61話 遥のお願い事(2)
口の中から吹きこぼしたご飯をティシュペーパーで拭き取って行き、周りの職員に「どうも、すみませ~ん」と、苦笑いを浮かべて誤魔化した。
その後僕は、机に置いていたスマホを直ぐに手に取り、どぎまぎしながら彼女がさっき言った言葉の内容をもう1度確かめてみた。
「それって、あれだよね。泊りに来るって、こと?」
『はい、そう言う事なりますね』
だ、だよね~。と、僕は心の中で納得した。
『やっぱり仕事から帰ってきたら、ゆっくりしたいですよね』
遥の今の顔の表情、文字で判断すると、がっかりしてるのかなぁ。
「てか、お母さんに今の話ししたの?」
『お母さんは、「もう大人なんだから、自分の事は自分で考えて、責任をもって決めなさい」って言われちゃいました』
へぇ~、遥の事信じてるんだろうなぁ、きっと。
『後、こうも言われて。「親って言う漢字ってどう書くか知ってるでしょ?木の上から立って見るくらいの距離がちょうど良いのよ」って』
確かに。今度、長谷川さんにでも使おう。
「じゃあ、遥。僕から1つ条件があるんだけど」
『う~、何でしょう・・・。聞ける条件だと良いのですが (>_<)』と、彼女は当惑しながら答えた。
「条件は・・・」
『条件は?』
「遥のお母さんに、直接、僕の連絡先の住所と電話番号を教えること、以上!!」
『じゃあ、泊りに行っても良いんですよね?』
文字から察するに、遥は喜んでくれてるんだろうなぁ。
「うん。こちらこそ宜しく」
『やったぁ~!! ヽ(´▽`)/ 宜しくお願い致しま~す』
「晩ご飯を楽しみにしてるから。仕事が終わったらダッシュで帰ろう(笑)」
『駄目です!!事故なく気をつけて帰って来て下さい』
「はい、了解です(笑)」
彼女に注意された僕は、首をすくめて、ひとり苦笑いをした。
僕と遥のメールの文字だけのキャッチボールだけど、最近は、文字だけでも彼女の今の表情が何となく分かるようになってきた。
「明日、仕事休みだけど、明日から来るの?」
『片瀬さんさえ、宜しければ』
「じゃあ、お待ちしてます」
たぶん今遥は、笑顔なんだろうなぁ、と想像しながら、食べかけのお弁当をまた再び食べ始めた。
早く明日が来ないかなぁ〜、と遠くの景色をただぼんやりと見つめて、僕はその時を待ち望んでいた。




