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  は     ~オリビアside~

オリビアsideです。人によっては、少しダークに感じるところがあるかもしれません

私の目の前には、1週間前に帝都で発行された新聞が置かれていた。

憎らしい。憎らしい。愛されているのは私のはずなのに、なぜなのだろうか?

これが神の悪戯だとすれば、人である私に、答えなどはでないのは当然だ。だとすれば、私の信仰がまだ足りていないという証明になる。

だから、だからこそ憎らしかった。なぜあの娘なのだろうか?あんな小娘に神が微笑み、神の僕たる私に微笑まないのはなぜなのだろうか?


答えが出ないまま、ぼんやりと新聞記事に目を通していると、不意に声がかけられた。


「また新聞を見ているのか、オリビア」


ふと顔を上げると、ディ=フォルトがいた。


「あら、私も新聞くらい読みますわ。どんなに低俗なものでも、勤めに必要とあれば、私も、情報の収集くらいは致します。」


私は新聞を綺麗にたたみ、ベルボーイに手渡し、部屋に持っていくように伝える。ベルボーイは、恭しく受け取り、そのまま、階段の方へ姿を消す。

ラウンジには、私と、ティ=フォルトだけが残された。


「ずいぶんと怖い顔をしていたから、どうしたのかと思ったが、いつものことか」


フィルトは、あっという間にその記事の正体にたどり着いたらしい。


「あら、さすが賢者。いい勘ね。」


「全く、オリビア。これも、神の御業ということかな?私にはよくはわからないが」


フィルトは、目の前にの椅子に腰かける。外は雨が降っていた。裁判があってから、3日間は晴天に恵まれたが、今日の朝から、急激に天気が変わった。エクスはこんな天気だったが出かけていき、ターニャは、エイダに付き添いで、3日前に合同で山岳に討伐に出て、当分は戻らない予定だ。それに、ターニャは、『偽剣聖』の裁判後、丸一日、姿を見せていなかった。どうやら、勇者パーティに顔を見せるのも恥ずかしくなったらしい。もしかしたら、白崖騎士団から、不信者としていわれ、勇者に泣きついたのかもしれない。あの謝罪、あれを見たら、もう、ターニャは、法国の使徒としての機能が残っていないことは明らかだ。全く、今まで猊下に近かったから警戒してきたが、これで大っぴらに異端審問ができる。良いざまだ。


そんな状況で、ホテルには、私たちだけが残っていた。


「どれが、神の御業なのかしら?」


ディ=フォルトの言葉に、私は、内心に嘲笑をもって答えた。馬鹿と賢者は紙一重というが、どうやら、天気のことを神の御業だと思っているらしい。まさしく馬鹿。神は人に試練を与えることはあっても、人が常に恵みを与えることなどない。教会で最初に言われるだろう。


1年間パーティを組んできたが、ようやく、こいつの底が知れた。この程度なら、


「まあ、オリビアの内情には全く興味はないんだ。オリビアの生末は少し気にかかるが。」


「どういうことかしら、賢者様?」


「イヤなに、君がいい趣味をしていて、それで面白いことを考えているから、からかっただけだよ」


表情には出ないが、驚きをもってそれに応えた。私が、それだと誰にも伝えていないし、ここに潜伏しているやつらにも、日常に溶け込むように指示をしている。

もしかして、ターニャがと思ったが、ここ10日間の状況を見るに、それも違うだろうと、否定する。となると、私の過去を探られたということになるが、教会の庇護のもとにある私の過去を探ることは、けっしてたやすいものであない。


現に、あの連中も出し抜いている。となれば、王都で私の目的を知るものはいないはず。


「あら、どういう意味ですか?意味がわかりませんわね。賢者様の言葉は、高尚過ぎて」


「いや、オリビアがどうであれ、それはそれでかまわないのさ。まあ、味方は多いに越したことはないからね」


何を言っているのかわからなかったが、ディ=フォルトは、すっと立ち上がった。

その瞬間、雷が近くに落ちたらしい。部屋が、白く染まる。


「少しうるさくなってきたか。部屋に戻る。また明日の朝」


ひらひらと、ディ=フォルトは、後ろ手を振りながらラウンジから出ていく。ただ一人私は、残された。窓の外は輪をかけてひどい雨になって来たが、これからの計画を練る、私の心は、晴れ晴れとしていた。まずは、あの『偽剣聖』の異端審問から始めることにしよう。




「申しつけ、いただきました通り、新聞を部屋に置いてきました。」


窓の外は、強い雨が続いている。ラウンジにさっきのベルボーイが入ってくる。手には、メニューを持っていた。


「ありがとう、ところで、変わったことはなかった?」


私は、ベルボーイに、問いかける。


「注文をお聞きします」


ベルボーイはポケットから、注文票を取り出し、トレーに乗せ、トレーの二重底からメモを綺麗に合わせて、私に渡す。しぐさを注意深く見ても、注文票を取り出し、トレーに乗せたようにしか見えないだろう。


メニューの上に、注文票と、メモをおき、考えるしぐさをする。メモには、最近の王都での動きが、書かれていた。


「『黒衣の聖女オーリディア』来訪。目的は不明」


「魔王アッシャーナ、現在も王都に滞在を続けている」


「正体不明の集団が王都に在留している」


私は、ベルボーイに、白ワインを頼む。


少し考えが逡巡する。


本来は、『黒衣の聖女』コンタクトを取り、貢物をささげ、教皇への謁見の足掛かりにしたかったが、これにはリスクが付きまとう。『黒衣の聖女』が、本物だとした場合、それは、猊下の信を置く一人が王都に派遣されたということ。今の時点で、不用意に、教会から、反目を疑われる可能性がある行動は慎んだほうが良いと、切り捨てる。


