君 パーティにふ しいか 当てて聞いてみろ ~疑惑の剣聖 ターニャside(いままで)~
相変わらずの展開が続きます。人によっては嫌な感じがするかもしれません。
あと、2話同じように、少し暗い展開が続きます。
「はい、馬車に乗る前に、握手の儀式だ。王都ではね、仲良くなる時に握手をすることって決まっているんだよ。」
あの日、私は、全員と握手を交わしていた。握手した瞬間に、情報が頭に入ってくる。私の能力は、『全鑑定』。討伐ギルドの中でもこの能力を持っているのは私だけだった。
私には、2つの目的があった。1つは、異端審問官の見張り、そしてもう1つは、
『兵士っと、ええとスキルは、ああ、なるほど前衛向きだな。じゃあ、国軍で』
『剣士か、スキルふむふむ・・・感知系のスキルがそろってる。じゃあ、騎士団行きで』
『魔術師か。こいつはスキルが当てにならなさそうだ。国軍で研究をしていた方がいいな』
『おっと、神官、待っていました。スキルも回復を持っているのか。いったんは騎士に入れて、あとで引き抜こう』
神官などの引き抜きだった。今日の鑑定はなかなかホクホクな出来で、すごく楽しかった。
そう、最後の子の手を握るまでは。
『この子が剣聖か』
白に蒼と翠の髪、そして、首元の同じような色のチョーカー、あとは、ひたすら白い。白のワンピースに白いソックス白のシューズ。
『名前はクラウだったね』
エイダに聞いた名前を反芻し、そっと手を握った。
頭に浮かんだのは、不可解なものだった。
「クラウ■■■ 種族:■■■
クラス:今は剣聖 本当は■■■■■■■
権限:あなたの鑑定では非公開
奇蹟種別:■■■、■■、■■■■
御業:封印 スキル:取得不可」
『同じだ・・・』
私はじっと、それを眺めていた。それは、戯れで、猊下の鑑定を行った時のこと。猊下の時も同じように、何の情報を読み取れなかった。全てが黒塗りの一枚の表紙を眺めているような気持だった。
「ええと、お名前言えるかな?」
「ええと、クラウと申します」
抑揚のない声が帰ってくる。まるで、ゴーレムか何かを相手にしているような感じすらする。
『美少女のゴーレムか、これもありかもしれないけど』
内心で苦笑し、相手が正しくこちらの質問を理解していない可能性に気が付く。となると、正しく聞かないと、正しく答えないタイプかと考えが付く。
『せめて、名前だけでも聞きださないと』
「イヤ、聞きたいのは、通称とか愛称じゃなくて、本名なんだ。あなたのお名前は?」
一瞬だが、相手の眼にこちらを観察するような光が産まれた。思わず、引いてしまうところを、胆力で押しとどめ、じっと相手の眼を見る。ただ、こちらから覗いていることがばれないように、笑みを作るのを忘れない。
「あの、クラウです。これ、本名ですよ、ターニャさん」
あくまで、名前はそうだというのか。もう、こいつ、少し扱いづらいな。
「・・・そうなの?変わった名前ね。ちょっと、気になったから聞いちゃったの。クラスも教えてもらえる?」
「クラスは、『剣聖』です。裁定の儀で、剣聖と言われました」
それは偶然なのだろうか、今まで黒塗りだった、本当のクラスに、剣という文字が浮かび上がった。剣?・・・剣?無機物のクラス?
