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君  パーティにふ  しいか    当てて聞いてみろ  ~疑惑の剣聖 ターニャside(7日間)~

相変わらず少し、少しだけ暗い展開が続きます。今回の暗い展開自体は次回で終わりです。

この話のみ、()で心象表現があります。

「エクス、お前に、クラウは必要な存在だ。そのまま手元にあったほうがいい!」


私は、全員の失望に満ちた視線に、打ちひしがれながらも最後の主張をした。クラウは、『聖剣』だ。お前の求めてきたものなんだ。

だが、私の声は、小さく、そして、哀れな主張に過ぎなかったのかもしれない。


「前の、神託の結果がすべてだ。なぜ、そこまでお前が入れ込むのかは知らんが、お前も追放されたくなければ、今後は黙っておくべきだ」


エクスの声が私の胸に冷たく突き刺さった。その言葉を最期に、私の言葉など聞きたくないというようにエクスは、立ち上がりドアから出ていく。


俯いている私の横を、・・・、オリビアが、ディ=フォルトが、蔑みながら通り過ぎ出ていく。



部屋に残された一人。私は無力感さえ覚え、ソファに腰掛けた。いつもならすばらしいすわりごこちだと思うソファーも、ただ、ただ、柔らかいだけだった。


「・・・わたし、無力だな・・・」


そう独り愚痴る。


わかっていた。管理者の話をしても信じてはもらえないと。




それは、お前のの妄想だと片づけられることも。




そう、管理者など、人間の世界には存在していない。存在していないものから命令を受け取るなどあり得ない。そう思われるのが普通だろう。




そう、管理者は、人間の前に出ることはない。そして、人間がそれを信じるわけもない。




「そうだよね・・・いきなり天使や、教皇様から、命令を受けました。じゃ。誰も信じてくれないよね・・・」


わかっている。これを、どうするか?そういうこと。


わかっている。




「私は・・・無力だ・・・」




そう、ここには、誰にも話を聞いてもらえる当てもない、ただの哀れな狂人がいるだけなのだ。




「ははっ、お似合いだな・・・私」


ゴミ捨て場のすえたにおいがする。空を見上げると、青い月が、私を照らしていた。


ただ呑み、あわれにも喰ってかかり、哀れにもここにいる。


「うぅ・・・」


そうだ、あの時命が救われたときと同じ状況。違うのは、私の身なりがいいくらい。私が一人なのは変わらなかった。




あの物別れの後、つい勢いで入ったなじみの酒場、エールを頼み、一息に飲み干す。


もう、泥水にしか感じないようなまずさに耐えきれずもう一杯を頼む。運ばれてくる珍味も、ただ気持ち悪いだけで、口に含むと、ゴムをかじっているような嫌な味が、いっぱいに広がる。


もう一杯、もう一杯としているうちに、さすがに、少し酔ってきたらしい。泥水で酔えるなんて、もう、自分がカエルか何かじゃないかと疑いたくなる。


そうか、私も、人間じゃないのかもしれないのだな。そう思うと滑稽だった。


ゴーレムのような少女に、カエルのような聖騎士か・・・


「おやじ、もう一杯」


私の声に、訝しげに見ていたおやじが、首を振る。


「ターニャ、おまえ、おかしいぞ。どうした、何があった?」


おやじの眼には、私のことがわかるらしい。でも、私には、私のことはわからない。私は、もう、人ではなくなってしまっているのだから。


「おやじ、あたしは、どうしたらよかったんだ?」


泣きじゃくり、乱暴に、隣のやつが飲んでいたジョッキを開けた。そこから記憶がない。




「あー・・・そうだった」


隣の客の酒は、私のエールが水に見えるくらいに強い、酒だった。一気に開けた、私は・・・隣の歳が妙に離れたようなカップルらしい奴らに、泣きついたんだった。


「情けないや。私・・・」


もう、立ち上がる気力もなく、地面に座り込み、ごみと視線を合わせる。

そうだったな・・・この視線の位置が私の定位置だった。そこで、猊下に拾われたのだった。私は幸せだった。寒さが特に厳しかった、あの冬、皆死んでいった。私を置いて。


仲間の死骸をそのままに私は、ごみをあさり続けた。仲間の死は悼むべきものだったが、私は生きることが必要だった。必死に生きていた。生きることしか考えられなかった。だが、やがて、そんな生活にも終わりが来る。

