんか頭にパッと浮かんだの!それをイメージして叫んだらできた!」
と、あっけらかんと答えるモミ。
「すごいですよ、キョウさん。光属性を使える人はそうそういないとザグラスさんも言っていました!」
カエデが興奮して叫ぶ。
「えへへー、これでモミのことも褒めてくれる?」
ニッコリと俺を見つめるモミ。
結局、俺はそこから小一時間左手でカエデの尻尾を、右手でモミの尻尾をひたすらモフることとなったのだった。
流石に疲れた……。
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「ウキョウ殿、そろそろ王都に到着致します。」
俺が腕を回復させようと休めていると、そう外
ブラウンから声がかかった。
「わかった、ちょっと確認したいからそっち出るよ。」
「わかりました。」
俺が外に出ると、目の前には高い壁に囲まれた大きな都市がそびえていた。
城壁の向こうには、壁よりもさらに高い城のようなものも見える。
「うわー、すっごーい!」
「これが王都なんですね!」
モミとカエデもでてきて歓声をあげる。
ミラドリア王国王都・ロンベルグ。
国内最大の都市、そして国内唯一の転生者がいる都市にようやく俺たちは着いたのであった。
さて、何が起こるやら。
昨日感じた不安半分、転生者に会える期待半分で、俺はそう感じていたのだった。




