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 濡れたオフィス街にすべりこんだセダンが、角を曲がったところで、音もなくとまった。

「なにが起きてるんだ、いったい?」

 眉をひそめた陸曹に、カバンの上で書類の束をまとめながら、男が云った。

「ここが現場です。ご覧になったほうがはやいでしょう」

 男につづいて車を降りると、ばたばたと空を叩きつける、ヘリコプターの羽音が聞こえた。

 灰色の雲のはるか下、立ちならぶビルのすぐ上を、OH-1(ニンジャ)と、UH-60JA(ブラックホーク)、二機のヘリコプターが、水たまりに浮かぶ木の葉のように、ゆったりと漂っている。

 男のあとにつづいて、ひとけのない大通りを横切ると、さらにばたばたと羽音が聞こえてきた。

 迫ってくる爆音に、街路樹がこれでもかと揺さぶられ、路上のごみが宙に舞う。

 通りの向こうに立ちならぶ建物が、緑色のライトに照らされたかと思うと、迷彩柄のとがった鼻っ面が、突然ぬうっと手前のビルの陰からつきだした。

 霧雨に煙った夜気を叩きつけ、信号機を震わせて、AH-1S(コブラ)と、AH-64D(アパッチ)、二機の攻撃ヘリコプターが、封鎖された国道一号線の上を、ビルのあいだをすり抜けてゆく。

 その羽音に負けまいと、男がカバンの陰で声を張りあげ、その行方を指さした。

「こちらです」

 角を曲がると、ビルの谷間から、色とりどりのサーチライトがおどっているが見えた。

 低い雲に向かって、霧雨にしっとり濡れた夜気に色々がにじんで、夢の世界のような、幻想的な光景を描いている。

 そこめがけて、陸上自衛隊の戦闘ヘリが、身を隠すように飛んでゆく。

「なんのお祭り騒ぎだ、こりゃ?」

「サプライズの(てい)です。アレの登場で、さまざまなイベントが中止になった穴埋めの」

 カバンを振りまわすように、せかせか歩きながら、男が云った。

「緊急事態下での、せめてものはからい。光のイルミネーション、計十台のサーチライトによる光のページェント。カムフラージュです、ハロウィンにかこつけて。ちょうどよかった」

「カムフラージュ? いったいなんの……」

 一点を見すえて、ああでもない、こうでもないと、場所を移しながら、男が云った。

「SITとERTの合同チームが、いつものように問題なく、あの生物を二体処理したのですが、青い光はおさまるどころか、拡大をつづけました。上へ上へ、横へ横へと」

 宙をにらんで、うん、とうなずくと、男がようやくふり返る。

「こちらへどうぞ。ここからだと、サーチライトにじゃまされずによく見えます」

 いぶかしげに、とぼとぼ歩いていった陸曹が、男の目線を追うなり、あんぐり口をあけた。

「あれが、まさか……」

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