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ただ、君だけをみつめて  作者: 新木 そら
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56話  伝言ゲーム(3)

 大学の講義が急遽、休講になったので、遥は片瀬さんの家に様子を見に行く事にした。

 電車の中で揺られながら、遥は絵里との話しを思い返していた。


「まぁ、片瀬さんの事だから大丈夫だと思うけど・・・。」


『大丈夫!!多分、私に心配かけまいと思って、風邪の事を言わなかったんだと思う』


「そう?」と、心配そうに絵里が答える。


『私が片瀬さんだったとしても、風邪の事は言わないかも。だって風邪だって聞いたら、大学行かずに見舞いに来ると思うし』


「うん、そうよね」と、絵里は無理矢理笑顔を作って相づちをうった。


「でも、でもだよ。もし、家の中から女の人が出てきたらどうする?」

 

『う~ん、その時は、その時考えるわ』と、絵里の確信をついた質問に、遥は迷わず笑顔で答えた。


 でも、内心は「そうなったら、どうしよう」と、少し不安を感じて遥だった。


 その頃の僕は、昨日に比べれば少しは体調もましにはなってはいたけれど、まだ熱もあるので布団の中でぐったりとしていた。


「亜季ちゃんが居てくれて助かったけど、昨日は夜勤だったんだろ?こっちは良いから早く帰ってゆっくりしてよ」


「う~ん、どうせまた明日仕事だしなぁ。ここで寝てから行こうかなぁ」

 大きな欠伸をしながら両腕を広げ、背筋を伸ばして、横目で僕の反応を見ていた。


「こらこら、女の子がそんなこと言わない」


「何か喋り方、お父さんみたい」


 僕は布団の中から片手だけを出して、シッシッとおいやる仕草をすると、「お兄さんの、ドけちんぼ」と亜季は言って、ベェ~と舌を出して対抗してきた。


「もう、ここからの方が病院まで近いのに」

 彼女は、しぶしぶ帰る準備をした。


「ありがとな、亜季ちゃん。助かったよ」


 彼女は、目を輝かせてこう言った。

「ここに泊って良い?」


 今度は布団の中から両手を出して、バッテンの仕草をした。


 それを見た亜季は、「はいはい、分かりましたよ~」と、観念して玄関まで歩きだした。


「気をつけて帰れよ」と僕がそう言うと、彼女は、「お兄~さんのパンツは~、グレ~色~」と即興の歌を歌い出した。


 僕は亜季ちゃんに、近くにあったティシュの箱をポイッと投げたが、全く彼女に届かないその箱を見て、勝ち誇ったように彼女はケラケラ笑っていた。


 すると突然、ピンポ~ンと呼び鈴が鳴る音が部屋に響き渡ってきた。

 亜季は、「は~い」と言って玄関のドアを開けると、そこには自分と同じくらいの年頃の女の子が驚いた顔をして立っていた。



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