クラスの常識として、生命体に無機物が宿ることはない。剣か・・・ということは、少し揺さぶってみよう。
「へえ、そうなんだ、『剣』のクラウでいいかしら?」
私は、相手にきちんと聞こえるように呼び掛けた。相手は、むすっとしたような表情をする。これは・・・人をまねているな。だが、獣や残滓付のような感じはしない。自然と出た表情かな?だとしたら、ずいぶんと、人間に近い表情ができるということ。
『これは、猊下と同じかな?』
笑みの下に思考をしまい、私は、少女の反応を待った。
「ええ、いいですけどって、勝手に訳さないでください。『剣聖』のクラウです!!」
見ていることがばれているのか、それとも、舌足らずなのか、わからないが、クラウはそう答えた。
その翌日、クラウが、倒れるまで走らさせられたらしい。私は、深くため息をつき、報告書を作成するために、クラウのいる医療室を訪れることにした。
その廊下にあいつがいた。
「アマンダ、お前も、見舞いに来ていたのか?」
「あら、ターニャさん。私は、治療していただけですわ。お見舞いに来られたのはエイダさんだけ」
ふと、アマンダの手元を見る。そこには、瓶が握られていた。特徴的な形の瓶。
『あのレーベルは・・・』
ふと、おかしいと思ったが、私の思考が働いていたのはそこまでだった。
「中に、エイダとクラウがいるのか?」
「ええ。いるわ。そろそろ、クラウは着換えの時間だから、お願いなんだけど、エイダさんとお話をしたいから、ターニャさんがエイダさんを呼んでもらえるかしら?」
『自分でやれ』
私はそう内心で悪態をつきながら、エイダの名を呼んだ。
私は、エイダとアマンダが話をしてのを、廊下の曲がり角から見ていた。手には、午後からのカリキュラムが書かれた冊子を持っている。
『あれ?さっきのは夢かな?』
どうも、疲れているようだ。アマンダとエイダの話し声が、まるで水の中で響くように聞こえてくる。
「そう、あなたはそうなのね」
「はい」
エイダの声に抑揚がなく、無理やり答えさせられているような感じすら覚える。
「私に、あなたの本当の望みを教えてくれない?」
「私は…」
「あら、どうしたのターニャ。ぼうっとして?報告書、終わったよ」
アマンダが、私の目の前に立ち、心配そうな表情を浮かべていた。
「ああ、いや、何でもない。エイダがいる部屋が?」
「ええ、クラウのいる医療室。あっと、これよろしくね。」
アマンダは持っていた報告書を、私に押し付けてきた。
「・・・って、提出だけだろう?自分でやれ。」
アマンダは何も言わず、右手を軽く振るとに、廊下を歩いていく。私は、肩をすくめ、エイダに声をかける。
「エイダ、午後からのカリキュラムを持ってきたが、クラウはまだ着替え中?」
「ええ、少し遅いくらいですわ。全く、アマンダさんが変な服を持ってくるから。」
その抗議の声に、私は、内心苦笑する。アマンダはどこで仕入れたものかは不明だが、奇妙な服を何着か持っている。それも、人にあげることができるくらいにたくさん持っている。あのスタイルで、年齢差があるクラウにあげるものがあるとは思わないが、私は、意外とその姿を見てみたいと思った。
やがて、クラウが、部屋の中から現れた。白いシャツ、青い厚手のスカート、同じ素材で作られたと思われる青いジャケットを羽織っている。
なぜだろうか、エイダが泣いているように見える。それを、クラウが慰めている。
どういう表情を浮かべればいいのかわからないような、無表情のような表情だった。困惑は伝わってくる。
一瞬声をかけるべきかどうか迷った。しかし、意を決する。時間は大事だ。2人のためにも私のためにも。すっと息を吸い、いつものターニャを作る。自信があふれ、そして、猊下の手として何物にも動じない。
「エイダ、クラウ?じゃあ、行こうか。今日の講義は大事だよ。これからこの世界で生きていくのならば」