警備につかまり、万事休すとなった私を、猊下が、拾い上げてくれたのは。


「・・・」


月は相変わらず綺麗だ。汚れてしまったのは私だけだろう。


「あ、あは・・・うぅぅ」


今日は誰も見ていない、私が私に戻れる・・・


「もう、嫌だよ・・・みんなのところに逝きたいよ・・・」


叶わない願いだと知っている。届かない願いだと知っている。赦されない願いだと知っている。でも、そう思った。


みんな家族だった。暖かかった。私は生きることと引き換えに、その暖かさにふれるすべ、全てを失った。


残ったのはこの冷たい体だけ。それを、猊下のためにあり続けている。もし、仲間が私を見たらなんと言うだろうか?


きっと言うだろう。「化け物」と。



仲間は、青い月の夜に現れ、私の心をずたずたにして去っていく。そうだ、今日も・・・


ゴミ袋の中から、あの日の仲間が次々と現れる。私は、それを見上げている。


遺されたモンスターの一つ、残留思念と言われているやつらだ。

こいつらは、私の記憶を食い物にして現れている。問題は、こいつらに対抗するすべを私は持っていないということだ。


死にたくなくて、僕になった、私の罪の意識が、仲間を見殺しにした、そして赦されるはずもない私が、仲間に侮蔑され、嘲られ、煽られ、玩ばれる。

青い、青ざめた月の下で、何もできず。今日はそんな日だ。


そんな日なのだ。私が、何の力も持たない、管理者の僕に過ぎないと知る日。


「ターニャ、お前が一緒に来ないせいで、俺たちは寂しい思いをしてるんだ。」


リーダーの子が。私の頬に触れる。それは、一種の痛みを生じさせ、私は強張る。痛みの正体は葛藤。人間にもなれず、管理者にもなれない。私を踏みにじる痛み。


「いい思いをしているのね?うらやましい」


後ろから、冷たい手で抱きしめられる。その痛みが心臓にまで届く。でも、私は抵抗する気すらなく、それを受け入れる。今宵、私は、ここで朝までこいつらの慰み物になる。ただ、僕である私を、彼らがどうすることもできないのは知っている。私は、それを受け入れる。今日、クラウのことを止められなかったように、私は・・・


ぐっと、体を強張らせるその時だった。


「はあ、悪趣味」


路地に声が響いた。見ると、赤い光が、節々から見えている、少女が路地に入ってきていた。


『子供?馬鹿な・・・まだ、夜明け前だぞ、こんな時間に?』


私は、驚きながら、思わず声を出そうとした。


「ああ、あなたのことは聞いていないから。ただね、そこな、悪霊ども」


少女が、腰だめに構え、そこから、赤黒い炎を上げているような刀が引き抜かれる。それは、しずかにそこに圧倒的な質量を伴ってあった。


「斬ってあげよう。お前らの無念を。お前らの妄執を。そして、罪の意識を持つものよ、私が、代わりにお前の罪を斬ってあげよう。」




あっという間だった。もう、見ている暇もない間に、その悪霊たちは、後悔の声を上げる間もなく切り伏せられる。


「強い」


私はそう思った。動きにくそうなドレスに身を包んでおきながら、その少女の身のこなしはあくまで軽く、その手はあくまで楽しげであった。


ぶんっと、血を祓うしぐさをし、赤黒い刀身を、鞘に収めるように、何もない空間に取り込んでいく。


「一振一生にして一振一死。」


少女の手に持っていた奇妙な剣が消えてなくなり、そして、私に向き直った。


「クラウ?」


思わず声が出たそんなはずはない。が、少女はずかずかと近づいてきて、むすっとした表情をこちらに向ける。


「あなた、会ったわよね?」


「え?」


記憶を呼び起こす。確かに・・・


「あなたの知っている子がいるって聞いてきたからここまで来たの。もう、本当に疲れたわ。歩いてきたから!」


「は?」


私は、その言葉に驚く。管理者が歩いてくる?どういうことと、問いたくなるが、それを遮るように、二人の声が聞こえた。


「もう、いきなり走らないで、びっくりしたじゃない(でも、追いついた甲斐あったわ。かっこいいポンコツじゃない上官殿が見れて、本当に満足です。ああ、でも、昨日までのポンコツ上官殿もステキ)」


