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田舎生まれの剣聖は王都に 夢を見る ~学び舎は王都にある(上)~

人によっては不快に感じるシーンがあります。

また、世界観の説明シーンがあり、主人公たちが勉強するようなシーンがあります。

読んでみて、無理だと思った場合には、田舎生まれの剣聖は王都に 夢を見る~エピローグ~

の前書きに、学び舎は王都にある(上)(中)、そして のあらすじと、簡単な世界観を書きますのでそこまで飛ばしてください。

昨日は大変だったな。クラウはそう思い内心でため息をつき、、辺りを見回し、訓練場には場違いな格好の自分をみて、再度ため息をついた。


訓練場には、10人の子供たちが集められていた。エイダは、軽装の皮鎧に身を包み、動きやすそうな恰好をしていた。他の子も、大なり小なりピカピカのこれから戦いに行くような格好だった。


そんな中、普段着のようなワンピースを着ているのは、自分一人だった。


『教えてくれても良かったのに・・』


クラウはそう思うと、相変わらず、真っ白と言われる自分にふうっとため息をつくと、そっと首のチョーカーにふれた。チョーカーは気が付いたらつけているようになっていた。時には、完全につける時間がないにもかかわらず、気が付いたら、身に着けているそんなことが増えた。


訓練場の、観客席と言える場所は、おそらく、ギルドの構成員でいっぱいだった。


やがて、すでに初老の域に達しつつある男性と、ギルドの正装らしいローブを羽織ったアマンダがその場に姿を現した。

ざわついていた空気が、一瞬で静まり返り、凛とした空気が早朝の訓練場を包む。


「これより、討伐ギルド入団試験を開始するが、次に告げるものは試験を合格したものとして扱う。魔導士エイダ、剣士レオ・・・」


次々に呼ばれていく。気が付けば、クラウともう一人の男の子だけが呼ばれなかった。


「クラウ」


不意に呼びかけられて、驚いて振り向くと、そこにはエイダ様が立っていた。


「合格しなさい。これは命令よ。あなたならできるわ」


右肩に、そっと手が置かれる。クラウは、その言葉を飲み込み、そっと決意を新たにした。




「はぁ?なんでだよ。俺の親は貴族だぞ!!」


だが、残った男の子はそんなことは関係なく不満をぶちまけていた。辺りを威圧するように大声を上げる。


「ほう、貴族ね・・・。大声で、威勢よく叫ぶだけが貴族っていうのなら、王軍に行った方がよかったんじゃないかね?」


初老の男性だろうから、すこしからかうような声が男の子にかけられる。その声に観客の笑い声が混ざる。


「ちっ、王軍は嫌いなんだよ。俺は、貴族なんだからな!!こんなちっぽけなギルド・・・お・・・れ」


その瞬間だった。まるで、殺気が空から降り下りてくるように、空気が重くなった。クラウはそれに身震いをした。


「ちッ、やればいいんだろ、やれば・・・てはじめにこの場違いで、みすぼらしいのをぶちのめせばいいのか?」


みすぼらしいのといわれて、クラウはむっとしたが、それをぐっと飲み込んだ。たしかに、貴族の装いから比べれば私の装いはみすぼらしいなと、一瞬思ったが、それを気にかけずに、首元のチョーカーにふれる。冷たかったはずのチョーカーから暖かさがあふれているような気がして、少しだけ勇気がわいてきた気がした。


「私は、それでも一向にかまいません。」


自分としては合格点という声で、はっきりと言った。決して大きな声ではなかったが、その声に、隣の男子は、たじろいた様子すら見え、周りからは、ほうっという感嘆にも似た声が上がった。


「な、貴様!!」


「双方、そこまでだ。では、試験を言い渡す。この訓練場を何周かしてもらおうか。」


あまりに簡単な内容に、クラウと男の子は、驚いたような表情を浮かべる。


「儂がよしというまでに動けなくなった場合は、失格とする。それでよいかな?」


「おう、こんなやつに負けるわけがないぜ」


「わかりました。頑張ります」


クラウと、その男の子は頷き、示された場所に向かう。そして、二人並ぶ。


「良しそれでは・・・はじめ。」


「へん、お先に」


男の子は、ダッと走り出すのを見て、クラウは、少し遅れ気味に走り始めた。要は、遅れなければいい・・・すこしだけ、ゆっくり行かせてもらうことにした。そして、偶然か必然か、クラウの読みは当たっていた。