今日はお昼から講義の時間だ。エイダにとっては、つまらない講義かもしれないが、クラウにとってはどうだろうか?クラウに聞くだけの価値があるだろうか?私は不安を覚えるが。そう聞いた瞬間に、クラウの顔に、好奇心に満ちた表情が生まれた。
創世期から存在しているはずの管理者が、そんなことを考えているとは思いも知れなかった。私は思わず、クラウの顔を見返す。クラウはきょとんとした表情を浮かべ私を見続けていた。
それから1週間後、私たちは久しぶりの再会を果たした、そして、あす、初めてのクエストに出立する。
クエストは、ただの、指令などではなく、神の指示という形式をとる。特に残滓討伐は重要なクエストだった。
その夜、私は、久方ぶりに来る、管理者の僕としての機能に苦しめられていた。
『クラウは、管理者の可能性がある。』
またか・・・
さっきまで、私はベッドにいた。しかし、今、机に座り、必死に報告書を仕上げている。この報告を今あげないといけない理由などはない。それを知りながら止めることができない。
クラウの訓練を時々、見ながら私はそう確信することが増えていった。異常ともいえるのが、スキルを必要としない幾つかの行動だった。
速すぎる足、頑強すぎる体、知識の取得についても、本来はスキルが必要なものも何の苦も無く取得できている。ただ、魔導系のスキルのみ全く取得ができていなかった。
全て猊下と同じ。
私は、知らなければならなかった。
私は、知らなくてもよかった。
だからこそ、止まることは許されなかった。
だけど、止めたかった。
「猊下、聖剣が、30年前。に。手。に。入/れ。ら。れ/なかっ。た聖、剣。が王・都/に。あ。りま。す。」
書こうとする右手を左手で抑える。爪の跡が付き、右手から血が流れても止めることもできない。痛みよりも快楽を覚える様な興奮の中。字にならない。文を書き。夜に。猊下を想い。達した。行った。
私は、朝焼けとともに後悔に打ちひしがれた。
あれだけ抑えていたはずの右手の傷はなくなり、机から床の境見えなくなるまで、字があった。そう、見つけた。見つけた。見つけた。延々と、同じ書体で書き続けている。
私の字だ、そう、私が私でないときの字だ。
おぞましさに下着一枚でへだてた肩を抱く。
わかっていた。これが、法国で聖騎士になるということだと。わかっていた。もう戻れないことにも。抵抗など無意味だとそれも知っていた。
「聖騎士か死か、選べ。」
あの時は、私は、聖騎士を選んだ、でも今ならば、きっと、今ならば、死を選ぶだろう。
目の前に、揺らぎが生じるのを感じた。・・・顕れ・・・だ。わたしは、ベッドから転げ落ちるようにして、しかし、床に膝まづき、それが、顕れるのを待った。
きっと、上級聖女の一人が出てくるのかと思った。
しかし、起こったことは逆だった。
そこは、純白の光の満ちる聖堂だった。私は、いつもの服で、そこに傅いていた。
「大儀である。」
声が響いた。あの猊下の声だ。ということは、猊下の空間の中に私は招待されたらしい。
不意に隣に気配を感じた。小さな女の子が座っていた。
「すこし、ごめん。苦しかったら言ってね」
あの声が聞こえた、抑揚のない、クラウによく似た声。
頬に手が添えられる。その手を見て、私はぎょっとした。人間らしい、温かみの欠片もない金属のような光沢をもつ手だった。思わず見上げる。そこには、クラウと名乗った少女と瓜二つの少女が、私の頬にふれようとしていた。
「あなたの、見ている世界を少し借ります。その代わりに私の眼を訓えます。聖騎士たるあなたに祝福を」
頬、いや、こめかみに指が当たった瞬間に私の意識は飛んだ。もし、現実ならば、失神は避けられなかっただろう。だが、私は、気絶することも許されずに、ただ、耐えていた。いや、耐えていたのは、彼女の方か、私は、彼女の気持ちを知りながら、終わることのない、苦痛ともとれる感情に身を任していた。
「終わりです。ありがとうございました、辛かったでしょう?ターニャさん」
「いえ、管理者様のお役に立てて幸いです。」