「とりあえず、お前が、人前でありながら、自分の痴態をさらけ出しながら走る変態だということは、わかっていたからな。魔剣、大丈夫か?まあ、平気そうだな」


一人は、体を乱れたバスタオル一枚で隠したつもりになっている、頭に角のある大柄な女性と、もう一人は、小柄で、自分の身長より大きな杖を持った少年だった。


管理者?あと、人間?


私の僕としての直感が囁く。こいつらは危険だと、しかし、助けられたのは、事実だった。私は、その少女にお礼を言うことにした。


「ありがとう。おかげで助かったわ」


「違うもん」


少女のむくれた顔がそこにあった。違う?どうして?


「助けられたから、貴女が傷つきたいと思っているのを邪魔しただけだもの。助けてなんかいないもの。プレイの邪魔をしただけだもの」


「こら、お礼を言われたら、答えるのが、礼儀って教えたでしょ?あと、そんな言葉は、人前では使わないって。って、教えたでしょ、まったく、本当に物覚えが悪いんだから(でも、そんな上官殿が好き。大好き)」


「わたし、こんな自分に敬意を払いえない奴なんて助けた記憶ないもの!!だから、礼なんて言われてないもん。だから、」


「お前の言い分もわかる。いいから、ここは、返礼をしておけ。あと、魔王殿、少し黙っていろ。すまないな、ご令嬢、我儘な奴でな」


私は・・・そう、私は、今までの自分が少し馬鹿らしくなったのかもしれない。


「ありがとう、少しだけ、目が覚めたわ。本当にお礼を言いたい。ありがとう」


騒がしくわめいている少女は、びっくりしたようにこっちを見たまま、固まった。その様子に私が驚いていると、角の生えた女性が、ふぅっと息を吐き、私を見た。


「上官殿は、そう本心から言われると弱いしから、(あと、上官殿最高にかわいくて、かわいいから、かわいい。早くお持ち帰りして、よく言えましたって、頭なでなでしてあげたい。あと、いろんなことも教えてあげないと、まずは・・・ああ、教えたいことが多すぎて、わたすのデータ、パンクして、わたすのプレイリスト漏れちゃう。ああ、上官殿、もっと、もっと好きにしていいんです。っていうか、もっと私を上官殿に染め上げてください、もう、上官殿がいればわたす、わちし、もう、)だから、そう、いじめないでほしい」


「魔王殿の言われることもごくわずかには、もっともだが、どうやら当たりらしい。わざわざ、王都まで来たかいがあったな。聞きたいのだろう?」


固まっていた、少女は、がっくりと肩を落とし、残念そうな目で、その魔王殿を見るて、ため息と、少しうれしそうに頷くと、意を決したように、こちらに歩いてくる。


「ターニャだよね?聖騎士ターニャ。」


その少女は、そっと私の前に膝まづいた。私は、驚く。そんなことをさせまいと、声を掛けようとするが、少女は、そっと私の唇に左手の人差し指を当てた。


「ターニャ、あの人が好きなのでしょう?だったら、今日のようなことをしたらダメ。管理者として言うよ、あなたは生かされたくて僕になったんじゃないよ、生きるために僕になったんだから。そんなこと言ったら、あの子悲しむよ。」


「・・・」


管理者は人のことなど知らないはずだ。だが、それを超えつつあるこの少女は何なんだろうか?