それから2時間後、



クラウと男の子はずっと走り続けていた。クラウは、少し息が上がってきていた程度だったが、男の子はすでに息も絶え絶えと言った様子だった。クラウとの周回差は数えるのも嫌になるくらいにつき、男の子の足はすでに、ふらふらと、歩くことすら難しいように、たたらを踏んでいた。


クラウは、その横を通り過ぎる周回差がまた一周増えた。


『大丈夫かな?』


クラウは、その様子を不安そうに見ていた。男の子の様子はすでにボロボロと言った方がよい状況だった。


『早くやめた方がいいと思うけど・・・私からは言えないか・・・』


クラウはそう思い、少し足に力を入れた。その瞬間だった。不意に、後ろからを襟首を捕まえられ後ろに押し倒された。


「な?」


クラウはあっという間になく、あお向けに倒れ込む。


「はは、こいつが、先に倒れたたんだ。この試験は俺の勝ちって、」


2~3歩歩き、男の子は、初老の老人に伝えるが、初老の老人は緩やかに首を振った。


「まだやるようだが?君はどうするかね?」


「まさか?」


クラウはすでに立ち上がり、とんとんっと足を地面に打ち付けた。


「まだやれます。続けてください」


「では、ここからは、10周してもらおうか。今までの周回はなかったものとさせてもらおう。それができたのなら、合格とする。」


「あと、10周?・・・」


「あと、10周ですね・・・わかりました」


クラウは、思わず、男の子の元に駆け寄った。


「大丈夫ですか?足が動いていないように見えます」


クラウは、男の子に、小声で問いかける、すでに蒼い顔をしている、男の子は、少しできる限り顔色を変えないように小声で答えた。


「なんで、おまえ、俺のことなんか気にしているんだ?・・・お察しの通りだよ。さっきから、左足が動かないんだ・・・くそ、兄貴や両親に見直してもらうチャンスだったはずなのに・・・簡単な試験だって聞いていたんだ・・・くそ・・・」


悔しそうに俯く男の子を見て、クラウは一つの提案をする。それに驚いたように男の子は首を振った。


「そんな恥ずかしいこと・・・できるわけがない。」


「でも、私はやります。10周位余裕です。」


クラウは、ニコッと笑い、男の子に肩を貸し、そのまま、走り始めた。


その光景に訓練場は息をのむような空気が流れる。クラウは、すぐに、1周をクリヤする。


「あんた、大丈夫なのか?」


男の子が不安そうに聞くのをクラウは流した。これに意味はないのかもしれないでも、


「あと9周ですから・・・行けます。人と一緒に走るのは初めてなので、上手くできないかもしれませんが、そこは納得してください・・・しっかりつかまっていてください」


クラウはそういうと、全力で走ることにした。男の子は、クラウに引きずられるように走っている。あっという間に8周が消化される。


「気を付けて走っていますが、体重は、できるだけこっちに傾けてください。でも、結構人って重いんですね・・・勉強になります。」


「結構君って余裕がある?少しうらやましいよ」


「そうでもないですよ。あと、1周です、頑張りましょう」


額から汗が零れる、上手く走れずに、足がもつれる・・・こんなことは初めてだった。そうか、こうなるんだと一人思った。限界は近い。


それでも、クラウは、何とか4分の3を走り切る。預けられている重みにもだいぶ慣れてきたが、その重みが、不意に動いた。


「じゃあな、お人好し・・・十分に休憩させてもらったから、楽になったわ。俺は合格するからな」


不意に重心が狂い動き、クラウは体制を崩す。そのまま、横なぎにけりを食らい、クラウはもんどりうって倒れる。一瞬悲鳴のような声が聞こえたような気がした。見える、男の子の背中が遠くなっていく。どうやら、本当に回復したらしい。


しばらく、砂を噛むように呼吸していたクラウは、右手を握りしめて、立ち上がると、ゴールであるラインにゆっくり歩いていく。砂と汗で服はボロボロで、肺に空気はほとんどなく、とても苦しいのに、なぜか、足が動くのが不思議だった。


ほんの少しの距離だったが、今のクラウには少しきつい距離だった。深く呼吸をしながら、歩いていき・・・


「はあ、はあ・・・ゴールっと」


指定されたラインを割った。誰にも見られていないゴール。その視線の先で、男の子が、ギルドの構成員と初老の男性に詰め寄られている。さっきまでは、よほど集中していたのか、今になって声が戻ってきた。


