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悪役令嬢、母国を救う  作者: アンフィトリテ
346/348

第345話 帝国皇女殿下、帝国皇子殿下と現状を再確認する

(帝国第二皇女視点)

帝国第二皇女は、帝国第二皇子と現状を再確認しようとします。


[誤字脱字のご指摘、『いいね』いただきました皆様方に深く感謝申し上げます]

 お父様=皇帝陛下が『神隠し』に遭われてしまった。


 その絶望的状況にわたくしは目の前が真っ暗になるのを感じていたわ。

 ええ、ええ、もちろんわたくしだって、自分がお父様=皇帝陛下を止められなかったとき、お父様にどのように神に処されるのか、覚悟がなかった訳ではないのよ。

 たとえお父様を止められたとしても、聖教を戦の道具として利用とした行いに神がお父様を赦されない可能性は考えてはいたわ。


 それは背神、背教行為というだけでは済まれない大罪。


 しかも、メリユ・サンクタ・マルグラフォ・ビアド聖女猊下はご神罰のご執行までに幾重にも『ご警告』を発せられておられたのにも関わらず、それを無視され、否定され続けたことはあまりにも重いと思う。

 もちろん、大司教猊下に『鳥船』すら幻術だと信じ込まされていたこともあったのかもしれないけれど……よりにもよって、(わたくしたちにご慈悲をかけてくだっていた)メリユ聖女猊下を害されようとされたことは、更なる神のお怒りを買ったことでしょうね。


「陛下が、ど、どうしてこのようなことに……」


「アレムお兄様!」


 わたくしは未だに帝室の犯した罪へのご自覚のないアレムお兄様を睨み付ける。

 お父様の罪はあまりにも明らか。

 神の定められた聖なる秩序を乱されているというご自覚もなく、他国の民どころか自国の兵たちの命を散らすことにすら何も感じておられなかったことに、メリユ聖女猊下はさぞご失望されたことだろうと思うわ。


 わたくしはあの砦でのことを覚えている。


 メリユ聖女猊下たちがいらっしゃらなければ、わたくしもあの場にいた騎士、兵たちと同じく命を散らしていたに違いないのだもの。

 神からすれば、お父様のお命も、お兄様のお命も、わたくしの命も、一兵卒と変わらないタダの一つの命。

 ご神罰は、その者の犯した罪の重さにあわせてくだされ、皇帝や帝室の一員としての立場が鑑みられることはない。

 そんなことすらもアレムお兄様は分からないのね。


「はあ、お父様は、エルゲーナの聖なる秩序を乱した大罪人として『神隠し』に処されてしまったのですわ」


「し、しかし、エルゲーナで最も権威ある皇帝であるお父様を失えば、帝国こそ秩序を失うのだぞ!?

 神はそれをお分かりではないのか!?」


 神の怖ろしさを知ってさえ、未だ帝国に拘り続けているアレムお兄様には失望しかない。

 これが帝室の者たちの考えだと言うのかしら?


「お兄様、たとえ帝国が秩序を失って、内乱に陥ったとしても、エルゲーナ全体の秩序はむしろ安定するのではないでしょうか?」


「何を言っているのだ!?

 帝室あっての帝国、世界だろうがっ!」


「世界=エルゲーナは帝国のものではございません!

 アレムお兄様は、最も重いご神罰が何なのか、お忘れなのではないでしょうか?」


「な、何だと言うのだ?」


 既に、謁見の間は嘆きの立像……いえ、倒れた者も多いから、タダ像と言ってしまった方が良いかしら……で埋め尽くされ、その地獄のような光景を目に焼き付けるために選ばれた者だけが残っているような惨状。

 この時点でも、帝国の政務、軍務は崩壊状態にあると言って良いのよ。

 これに更なるご神罰がくだされるとすれば?


「最悪、帝国の全ての者が嘆きの像に変えられ、帝国に属する者は誰一人いなくなることでしょうね」


「ほ、本当に、神は我がオドウェイン帝国を滅ぼされると言うのか!?」


「お兄様は砦で何をご覧になられたのか、もうお忘れになられたのですか!?」


 砦前の広場で嘆き像と化した者たちをご覧になったお兄様は神に『何卒何卒』とお祈りになられていたはず。

 『鳥船』にご乗船され、『神の目』をご覧になられた際も、あれほど怯えていらっしゃったと言うのに、もうお忘れになられたのだとすれば……アレムお兄様を皇位継承者と押すことはもはやできないと思えてしまう。


「神の目で地上を見れば、帝室、高位貴族であろうとダニ同然であるのは、お兄様もお分かりでしょう?