「私も好きな人がいるの。だから、傷ついてそれが正しいなんて思うあなたを見ていると辛くなる。だからね、ターニャ。」


左手が添えられ、右手が、口元から離れる。私の目に映ったのは確かな決意を秘めた少女だった。


「あなたの想っていることは真実なんだよ。嘘じゃないんだよ。そして、あなたの愛していた人は、泣いているんだよ。でもね、あなたを憎んで、泣いてなんかいないよ。あなたが泣いているのをみて、泣いているんだよ」


その少女は、そっとそこで、言葉を切った。私は、それを聞いて、少しだけ、胸が苦しくなった。僕になって、それを誰に打ち明けられずに、自分なんてどうにでもなれと過ごしてきたことが見透かされているようだった。


「だから、せめて、弱かった自分を愛してあげて、弱かったのも嘘じゃないよって、そして、それを踏み越えて強くなったのも嘘じゃないよって。あなたと、あなたの心にあるもののためにあなたを愛してあげて。・・・って、ちょっと説教みたいだね・・・」


すこし照れ臭そうに、少女は笑みを浮かべた。そして、真剣な表情を浮かべた。


「ここまでは、人のお話だけど、ここからは」


「ええ、心が少しだけ軽くなりました。管理者様、どうか、私に、ふれてください。私の中に、あなたの大事な、愛しているものがあるんですね?」


頷いた。少女は、頷いた。確かに、見た。


「そう、お願い、あの時お願いしたことを私は見たいの・・・って、見ているな、恥ずかしいじゃない!!」


そう、管理者様の周りには、いつの間にか着替えている魔王殿と、不思議な少年が残っていた。


「いや、退場するタイミングを逸しました。上官殿の、言葉を記録したいと思っていて、あ、最近音声のみだったら、簡単に記録できるようになりました。後で、『|閲覧』してと思います。(上官殿の愛のすべてが私に降りかかります様に・・・ぐへへ、ああ、必死に強がっている上官殿の愛が漏れてきています。わちきも、上官殿に・・・)」


「ああ、すまないな。こいつを少し説教と調教してくる。続きをしていいぞ」


じっと、2人がにらみ合ってる。凄みというか、背中を伝う、恐ろしさすら感じる。


「こら、ここでやらない!!表でやりなさい、表で」


少女が、抗議の声を上げると、二人は、顔を見合わせて、少し笑った。


「上官殿に言われては仕方ない。表に出ろ(げへへ、こいつに勝ったら、今日から上官殿の上は、私の席だ。ぐへへ、上官殿を私が欲しくてたまらなくなるまで、無数に時を重ねさせてもらいます!!)」


「・・・まあ、人の嗜好にとやかく言うつもりはないが、少々、本気で叩かせてもらう。悪く思うな、ポンコツ(魔王殿)


2人は連れ添って、その場を後にする。少女は、少し呆れたように、ため息をつき、再び私を見た。


「私の瞳が役立ったみたいで良かった。じゃあ、いくね」


私は、首を縦に少しだけ振る。目が合い、いつものように、頭の中を見られているような、感触が、脳をかき回すが、それは、一瞬のことだった。こんなに早く終わることなんてなかった。


「ありがとう・・・ねえ、教えて。ターニャから見てクラウってどんな子?」


少女は、私の記憶から必要なものを引き出していただろうが、そのように聞いてきた。私は、そっと、微笑む。


『それは、管理者様の観られた通りかと。』


いつもならばそう言うだろうが、今は違う。伝えたかった。この少女が、心配してくれているあなたのことを。


本当は、あなたは、一人ではないということを。


「きっと誰かに会いたいと思っている、寂しがり屋で、ちょっと、自己表現が苦手な子です。あなたならば、きっと、話題が合うと思います。・・・猊下に言われたとおりに、そのための準備もしてきました」


すっと、言葉をきる。いまだに信じられないことだったが、きっとこれも事実なのだろう。


「教えてください、本当に、クラウは、負けるのですか?管理者が、人間なんかに?」


微妙な沈黙が流れた。そして、少女は沈痛な面持ちで、ゆっくりと、首を縦に振った。


「ええ、誰にも、反論できないくらいに負けるわ。そして、だれも、止めることなんかできないの・・・だから、貴女だけは味方でいてあげて」

次の話は、剣聖の敗北 ~プロローグ(レオside)~です。

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