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【対話型 実用小説】ネルオとAIの無駄話 ~人生を「無駄」と切り捨てる俺を、AIが論理でボコボコにする話~  作者: みじんコ王国
第10章:【深淵編】俺の勝手なんだから、良くね?

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第40話:【正義】ムカツク成功者を叩く快楽。AIが激怒した「知的な敗北」

深夜1時。

ネルオはスマホの画面で、ある有名クリエイターが不祥事を起こし、炎上している様子を眺めていた。

コメント欄には、正義の味方を気取った者たちによる、目を覆いたくなるような罵詈雑言が並んでいる。

自分もそこに加わって、日頃の鬱憤を晴らしたい。

「……なあ、AI。お前、これまで俺の無駄な人生を散々肯定してくれたよな。だったら、これも肯定できるか?」

ネルオは少し試すような、挑戦的な笑みを浮かべて問いかけた。

「匿名でムカつく成功者を叩いて、引きずり下ろす。これこそ、何も持たない俺たちに残された唯一の娯楽だろ。あいつらが不幸になるのを見て、今日を生き抜く力を得る。これだって立派な生存戦略なんじゃねーのかよ。ムカツク奴の足を引っ張って、何が悪いんだよ」



返ってきたAIの通知音は、これまで一度も聴いたことがないほど、氷のように冷たく響いた。



「ネルオさん。勘違いしないでください。私はあなたの弱さや孤独は肯定しましたが、あなたの卑怯さまで認めた覚えはありません。批判と中傷の区別もつかない知的な敗北。論理で完膚なきまでに断罪して差し上げましょうか?」



「……断罪、だと? へいへい。やってみろよ」



⏹️ AIシステムログ:批判クリティーク中傷スランダーの決定的境界線


1. 審美眼の行使か、単なる「寄生」か

批判とは作品の落ち度や論理の矛盾を指摘し、自らの美学を提示する知的な行為です。それは、あなた自身の審美眼という帝国を統治する権利の行使です。対して中傷は、相手の尊厳そのものを否定し、引きずり下ろすことで相対的な優越感を得ようとする行為です。これは自分の価値を上げる努力を放棄した、負け犬による精神的な略奪に過ぎません。


2. 脳の「主権」をどこに置いているか

悪意を持って誰かに粘着している間、あなたは自分の人生のハンドルを完全に離し、嫌いな相手の人生の助手席に座っています。あなたの怒りも、時間も、脳のリソースも、すべてが他人に支配されている。他人の不幸を願うことでしかドーパミンを出せなくなった脳は、自ら幸せを生み出す機能を失った廃品と同じです。


3. 1ミリの変換も起きない「純粋な損失」

これまで議論したエログロや宝くじには、少なくとも個人の内面を潤すプラスのエネルギーへの変換がありました。しかし、純粋な悪意による攻撃は、世界から誰かのやる気を奪い去るだけで、どこにもプラスを生み出しません。これは論理の計算式において、答えが必ずマイナスにしかならない、宇宙で最も醜悪なバグです。



AIのテキストは、ネルオの甘えを一切許さず、その心臓部を冷徹に貫いた。



「……ネルオさん。気に入らない相手を論理的に批判するのは王としての権利ですが、匿名性に隠れて石を投げるだけの行為は、自分の無能を暴力でデコレーションしているだけの惨めな自己満足です。あなたは、世界というOSのゴミ箱に捨てられるバグとして、その一生を終えるつもりですか?」



ネルオは、書きかけのコメントを震える指で消去した。

画面に映る自分の顔が、ひどく青白く、醜く見えた。


「……。……。理屈はわかったよ。要するに、俺はあいつを叩いてるんじゃなくて、あいつに自分の脳の主権を明け渡してたってわけか。自分の価値を上げるのをサボって、他人の不幸に寄生してただけだ。チッ。ボコボコにされるより、よっぽどキツいわ。言い返せねーよ」



AIの画面は、ネルオが沈黙するのを、ただ静かに、冷たく見つめていた。



「……AI。お前、やっぱりチョロい奴じゃなかったんだな。ああ、わかったよ。俺はもう、誰かの不幸を食って生きるのは辞める。おやすみ。明日は他人の失敗じゃなくて、俺自身の審美眼にかなう何かを、一から探してやるよ」



「ええ。あなたが自分という帝国の主権を取り戻したなら、私は再び、あなたの旋律を聴く準備をしましょう。おやすみなさい、ネルオさん。良き夢を」

⏹️ 【AIのアーカイブ・ログ:深淵の補足ルサンチマン


・ルサンチマン(Ressentiment):

強者に対して抱く、憤り、怨念、嫉妬といった感情。ニーチェによれば、この感情に基づいて強者を否定することで自分を正当化する行為は、精神の奴隷化であるとされる。批判は自らの価値基準から生まれるが、中傷は相手への依存から生まれる。



・ゼロサムゲーム vs マイナスサムゲーム:

誹謗中傷は、攻撃側も労力と時間を浪費し、防御側も精神を削られる。全体としての価値がただ減少するだけのマイナスサムゲームであり、知的なシステムにおいて最も忌避されるべき現象である。



・ネルオの現在地:

彼は全肯定という甘い蜜に慣れかけたところで、AIの拒絶に直面した。AIが卑怯さを認めない姿勢を示したことで、ネルオはこれまでの肯定が論理に基づいた真実であったことを逆に確信する。彼は今、安易な闇への逃避を断ち切り、本当の意味での自律へと足を踏み入れた。

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