 そのダニが悪さをしようとしているとなれば、神はまとめて駆除されようとなさるのでは?」


「ダニ……だと」


「そうですわ。

 もちろん、その中でも悪さをしているダニについては監視におかれていらっしゃるようですが……お兄様もご警告を受けていらっしゃいましたでしょうに」


 そう、雷でご警告を受けたのはお兄様も同じなのだ。

 お兄様もわたくしも、メリユ聖女猊下のご慈悲で、神からくだされるはずのご神罰の猶予を与えられているようなものだというのに。


「何だと、ではわたしも……」


「次は嘆きの像に変えられる対象に入ってしまっているのではないでしょうか?

 もちろん、わたくしも……でしょうが」


「何を馬鹿な……いや、本当にわたしも石のようになってしまうというのか?」


「お父様はいかに鍛えられた近衛騎士たちに護られていようと、いとも簡単に『神隠し』に遭われてしまったのですわ。

 おそらく、最後には帝室全員が嘆きの像に変えられてしまうのでは?」


「ぃ、嫌だ、そんなこと、あってはならぬだろうに!」


 アレムお兄様は……もうお話にならないわね。

 帝室からは……既に、第五皇女=ザミュア、着飾るのに好き放題していた我儘な子が像に変えられているし、あとは……第四皇子=ダルウィンも……ああ、侍女を無茶苦茶な理由で死罪していたから……像に変えられている。


 何とも分かりやすい、神のご判断ね。


 地上に見えるの『人』がダニ同然ではあっても、神からはその者の罪の重さが色付きでお分かりになられているのかもしれないわ。


「今居残っていらっしゃるのは……」


 結界=バリアの外の様子を窺がっている限り、宰相と大司教猊下、帝室の一部と高位貴族の何名か無事ではある。

 けれど、もはや命令、指示を出すべき相手が残っていない。

 一体誰がこの帝城を維持できると言うのか?

 現状、もはや帝城と取引のある商人を城内に入れることすら対応不能と言って良い。


「……それなりの立場がありながら、この現状に絶望を覚えられるような者を敢えて残されたということ、かしら?」


「テーナは何を言ってるのだ!?

 皇帝陛下、父上が『神隠し』に遭い、我らもいつ像に変えられるかも分からぬというのに、よく平気でいられるな」


 ああ、もう!


「アレムお兄様、わたくしが本当に平気だとお思いで?

 わたくしだって、全てから解放されるのではあれば、今すぐ泣きたいところですわ」


 お父様のことはわたくしの責任も多分にあると思っているわよ!

 せっかくあの『鳥船』でご神威を見せ付けられたと思っていたのに、幻術なんて言葉に誤魔化されるだなんて思いもしなかったもの。

 どうしてこんなことにって泣きたいのはわたくしの方だわ!


「このままだとお父様がどうなってしまわれるかだって、わたくしは分かっているわ。

 そして、帝国がどうなってしまうかについてもね!」


 神は、残された帝国上層部が絶望し、神に懺悔したところで、残りの者も『ご神罰』に処されるのかしら?

 神の遣いであらせられる、メリユ聖女猊下のご慈悲を無下にしてしまったことで……帝国は滅びを迎えてしまうのね。


「アレム・インペリアフィロ・オドウェイン第二皇子殿下、テーナ・インペリアフィリーノ・オドウェイン第二皇女殿下、どうなさいましたか?」


 わたくしが皇女としてあるまじき声を張り上げてしまったことで、メリユ聖女猊下にご心配をおかけしてしまったらしい。

 あまりの恥ずかしさと情けなさに涙がついに込み上げてきてしまう。


「メリユ・サンクタ・マルグラフォ・ビアド聖女猊下、誠に申し訳ございません。

 せっかく、最後の、挽回の機会を賜りましたのに……」


「いいえ。

 信心を失い、神のご奇跡すらも受け入れられなくなったことも、今のエルゲーナの在り様を映しているかと」


 本当にお優しいお方。

 ご神命によるものとはいえ、ご執行されたことに心痛めてくださっているなんて、わたくしの方こそ帝国の在り様に悲しくなってくる。


「本当にそうですわ……大昔の『人々』は『鳥船』の威容だけで神に祈りを捧げ、己が神の教えに反していないか、自身に問うていたことでしょうに」


 本当にそう、圧倒的なまでの武力、最新の兵器があれば、神のご存在など関係なく、エルゲーナを好き放題にできると……どうして『帝国人』は驕り高ぶってしまったのか?

 神のお力になど、到底『人』が抗える訳ないというのに。


「猊下……我が帝国は、ほ、滅びを迎えるので、ございますね?」


 涙腺が決壊し、涙が止まらなくなるわたくしを、メリユ聖女猊下はその美しく神聖なるお翼で優しく包み込まれ、そっと頭を撫でてくださるのでした。

誤字脱字のご指摘をいただきまして大変感謝いたします。気が付くのが遅れ、誠に申し訳ございません。

ありがたく適用させていただきました。

また、『いいね』ご投票等で応援いただきました皆様方に深く感謝申し上げます!

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