現時点では、アッシャーナは、放っておいた方がいい。いつか、もっと力をつけて、異端裁判にかけてやりたい。泣き叫び、魔王などと名乗ったことを後悔させ、神に赦しを乞わせてやりたいが、今はその時ではない。


正体不明の集団というのが、気にかかる。


「この3番目の銘柄は、どういうものかしら?」


私に、ベルボーイが頷き、最新鋭の魔導器で得られた映像を私に見せてくれる。ピンボケで、かすかにしか見えないが、その男には見覚えがあった。


「すこし、選ばせてもらうわ。あとで部屋に持ってきてちょうだい」


ベルボーイは頷き、私に頭を下げて、ラウンジから出ていく。



「どういうことなの?」


私は、部屋に戻り鍵を掛けると、引き出しの中から、一つのファイルを取り出す。それは、異端徒の証を集めたものだ。


お目当てのものは、すぐに見つかった。妙な服を着た異端徒と、その男が、奇怪なオブジェクトの前で、笑顔で握手を交わしている繊細なタッチで描かれた絵だった。その異端徒は、その絵を後生大事に胸ポケットに入れていた。


思い出してみたら、その異端徒は、少し奇妙だった。空き地に一人立って、何かを待っているようだった。この機会を逃がしたら、裁判の機会が失われると感じ、私は、スキルを使おうと思ったが、そいつが私たちに気が付いた。一瞬だけ生じた隙に、仲間たちが、クロスボウを撃ち、そいつの足を封じ、縛り上げた。


そこからは、異端であることの証明をするために、裁判をしながら、そいつの持ち物を調べた。中には、用途不明なものが多かったが、いくつか、異端を証明するものが、出てきた。


頸からかけていた、縦の棒と横の棒が交わる、我らの宗派にはないイコンと、何が書いてあるのかわからない、ほんのページらしきもの、赤と白の横線と、青地にたくさんの星が書かれた不思議な布。そして、その絵だった。


絵の後ろには、1999.12.23と書いてあり、その後は、読むこともできない文字が書いてあった。


そのことを聞こうとした時には、そいつは、すでに衰弱しきっていた。そういえば今日一日、拷問をしていたと気が付いた。私が、『回復』のスキルと使おうとした時だった。


「・・・」バキッ!!


男が何かを呟きそして、何かをかみ砕いたような音が聞こえた。毒だろうか?それで死ねると思っているのだから、異端の徒は、全くおめでたい。ここにいるのが私、聖女オリビアだということにまだ気が付いていないんだろうか?


『解毒』


一瞬で毒が消える・・・はずだった。


異端徒の口の端から、血が流れる。解毒がきかないのか?それなら。


『快癒』


これは、負傷も治癒させる恐れが高いので、できる限りこんな時には使いたくなかったが、止む負えず、遣わざる負えなかった。


何も起きなかった。


男は、私たちを見つめる。その大きな目に、私たちが写り込んでいた。


そんな反応をする異端徒は見たことがなかった。男は、憎々し気に私たちを見た後、そのまま、前に倒れ込んで動かなくなった。


「早く、『回復』を!!」


仲間の声に、頷き私は、『回復』のスキルを発動させる。だが、そいつには全く効果がなく、そいつが一体何だったのか、結局わからずじまいだった。



持ち物も、不思議な鉄屑と奇妙なうすくて四角い箱があるだけで、金品や交易に使用できるものはなかった。私は、その鉄屑と四角い箱を戦利品として持ち帰ることにした。



「異端徒が、なぜ王都にいるのかしら?」


私は、不思議に思った。異端徒同士のネットワークでもあったのだろうか?しかし、あの男は一人だった。


「まあ、いいわ。」


私は、そっと、『伝令』を発動させる。このスキルは、もし、受信できる場合、誰にでも聞かれてしまう恐れがあったが、ここ2回ほど発動したときには、特に動きがなかった。

つまり、王都内には、『受信』のスキルを持った人間はいないということになる。


「この男を見張りなさい」


私は、写真を見つめながら、『伝令』のスキルを使用する。残念なことは、私自体には、『受信』のスキルは目覚めることはなかった。が、部屋に置いてあった魔導器が反応を示す。王都の各所に配置した受信完了を知らせる魔導器だった。


その様子を見て、私はほっとしたそんな時だった。不意に、四角い小さな箱から、聞いたこともない、音が流れ始めた。


四角い箱には、青い人形を持った子供が空にそびえる四角い鏡を指さし笑っている。その鏡と空に、白い線があった。


やがて、その音は鳴りやむ。そして、男の声が流れた。


「ようやく見つけた。協力に感謝する」


私は、驚き、それを床にたたきつけた。何の反応もなかった。その時、大きな音で聞いたこともない、音楽が流れ始めた。なんなの、これは!?これは、きっと、呪いの道具に違いない。


「こんな、こんな異端徒の呪いなんて!!」


窓を開ける。雨が吹き込む。


地面に向かい、思いきり投げつけ、窓を閉じた。ほんのわずかな時間だったが、びしょ濡れだった。


「はぁ、はぁ、はぁ・・・神よ。・・・私に導きをください。救いをすべてにいきわたらせる力をください」


『信徒 パメラ。励みなさい。異端をこの世界から駆逐し、この世界に正しい道を示すのです』


私の頭に、不意に男神の声が響く。これは私のスキルではない。私は、聖女になったとき、神の声を聴く力を得た。そうだ、私は正しいことをやっている。疑念は消え、私に力がよみがえってくる。


「はい神様、わたくしは、この世界を正しい道に戻し、あなた様がお戻りになることができるようにします」


深く、頭を床に打ち付ける。稲光が、窓から入ってくる。その光に、悦楽にも似た気持ちが私の中から湧き上がった。



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