「はあ、なんで不合格なんだよ?納得いかねえよ。」


不満そうに文句を言う男の子に、初老の男性は、不機嫌そうに告げた。


「君は、自分が何をしたかわかっているのか?・・・君はそういう人間だと自分で証明したんだ。自らが、討伐ギルドにはふさわしくないということをな。」


討伐ギルドの構成員だろうか?狩りあげられたライトブラウンの茶髪に、皮鎧を着こみ、その胸には銀色のギルド紋がネックレスのように光っていた。


「前線ではよくあるが、その時そんなことをしたら次には誰も助けてくれなくなる。お前は、自分で明日は、助けるに値しない人材だと明らかにしたんだ。お前が劣っていたわけではない。お前がいらないだけだ」


詰め寄られている男の子は、ゴールしたクラウをみて、苦々しく見つめる。クラウは、目の前で起こっている出来事がよく理解できずにぼうっとその様子を見ていた。


「あいつが、勝手にへばらなければ・・・」


男の子は、振り向くと、ふらふらの足で、クラウに近づこうとする。その瞬間だった。その間を炎の矢が焼いた。


それが限界だったのだろうか?男の子は、その炎の矢を出し、怒気を見せている少女も目の前にいるクラウも全く気にならないように、


へたっ


と腰を抜かした。

それを見た、討伐ギルドの構成員が、初老の男性の指示のもと、男の子をどこかに連れていく。



「無様としか言いようがないですわ。・・・・子爵令息・・・あと、クラウは私の配下ですわ。そんな風に言われるいわれはないですわ!!」


今にも地面に崩れそうなクラウに、エイダが駆け寄りその体を支えた。エイダは一瞬だけ驚いたような表情を浮かべる。しかし、それも一瞬で消えて、泣きそうな顔をクラウに見せるようにしていた。


「馬鹿クラウ・・・なんで、そんなに頑張るのよ・・・きれいな服が台無しじゃない」


「ごめんなさい、エイダ様・・・なぜか、負けたくないって思ってしまったんです・・・そして、」


クラウは苦しそうに、息を吸い込んだ。肺がまだきちんと息を吸えていないような感じがあった。ただ、深いところで治癒しつつあるのを感じて、クラウは、エイダを心配させまいと、笑顔を造った。


「大丈夫です。私は・・・丈夫にできてますから。これくらいで壊れはしないです」


「壊れはしないって?クラウ、自分を物みたいに言わないで。あなたは私のものだけど、あなたは物なんかじゃないのよ。しっかりしなさい。」


エイダはクラウに肩を貸す。それにクラウは驚いた表情を見せる。


「エイダ様、歩けます・・・私は!!」


「馬鹿!大馬鹿!!クラウ・・・私に、少しは主らしい事させなさい。」


クラウは、足がもつれそのまま倒れ込みそうになる。エイダも、踏ん張り切れずに、それを止めることができない、


「よっと!」


いつの間にか、前に回り込んできたアマンダが、二人を支えた。さっきまで、ずっと、訓練場の中心に立っていたはずなのに、いつの間に着替えたのだろうか?アマンダは、ローブ姿から、いつぞやの眼鏡をかけて、地味な服に着替えていた。


「エイダ、私に任せてもらえないかしら?今日の昼から、一緒にいられるように、クラウちゃんを治療しておくわ。」


アマンダが、眼鏡の奥でウィンクをする。


「いえ、一緒に行かせてください。私は、クラウの主なのですから」


それを聞いたアマンダは、嬉しそうにほおを緩めた。エイダは、その表情の意味が分からず怪訝な顔をする。


「これからも、大事にしてあげなよ。あなたが大事にした分だけ、この子も成長するのだから。ま、その前に、あなたには、やることがあるわ」


エイダは、不思議そうに、アマンダの視線をたどる、その先に、初老の男が立っていた。その表情は見えないが、少し怒気を感じた。


「少し言いたいことがあるみたいね。エイダ、お小言に付き合ったら?」


エイダは、何か言いたそうな表情を浮かべ、クラウに心配そうな視線を向けるが、さすがに振り切れるわけもないということは十分にわかっていた。、


「では、お願いします。クラウ、すぐに来るからね。」


と、アマンダにクラウを預け、初老の男の元に歩いていく。


クラウは、その背中を見ながら、ふっと意識が遠のくのを感じた。


「・・・本当に、必然って怖いわ・・・奇蹟でも起こったみたい」



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