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悪役令嬢、母国を救う  作者: アンフィトリテ
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第349話 ハラウェイン伯爵令嬢、『鳥船』に戻り、聖務を成し遂げたことに安堵し、悪役令嬢に思いを伝える

(ハラウェイン伯爵令嬢視点)

ハラウェイン伯爵令嬢、『鳥船』に戻り、聖務を成し遂げたことに安堵して、悪役令嬢に思いを伝えます。


[『いいね』いただきました皆様方に厚くお礼申し上げます]

 メルー様が聖なるご命令を発せられ、わたしたちを乗せた白く輝く円盤=エレヴェイティング・プレーンは『鳥船』に戻ってきていました。

 この、天界へと向かって行くかのような感覚は、二度目であって、感動を抑えられません。


 『鳥船』の表面から突き出す著大な建造物。


 その中がどのようになっているのかは分かりませんが、メリユ様がおっしゃられたように大勢な民が住まうことすら可能なように思えます。

 にょきにょきと突き出す建造物の、その内の一つですら、帝都ベーラートの帝城ですらかわいく思えてしまうほどの著大さなんです。

 神、そして、神のご眷属の方々は、このようなものを当たり前のようにご覧になられていらっしゃるんでしょうか?


 もしわたしが世界を越えることがあれば、テラでも同じようなものを見ることになるのかもしれません。


 ええ、いよいよ……わたしの知る、わたしの大好きなメリユ様のご聖務は終わりに近付いてきて、いるんですよね?

 本来テラの使徒様でいらっしゃ……あらせられるメリユ様は、ご神命で、このエルゲーナを平和に戻すためだけに(一時的に)お戻りになられていたんですもの。

 メリユ様はこちらに残ることができるよう、動いてくださっているようですけれど、どうなるかは分かりません。


 ですから、もしものときは、わたしもまたメリユ様の片腕としてテラへ渡る心づもりでいるんです。


「すごーい」


「二度目であっても、帝都ですら霞んでしまうほどの威容だ」


 エレヴェティング・プレーンのバリアの外を構造物の表面が目にもとまらぬ速さで流れていきます。

 帝城の最も高い尖塔の、何十倍はあるかというような大きさに皆様が感嘆の声を漏らされています。

 そして、足元が少し浮くような感覚と共に、その勢いが落ち始め、いよいよ『鳥船』の入口へとエレヴェイティング・プレーンは入っていったのでした。






 『鳥船』の中。

 そこは、夜のように薄暗かった帝都ベーラートが嘘のように神秘的な世界が広がっていました。

 神聖なる白き光が眩く、頭上にもにょきにょきと多くの構造物があって、白い雲がそれらを包んでいるんです。

 エレヴェイティング・プレーンが完全に止まると、皆様、安堵の吐息を漏らされているのが聞こえました。


 ええ、皆様も、当然緊張されていたんです。


 バリアで安全は保障されていたとはいえ、相手はオドウェイン帝国。

 特に皇帝陛下は、聖教すらも道具として使われるようなお方なんですもの。

 実際に近衛騎士の方々から攻撃も受けましたし、(表向き、皆様平然とされていましたけれど)緊張していて当然なんです!


 わたし、自身も、この大仕事が一段落したんだって思うと、ホッとしちゃって涙が込み上げてきてしまいました。


「メリユ様っ」


 わたしの傍で、メグウィン様が勢いよくメリユ様に抱き付きに行っているのが見えました。

 ずるいです!

 出し抜かれました!

 当然わたしもメリユ様に抱き付きにいきます。

 今はもう、周りは味方しかいないんですもの、これくらいは許されますよね?


「メリユ様」


 メリユ様に抱き付いて、メグウィン様の腕とも触れ合って、いつものお肌の触れ合う感覚と良い匂いにホッとなってしまいます。

 でも、今までと違うのは、わたし自身も同じお肌、同じ匂いがしてるんですよね?

 何だか、不思議な感じです。


「お姉ちゃん!」


 メルー様も抱き付いてこられて、右肩にメルー様の肌の温もりを感じます。

 本当にやるべきことを成し終えられて、わたしたちは感情が高ぶってしまっているようでした。


 ええ、ええ、凄くないですか、わたしたち?


 あの大帝国とも言えるオドウェイン帝国に、ご警告とご神罰をくだして、戦を止めることができたんですもの。

 学院にもまだ入学していないようなわたしたちがこれほどのことを成し遂げられるとは、今でも少し信じられないくらいです。


「メリユ様、メリユ姉様、ありがとう、存じます」


 メグウィン様が涙を流されながらに謝意を伝えられていらっしゃいます。

 本当に、こんな形でエルゲーナに平和が齎されるだなんて、誰が想像できたと思います?

 ハラウェイン伯爵領で、ご奇跡を拝見していたわたしですら、『鳥船』のことや、ご神罰のことなど、想像だにできませんでしたもの。

 これも、テラの使徒様であらせられるメリユ様が入れ替わってこちら=エルゲーナに戻ってこられたおかげなんだと思います。


 ええ、もちろん、まだ全てが終わった訳ではないのも分かっています。


 明日『赦し』を与え、神の全能なるお力の前にひれ伏した帝国の方々が本当に野望を諦めたのかを確認しなければなりませんし。

 まあ『次はもうない』と知った方々がもはやご神意に背くようなことはもうないと思いますけれどね。


「ありがとうございます、メリユ様」


 わたしはメリユ様の頬に口付けして、感謝の意を伝えます。

 ふふ、まさか、わたしがメリユ様と同じ姿になって、聖なるお力を使えるようになるだなんて思いもしませんでしたよね?

