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君  パーティにふ  しいか    当てて聞いてみろ  ~最後の日~

クラウは、小川の水が流れるのをただ見ていた。


負けたことは何も悔しくなかった。ただ、何もできずに負けたことだけがなぜか悔しく、頭の中に残っていた。


頭の中でもう一度、闘ってみる。どうしても、足が出ない。手も出ない・・・


虚しい時間が何度も過ぎ、クラウは何度ともしてないため息をつき、ぼうっと、目の前の小川に、視線を落した。


「結局、全部ウソだったんだ・・・私の『剣聖』も、あの時の言葉も・・・」


そんな時だった。不意に影が差した。クラウは、不思議に感じたが、それが、決して悪い気配を出していないのを感じ、その方を向く、上がり始めた太陽にかぶさり、逆光となっている、レオがいた。


「クラウ、探したよ」


レオが、手を差し伸べてくる。クラウは、何も感じることなく、その手を取った。そのまま、レオの顔近くまで引き上げられる。クラウは成すすべもなく、そのまま、レオの顔近くまで引き寄せられる。手慣れているように、腰にてをまわされたが、それも気にはならなかった。


「どうして、本気でやらなかったんだ?」


レオの顔は、困惑に埋まっていた、クラウは、ふと、あたりを見た。まだ、起きだしてくる時間じゃないが、このままではいけないと思った。クラウは、すっと、背を伸ばし、レオの手を払う。


「本気って、私は全力でした。」


ウソを言っている自覚はある。きっと、そのことは、レオになら分かる。


「クラウ、お願いだ。『剣聖』として立ち会ってくれ。あれじゃ、」


レオの声を遮るように、クラウは一気に話し始めた。


「私は、レオから見て、『剣聖』足り得ましたか?私は、きっと、『剣聖』なんかじゃない。本当は、この大地で、『農民』や、村で『薬草摘み』として生きれたはずなのに・・・いきなり、『剣聖』です。」


クラウが、胸をかきむしる様想いを感じる、でも、もう、何もできないことはわかっていた。。


「私は、なぜ、『剣聖』なのですか?レオさん、なぜ、私なのですか?私の『剣聖』は、私の・・・クラスは、私の全てなのですか?エイダ様は、私をなぜ捨てたのですか?私には、わからない」


クラウは、ただ、抑揚もなく、声を上げる。レオは、片眉を上げて、それに応えた。


「私には・・・」


「少し良かった」


クラウは、顔を上げた。レオは嗤っていた。そのまま、クラウの手を握りしめる。


「良かった。お前には、感情があるんだな。突然、無感情と感情的な間を彷徨うクラウを、エイダは、不気味だと言っていたけど、俺はそれが見れてよかったよ。本当に感情表現が苦手なんだな。少しは、よくしようって思った方がいいぜ」


クラウは、想いもしない言葉に、手も顔も止まったように固まってみている。


「あの、レオさんは、僕なんじゃ?」


「ああ、これか?まあいいだろう?人は偽ることのある獣なんだぜ」


「偽る・・・獣ですか?」


レオはすこし、晴れやかな表情を浮かべ、クラウの手を、そっと放した。


「そう、クラウは、今まで偽ってきたのだろう?だったら素直に生きなよ。農民でも、薬草摘みでも好きなことをしていいんだ。1か月後に、『剣聖』クラウは、廃業だ。その代わりに自由に生きられる。クラウは、自由になる。」


「自由・・・」


クラウは、すこしだけちくっとした痛みがあった。そして、不確かな確信があった。私は自由になることは許されない。でも、


「ありがとう、レオ・・・少しだけ、私も、私を赦したいと思えました」


「おう、そんなに気負わなくていい。お前は、今は『剣聖』だ。だが、気にするな。さて、行こうか?」


レオが、手を差し伸べる。それを、クラウは、不思議そうに見つめた。


「いや、ギルド長が、お前の剣のことで呼んでる。早く終わらせよう」




「ふおおっっっ!!!!!!・・・俺は、俺は、ギルドで一の大胸筋を持っているんだ!!こんな、こんな木剣に!!」


そこは控えめにいって修羅場だった。クラウの木剣を囲み、ギルドの筋肉自慢たちが、汗を流している。


「ほら、もっと、頑張れ。どうした?筋肉デルタ地帯?」


アマンダが、煽っているが、その男は、力尽きたように、後ろに、尻をつく。皮の破れた手をじっと見つめている。


「俺の筋肉が、おれが?獣との力比べも、負けたことが・・・」


その男をしり目に、赤いドレスのアマンダが、笑みを受けべながら、手を振る。


「さあ、次に挑む者はいないか?」


「ちっ、こんな木剣が、無くなればいいんだ。こんな木剣一つ、斧で叩き折ってやる。やってやる、やってやるぞ!!木剣に刃物の力を思い知らせてやる!!文明の利器は伊達じゃない!!」


