は ~接触~
「うう、痛い」
「枝でたたかれただけでしょ?死んだわけじゃない。」
とはいうものの、クラウの体は、みみずばれと青あざだらけだった。ダメージを受けることが痛いことだって初めて知った。
あの大きな獣に遭遇して、地面にたたきつけれたときすら、全く痛くもなかったのに。
「もう少し手加減してくれても」
その言葉に、レヴィは、にこっと笑う。
「痛かったでしょ。少しだけ思い知ればいいわ」
「そんなに言わなくても」
クラウは、あれから、48回打ち込み48回負けた。レヴィから、アドバイスを受け、うち筋を変えて、それでも、レヴィは遠かった。足がだんだんと動くようになっていたけど、それでも、レヴィに届かなかった。私の『剣聖』では、何もできないと・・・思い知った朝だった。
「さあ、幸せが届くわ、クラウ受け取りの準備よ」
「え?あ、そうだね。はい」
カーン!!
昼ごはんの時間だ。レヴィは、クラウの手を引く。クラウは、それに従うしかなかった。
クラウは、配達員から、お昼ご飯を受け取る。
お昼は、蒸し鶏1羽と、豚ロースの片側の蒸したものパラパラのライスに、玉ねぎとキャベツのマリネだった。
クラウは、食べられそうな、蒸し鶏の足とももの一部をとる。そこに、レヴィが、マリネとライスのを少し置く
「レヴィありがとう・・・私が少食だから、食べてもらって・・・」
「いいの、クラウ。これも、あなたの幸せを奪わせてもらってるから。さて、食べましょう」
レヴィはそういうといつものように食べ始める。
クラウはその様子を見ながら自分のプレートに手を伸ばし、少し、ぼんやりと考え事をしていた。レビィの前にあった食材があらかた消えようとしている。
「レヴィ、教えて、私にかまってくれるのはなぜなの?あなたは、討伐ギルドの人なの?」
その声に、レビィはピタッと食べるのをやめる、どう答えたらいいか考えているようだった。
レヴィの沈黙が続く、ここまで、何も話さない・・・そんなレヴィをクラウは見たことがなかった。
一瞬だが、クラウは、聞くべきじゃない質問をしたと思った・・・だが、声が聞こえた。
「私は・・・私・・・&を・・・クラウを助けたいと思っているんだよ」
それは、意外な言葉だった。レヴィの言葉とは思えないほど、しっかりと、心に響く。
「私は、クラウを助けたい、それは、クラウが私が我儘を押し付けてしまった『#(+‘=($&』だからじゃない、でも、私は知ってしまったあなたにおわせてしまった枷を私が弱くて、あなたに着けてしまった重しを
だから、助けたい。私の、もう意味も、そう、何の意味すらなくなった私が、貴女を&だと思っているから。たったそれだけの理由なの!!」
何も聞き取ることができない・・・『こんなことを!!こんな・・・’(の主がしないでください!!私は、私『#(+‘=($&』は、あなたたちのためにあった、それだけなのに!!』
涙が頬を伝う、でも、何もわからない。何も知ることができない。
「クラウ?どうしたの?」
左目だけから涙を流し続けるクラウの様子に面食らった、レヴィが、驚く。それでもクラウは涙を止めるすべを知らなしい、その涙は止まらない。思い出したくもない光景が頭の中をぐちゃぐちゃにかき回している。
それは、何もできない自分に対する後悔、屈辱・・・でも、何も思い出せない・・・辱められて、貶められ、存在自体を否定されたはずなのにそれでも・・・
「私は・・・何もしていない・・・レヴィが思ってくれるようなこと、私がレヴィにできることなんて何にもしていない!!!・・・うぅ、くぅぁぁぁぁぁあああああああ!!」
頭が痛い・・・頭が痛い・・・なんで?苦しい?なんで?痛い!!!