 メリユ様が、メグウィン様やメルー様のお姿になられているのを見て、嫉妬してしまっていたわたしですが、わたしがメリユ様の姿になって、姉妹のような関係になれるなんてこれ以上ないご褒美だと(何度だって)思ってしまいます。


「本当に、これでエルゲーナは平和になるのですね」


「ええ」


「これで、ミスラク王国が滅ぶようなこともないのですね」


「ええ」


 メグウィン様が声を震わせられながら、確かめられるようにメリユ様と言葉を交わされます。

 わたしもそうですけれど、ミスラク王国が滅びの危機にあったのは本当のことですもの、メグウィン様がどれだけの恐怖を抱いていたことか、そして、今どれだけ救われたか、よく分かるんです。


「良かった」


 メグウィン様がお顔を綻ばせて、一筋涙を流されながら、その一言を漏らされます。

 お言葉遣いを崩されるのも珍しいですが、そのお気持ちはよく伝わってきました。


 その一言に、どれだけの思いが詰め込まれていることか。


 メリユ様がいらっしゃらなければ、何が起きていたっておかしくないんですもの。

 そう、メリユ様があのとき、ハラウェイン伯爵領に駆け付けてくださっていなければ、わたしは今頃不幸のどん底にいたことでしょう。

 大洪水で滅茶苦茶になった領地に、攻め込んでくるオドウェイン帝国先遣軍……絶望のあまり、わたしは自ら命を絶っていたかもしれません。


「ぁ」


 感情が高ぶり過ぎてしまったのでしょう。

 わたしが油断していた隙に、メグウィン様がメリユ様の唇を奪われます!!

 唇と唇であっても、同性、貴族令嬢間であっては親愛の情を示すものと(一般的には)されますけれど、どう見ても、それを超えた口付けにしか見えません!


 ずるいです、ずるいです!!


 わたしは(今回ばかりは)遠慮して頬にしましたのに!


「っ」


 メグウィン様が唇を離された瞬間を狙って、わたしもメリユ様の唇を奪います!

 どうです?

 これで姉妹としての口付けもできたんですよ?

 メグウィン様は、メリユ様にメグウィン様と同じお姿になっていただいたことはあっても、ご自身がメリユ様になってこういう体験をされたことはないでしょう?


「あー、メルーも、メルーも!」


 本当に、こういうのがわたしたちらしい、のでしょうね?

 メルー様にひっつかれて、わたしは場所を譲ることにします。

 ですが、[メリユ様の唇]でメリユ様の唇を感じるのは、ええ、本当に特別な感じがしました。


 今になって頬が火照ってきて、ドキドキが止まらなくなってきます。


 今のわたしってどんな風になっているんでしょうか?

 とにかく鏡が欲しいです。

 メリユ様と同じお顔で、真っ赤になっていたりするんでしょうか?


「んー」


 メルー様に無邪気な口付けをされて、ようやく口付けから解放されたメリユ様がお顔を真っ赤にされていらっしゃいます。

 なるほど……なるほど、きっと今のわたしもあんな感じ、なんでしょうね?


 恥ずかしい……借り物のお顔で、どんな風にふにゃふにゃになっちゃっているんでしょうか?

 メリユ様は真っ赤にされていても凛々しいままですが、わたしの方は頬が緩んでしまっているのが分かるんですもの!

 多分、おそらく、『人』にお見せできないような顔になってしまっているような気がします。


 メリユ様、ごめんなさい!


「メリユ様」


「はい」


 恥を掻くついでに、わたしは自分の思いを告げることにします。


「メリユ様、わたしをこのままでいさせてください!」


「……………はい?」


「わたし、このメリユ様のお姿をお借りしたまま、メリユ様のお傍にいたいって思うんです」


「……………」


 どうやらメリユ様を驚かせることができたようで、メリユ様が珍しく目を見開いていらっしゃいます。


「もしメリユ様がエルゲーナに残られるのが難しいようでしたら、わたしをこのままテラまでお連れくださいまし!」


 まだ、ご聖務が終わったあと、メリユ様がどうなるかは分かっていませんけれど、この気持ちだけは伝えておきたかったです。

 たとえ、メリユ様がエルゲーナに残られることが叶わなくても、わたしはずっとメリユ様と一緒だって、そう伝えておきたかったです!


「ありがとう」


 メリユ様は(いつもの微笑みとは異なる)笑みを浮かべて、そうおっしゃってくださいました。

 『無理しなくて良いのよ』とか『わたしの両親が心配されるのでは』とか、そういうことは一切おっしゃられずに、わたしの気持ちをまっすぐに受け取ってくださったんです。

 ええ、良かったです、本当に良かったです!

 リーラとしてのわたしが残っている内にハードリーとしての気持ちを伝えられて、リーラも喜んでいるみたいです。


 誰かと一緒になること。


 貴族令嬢ならば、親の意向に従ってどこかの貴族家に嫁ぎ、そうなるのでしょうけれど……リーラも、ハードリーも、メリユ様=ファウレーナ様とそうなりたかった、そうなりたかったんです。

 今生こそは、添い遂げたい、そういうことなんだと思います。

『いいね』、ご投票等で応援いただきました皆様方に厚くお礼申し上げます!

まだ、オドウェイン帝国の一件が片付いたという訳ではございませんが、一応一段階というところでございましょうか?

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