大斧を抱えた若い男性が、木剣の前に立とうとしていた。クラウは、焦り、木剣の前に立った。それは、大事な木剣だった。エイダ様が初めて買ってくれた、人にはただの木剣だったけど、私には、そう、私には大事な木剣。


「まっ、待ってください。持って帰りますから」


クラウは、そう告げると、男たちの視線が、クラウに集中する。クラウは、少し恥ずかしく感じたが、そのまま、立ち続けた。


「『剣聖を詐称していた』クラウじゃないか?おまえがその剣をどうにかできるのか?」


クラウは、その言葉を飲み込んだ。そう、私はもう、『剣聖』じゃない。


「ええ、できます」


「そ・・・」


「はい、いいよ。持ち主の登場だ。優先して、抜かせるって言っていたよね?」


「ムムム・・・」


アマンダの言葉を聞き、男は、大斧を、いったん地面に置く。クラウはそれを、了承とみて、柄に手をかけた。いつものように持ち上げる。


「よっと」


ずぼっ


木剣は、何も言わずに、少し間抜けな音を立てて、地面から引き抜かれる。クラウは、すぐに木剣の状態を見ていく。柄のゆるみなし、木剣のゆがみなし、構造にひずみ無し。


「良かった・・・」


クラウは、土を少し払うと、少し振って、肩の鞘に納めた。


「ああ、良かったよ。クラウ。もう、来ないんじゃないかと思った。すごく落ち込んでいたから。」


「いえ、大事なものでしたから。」


クラウは、表情を固くアマンダに応えた。アマンダはその表情に意地の悪そうな笑みを浮かべて、肩をすくめる。


「時には落として無くした方があなたのためになることもあるけど。・・・まあ、いいわ。」


「アマンダ・・・もう、それくらいにしておいてくれない?」


ターニャが、立っていた。着替えたのだろう、さっきの聖騎士の鎧から、白地の騎士服に服を変えている。


「もう、十分だろう?これ以上何を望むんだ?」


「そうね、私にも望むものがあるわ。でも、少し指向が変わったのは確かね。」


アマンダは、人差し指の先、赤く塗っている爪先に、舌を這わせる。ターニャが、ぐっと、目を開き、クラウとの間に割って入る。それには、蠱惑的な魅力と力があった。


「ふふ、クラウに言いたいんことがあったんでしょう?賭けに勝って私はホクホクなの。」


ターニャは、少し、訝しむような表情を見せたが、それに意に介さずに、アマンダは、その場から背を向ける。


「おい、どこに?」


「決まっているでしょう?ギルド長のところ。木剣が片付いたから、明日の式典に使えますよって報告しないと。それとも、ターニャさん、手伝ってくれる?」


ターニャは、少しだけほっとしたように、力を緩めた。クラウは、その意味を知ることもできなかった。ただ、ターニャの寂しげな顔に、ただ、何かが痛いだけだった。




しばらくして、その場に残っているのは、クラウと、ターニャの二人だけになった。クラウは不思議そうにターニャを見ているだけだった。


「もう少ししたら、訓練の時間が始まるよ。皆の邪魔になるし、そろそろ出ようか?」


「ターニャさん・・・」


「行こう、クラウ。」


クラウの前に立って、ターニャは歩き始めた。あわてて、クラウは、その後を追う。


討伐ギルドを出るまでの間、蔑むような、憐れむような視線が、クラウに刺さった。クラウはそれを見ないふりをして、ただ、進んでいく。やがて、ほんの少し前に通ったギルドの入り口に立つ。


そこには馬車が、待っていた。扉に獣と乙女の紋の入った変わった馬車だった。


「ターニャさん、これって?」


「クラウ、これから、短い間だけど、討伐ギルドであなたは監視される。でも、心配はしないで。大丈夫。大丈夫だから」




女性の御者が降りてきて、扉を開けてくれる。エスコートの手を取ると、不思議と懐かしい感じが伝わってきた。乗り込み、席に座り、扉の方を向く。ターニャが、驚いたような表情を浮かべていた。


「では、扉を閉めます。」


凛とした声がその場に響く。クラウはそっと頷いた。馬車の扉が閉じ、やがて、馬車が動き始める。


クラウは、この3か月近くを思い出していた。『農民』や、『薬草摘み』になるはずだったはずが、『剣聖』なんかになってしまって、そして、全く関係のないことで、『偽剣聖』と呼ばれた。


「すこし、哀れだね。」


自分ではどうすることもできない運命のような物に振り回されている。持ち上げられて、振り落とされた。そして、お前は無能だと告げられる。次はどうなるのだろうか?