多分今ので読まれたのだろう。そう、明日からは、クラウの初クエストだ。おそらく、猊下はそこで攫うつもりだろうと思い、首を垂れる。
が、猊下の口から告げられたのは意外な一言だった。
「ターニャ、お前は、エクスと行動を共にし、供に在れ。そして、それがあるべきを取り戻すまで、見護り続けろ」
猊下の言葉は、天上から響き渡るようだった。思わず、見上げそうになったが、床の境を見続けた。そんなとき、目の前に、黒と紅の足が写り込んできた。
「さっきは、ありがとう。」
少女が前にちょこんと座り込む。不思議だった。この少女はクラウより、小さく傷ついているように見えるのに、なぜこんなに明るくふるまえるのか。
「あの子のこと、よく見てくれる人が一緒でよかった」
すっと、右手を取られる。抵抗もできず、私は左手も差し出す。その手が優しく包み込まれた。
「私の分かれをお願い。そこに私も必ず行くから。だから、私の・・・・」
泣きそうな表情で、訴えてくる。私は、静かに頷いた。今日、私はクラウと会う。必ず見守ろう。それが、神の御使いたる、管理者の言伝なのだから。そして、私は、管理者の僕に過ぎないのだから。
その日、エイダとクラウとともに、初めてのクエストに出かけた。相手は、猊下と同じ管理者・・・その、残り香・・・言いたくはないが、管理者様と戦っているようで、本音を言えば戦いたくはない。気にすることはないと猊下は言ってくれるが、それでも、自分自身を狩っているようで嫌になる。
どうやら、それはクラウも同じらしい。目の前で、倒してほしいと懇願するように震える残滓に剣を振り下ろすとき、微妙に嫌そうな表情を浮かべている。今のクラウに心があるのかはわからないが、クラウが、もし、そう感じてくれているのら、それでもいいと思うしかなかった。
討伐は3日にも及んだ。もし、私とクラウだけならば、2日もかからなかったかもしれないが、エイダがいる以上、全力でというわけにはいかなかった。
その後、王都に帰還しさっそく、クラウのクラス神託に臨んだ。
私があの方から授かった訓えが定かなら、きっと、このクラス神託にこそ意味がある。私は、その時を待った。
神官の口から出たのはおそらくほかの人には、意味をなさない言葉として聞こえたはずだ。だが、私には焦点を結ぶ言葉として聞こえた。
でも、それでも、私は、見守らないといけない。
「な、なんて言ったんだ?何も聞き取れなかったぞ」
如何にも困惑したような声を出す。これを、おかしいと思う人はここにいない。
「そうだ、クラウさん、クエストカードを見てみられては?そこに答えはあるはずですわ」
私と違い、本当に困惑しているようなエイダ嬢が、クラウに呼び掛ける。クラウは頷き、クエストカードを覗き込む。
私は、絶句した。
「なにこれ・・・」
そこには、管理者の瞳を借りている私にも、想像のつかない言葉が記されていた。
’(クラウ■■■■、エイダ=マグサ
偽の『剣聖』クラウ
需給クエスト:同族狩り
100/100 依頼完了
クラウ■■■■
スキル取得・・・失敗
御使いの残滓による強制通信
■■■■■■■による御業■■行動
御業『御身は聖剣』を■■
聖剣たるあなたに祝福を、そして、世界の敵に誅罰を。
御身は聖剣にして、御身が持つものすべて聖剣なり。
『魔導士』エイダ=マグサ
需給クエスト:残滓討伐
100/100 依頼完了
エイダ=マグサ 神託
火球を授ける
御手は炎。なり、汝の敵を焼き尽くすだろう。
「クラウさん、それは?どういうことです?あなたは『剣聖』なのではないのですか?」
問うようなエイダの声が耳を打ったが、私はそれどころではない、驚きに打ちひしがれていた。
『そんな・・・そんなことが起きているはずはない。そうだとしたら・・・』
彼が負うべき苦しみは何の意味もなかったのだろうか?
私が敬愛し、そして・・・愛している勇者に、苦痛を強いるためにクラウはもたらされたのか?
次話も、ターニャsideです。




