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ただ、君だけをみつめて  作者: 新木 そら
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62話  絵里の提案

 遥が、片瀬にメールを送る数時間前。

 前期のテストが終わった遥と絵里は、自販機でアイスコーヒーを買って、大学構内の食堂でくつろいでいた。


 しかし食堂内は、昼ご飯時とあって各テーブルがほぼ満席状態。

 周囲の席からは、「夏休み、海でも行かない?」とか、「あ~、今日も夜バイトがが入ってるわ~」とか、学生達の話し声が自然と耳に入ってくる。


 テストの重圧から解放された絵里は、テーブルに突っ伏していた。

「あ~、やっとテストが終わった~」 


 遥はスマホに文字を入力して、絵里に話し掛けてきた。

『絵里は、夏休みどうするの?』


「う~ん、家でゴロゴロしてたら親がうるさいからねぇ。バイトでもしろ~、って。今日から短期バイトでも探すかな」


『そうだよね~(笑)』


「遥はどうするの?」


『バイトはしたいけど、今は無理だし・・・』


ムクッとテーブルから起きた絵里は、目を輝かせて遥に話し掛けた。

「あっ、じゃあ、遥。片瀬さんとこに泊りに行ったら?」


 考えもしなかった絵里の言葉に、遥は、えっ!!と驚いた。


「喜ぶわよ~、片瀬さん。だって、仕事から疲れて帰って来たら、遥が手料理を作って待ってるんだから。胃袋を制する者は、男を制すよ」

 絵里は遥ににやけながらそう言うと、私、良い事言うじゃん、と自分のひらめきに自画自賛していた。


『作るのは良いけど、いきなり行ったら迷惑じゃない?ゆっくりする自分の時間も欲しいでしょうし』


「そう?私なら行っちゃうなぁ。そんな人いないけど」と、困惑する遥に、絵里はサラッと否定した。


 遥は、手に持っていたアイスコーヒーを少し口に含んで気持ちを落ち着かせようとした時、絵里から「何だったら、片瀬さんと永久就職すれば~」と、突然突拍子も無い事を言われたのでビックリして咳込んでしまい、口に含んだアイスコーヒーを吹き出しそうになった。


 カバンに入れていたハンカチを取り出し口を押さえた遥は、『も、もぅ~、絵里~』と言いたげな表情を浮かべた。


「良いんじゃない、卒業と同時に学生から花嫁になるなんてっと言うのも、有りでしょ」


 絵里は、手にしたアイスコーヒーが入っている紙コップで、遥の紙コップにポンッと当てると、「おめでとう~」と言って笑顔で祝ってくれた。


 そんな遥も微笑みながら絵里に対して、「ありがとう」と口だけを動かして会釈をした。

 

 遥は、持っていた紙コップを置き、テーブルに両肘をついて、両手に顔をあずけた。

 確かに料理を食べてもらいたいって言う気持ちはあるけど、いきなり泊りに行くのはどうなんだろう・・・。

 ぼぉ~と、遠くを眺めながら、頭の中で色々考えていた。


 すると絵里が、いつの間にかカバンから取り出したセンスで遥の顔に、「お~い」と言いながら軽く扇がれた。センスで扇がれた風が遥の髪の毛をなびかせる。


「お腹空いてたら、悪い事ばっかり考えるわよ、遥。考えるより先ずはご飯を食べて、スタミナつけなきゃね」

 

『うん』と、遥は微笑んだ。


 椅子から立ち上がった絵里は、楽しそうに「ご飯、ご飯~」と言って、発券機までスタスタと歩いて行く。


 絵里の言葉で遥は、『考えるより、先ずはやってみよう』と、そう自分に言い聞かせ、先を行く絵里の後を追いかけて行った。


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