「そうだよね。もう、これで終わりだよね。」


じわっと、心の底から、形容しがたい感情が持ち上がるのを感じ、そっと、小さな窓を開いた。窓の外に写る王都は、いつもと変わらないように見えた。




馬車は、30分ほどぐるぐると走り、不意に止まった。


『あまり、ギルドから離れてはいないな』


クラウは、そんなことを感じながら、馬車の扉が開くのを待った。やがて、外から、鍵の開く音が聞こえ、扉が開かれた。


「じっとしていたの?偉いわ」


御者から、不意に声がかけられて、クラウは少しむっとした。でも、返す言葉なんてあるわけがなかった。


クラウは、馬車から降りると、そこには、昔は立派だっただっただろうが、さびれて、手入れもされていない、少し傾いているようにも見える建物があった。


「ここが・・・」


御者は、荷台から、クラウの少ない荷物を降ろしていく。クラウは、その様子を、他人事のように見つめていた。ここに来た時より、少しだけ多くなった荷物が、そこに置いてあった。


「はい、荷下ろし完了。」


「あの、ありがとうございました。これ」


クラウは、銀貨を、御者に渡そうと思った。この間のクエストで得た報酬だったが、持っていても、無意味だと思った。せめてと思い、御者に渡そうとした。


「ああ、いらないですよ。そんなはした金。でも、あなたにはこれから、必要になります。だから、持っていてください」


御者にすら気を使われてしまったと、クラウは少しだけ恥じた。


「ありがとう。ごめんなさい、気を使わせてしまって。」


その声に、御者はきょとんとしたように、呆れたようにクラウを見た。クラウはその視線の意味が分からずに、ぼうっとその視線を受けていた。


「良かったよ。もう、大丈夫みたい。」


その言葉が理解できずに、きょとんとした表情浮かべたのだろうか。御者はその顔を、苦笑しながら見ていた。


「一人で、よく頑張ったねって。・・・伝言。」


なお一層わからなくなる。私には、エイダ様やおばばがいただから一人じゃない。

でも、不思議と反論する気もなかった。クラウは、置かれている荷物に手を伸ばした。

片手で十分に足りる荷物を肩にかけると、御者が、開いている手に鍵を渡してきた。


「これは、そこの建物の鍵。私は、今の時間は、ここまで。じゃあね。クラウ」


御者の声が、聞こえ、やがて、鞭の音、馬蹄が遠ざかる音が、クラウに聞こえていた。クラウはその間も、その建物から、目を話すことができなかった。


「よく、似ている。あなたは、私とよく似ている」


もう、朽ち果てることが運命づけられているその建物から、目が離せなかった。でも、諦めでもなく、決意とともに、扉に向かい歩き始める。


泥沼の中を歩いている10歩は、ただ遠かった。目の前には、鍵のかかったドアがあった。昔は本当に、立派だったのだろう。昔は、そこに多くの人がいたのだろう。


「短い間ですが、お世話になります」


クラウはそういい、そっと、鍵穴に鍵を差し込んだ。驚くほど、そのカギは静かに吸い込まれ滑らかに回った。


ドアが開くと、暗闇があった。ふと、ターニャの教えが、脳裏によみがえる。


『不意に暗闇に入ったら、慌てずに目を閉じて、10数えるんだ。そうしたら目が、暗闇に慣れてくれる。最初に言うけど、慌てたらだめだぞ』


クラウはそっと目を閉じる。心の中で、10を数えていく。


10・・・9・・・8・・・、2・・・1・・・0


そっと、目をうすく開く。目の前が少し明るかった。


目が慣れたと少しホッとして、目の前の光景にぎょっと、目を見開いた。



目の前には、黒い輪郭と、紅い光を放つドレスのような物を着ている少女型の物体がそこにあった。それは、腰に手を当てて、クラウを見ていた。


「’(、今度は、あなたの幸せを奪わせてもらうわ!今度こそ、私は本気よ。あなたが+P>&♯$)+=、私は、止めないわ」


それが、ビシッと右手をクラウの顔に向ける。

クラウは、少し驚いたが、監視が付くという言葉をふと思い出していた。少し変な人だが、同年代の子ならば、少し監視役としても、都合がいいのかもしれない。そう結論付け、荷物を、一旦床に置いた。


「すいませんが、誰かと勘違いされているようです。今日から1か月間、こちらでお世話になります『剣聖』のクラウです。よろしくお願いいたします。」


クラウが、少女に、丁寧に頭を下げる。


「ちょっと待ちなさいよ、『剣聖?』聞いてないわよ。クラウは、’(%$&&!”$でしょ?ちょっと、%(にいきなり頭下げているんじゃないわよ!少しは)(#=~しないさいよ、くっ、『%(』なんかに’(は屈しないわとか言ってみなさいよ。ふん、でもいいわ、許してあげる、わたし心広いから。」


一部に聞き取れない言葉があるのと、変な人だなと、クラウは思いながら、頭を上げようとした時だった。


「クラウ、着いていたのか?」


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