「あたしは#(を砕いて、でも、あなたは’(に一人じゃないって言いながら一人にして!!もう、何度も、何度も!!こんなに一緒にいたいと思っているのに、なのに、なんで今なの?なんで会いに来てくれたの!一緒にいたかった!なんで、~=!&$!!もう、これ以上いやだ!なんで、同じなのに、同じなのに、砕きあわないといけないの!!」
クラウの口から、何も聞き取れない言葉がひりだされる。目の前が黒に染まる・・・レビィ以外が見えない・・・レヴィを砕くことだけが存在する意味。
クラウは、何も知れない。
知ることなどできない・・・
慌てた様子で、レヴィが、クラウの体を支える。レヴィの手が、腰と手を支える。
「クラウ・・・ごめん、忘れるって言ったのに・・・ごめんなさい、私は・・・」
レヴィが涙を流している。なぜ?クラウは不思議に思いながら、それでも、レヴィに声を変えることすらできない。
「そんな思いしていたなんて・・・’(・・・クラウは、悪くないよ、本当は私が、一番傷ついてほしくない・・・&の構成に土足で踏み込んで・・・本当にごめんなさい・・・」
レヴィの反省の声が、クラウを包むと、不思議とクラウは落ち着いていくそして、闇に落ちていく。
「レヴィ!!」
手を伸ばす、少女に手を伸ばす、もう少しで届く・・・
「レヴィ!!!」
そこには、バラバラに砕かれたレヴィが転がっている。素敵な笑みをたたえていた唇も、とても素敵な笑顔を造っていた目元も、バラバラに砕かれ、ただの記号となっている。
クラウは、、混乱した頭で考える、レヴィは何もしていない・・・誰がこんなことを・・・
「あなただよ『’(=%&#”~』あなたがやったんだ、その手の剣で」
砕かれているレヴィがしゃべる・・・ぐちゃぐちゃの口で、切り刻まれ、ようを足さなくなっている指で、クラウの右手を指す。
「50回目の勝利の味はいかが?聖剣」
レヴィの口が閉じて、完全に死体になる。
「レヴィ?そんな?」
放心していたクラウの視界に、右手の剣が目に留まる。その剣は自らほのかに光を放ち、満足げに輝いていた。
「#(を砕いた!!今回も私の勝ちだ!!」
剣が高く掲げられていく、クラウの意志に関係なく、天高く掲げられる。
「そして、世界に栄光を、我が国にそれ以上の繁栄を・・・なぜだ、『’(』は、それができないのか?ならば不要だ!!穢れて、朽ちていけ!!」
人鞘とともに、闇の中に落ちていく。指の一つも動かせないままに・・・そもそも、もう、何の感覚もない。目も見えず、耳も聞こえず、何も感じず、何も想いもしない・・・まるで、自分が、人ではなくなってしまったように
あれから、どれくらい闇の中に沈んでいたのだろうか?
不意に、視界に光が差し込んでくる。耳に声が聞こえてくる。私を見ている人がいる。私に、何かを思っている人がいる。
「・・・・・・、・・・!!・・・」
光の中から、声が聞こえる、誰かの声、そして、私を呼ぶ、声。
「聖剣さん・・・泣かないで。わたし、いつまでも一緒だから。いつも聖剣さんと一緒だから。・・・聖剣さんのお姉さんと会うの楽しみだな。ね、聖剣さん、だから・・・」
「聖剣さん、わたしのからだをつかって」
「ようやく会えた」
手を離さないで一緒にいて。
誰かの手がクラウの手を握る。ふと天を見ると空が広がっている。近づいてくる・・・その光が強くなる。もう、目を開けていられないほど・・・
クラウは、窓から差し込む光に目を覚ました。不思議なことに、2階の自分の部屋に戻っていた。
「うぅ、うん?あれ?」
ベッドから半身を起こすと、机に向かっているレヴィに気が付いた。
「レヴィ?」
いつになく真剣な顔をしているレヴィは、クラウが起きたことにようやく気が付くと、いつものように笑みを浮かべようとしたが、たどたどしい表情にしかならなかった。
「クラウ、起きたんだ。さっきはごめんね」
クラウは、レヴィの気弱な顔を、初めて見た。あっという間に太陽のような笑みは曇り、少し伏した顔に影がかかっていた。
「ううん、心配してくれてありがとう。レヴィ、わた・・・」
『わたし、もしかして、過去とか前世とかにレヴィにひどいことをしている?』
クラウは、そう問いかけて、そっとその言葉を飲み込んだ。夢の中のこと、あれはどんなに現実のように見えても夢の中のこと・・・それに、前世なんてあるわけがない。
そう思い込まないと、これから、レヴィとまともに会うこともできないと思った。
「うん、すごく心配したよ。いきなり倒れるんだもの。」
目が泳いでいる。クラウは、レヴィは嘘が下手なんだと思った。
「ありがとう、心配してくれて・・・本当にありがとう、レヴィ」
「クラウ・・・ありがとう。クラウが、心配だったから・・・もしかしたら、傷ついているかもって思って」
レヴィは、再び、机に目を移す。そこには、クエストカードが置いてある。完了したものも、未達成だったものも。そして、今受けているものも、
「面白いものでもあった?」
クエストカードは、討伐隊の証でもある。それが、積みあがっていくことを楽しみにしている隊員も多い。
「クラウの・・・今までの辛さがよくわかるよ。いままで、本当によく頑張ったね。でも、私が保証するよ。クラウは・・・『剣聖』なんかじゃない!!もっと、素晴らしいものなんだって・・・私は、ずっと知っているから。」
「レヴィ?」
「クラウ!このクエスト、ここから出れるようになったらすぐにでも行きたい!!二人で行こう。私も・・・手伝うよ」
レヴィの手には、昨日の夜に受けたクエストカードが握られていた。その内容をクラウはまだ理解できていなかった。
クエストカード
特別依頼 依頼主:不明不明
依頼対象:■■クラウ
依頼内容
■■の回収、並びに不明不明すること
報酬
クラウを■■とする。
並びに、不明不明を不明不明する




