55話 伝言ゲーム(2)
1時間目の教習が始まる前に、長谷川さんと相原は、教習車をタオルで拭きながら話しをしていた。
「おぅ、相原。何や片瀬、昨日の2輪教習で熱が出たらしいで」
「へぇ、何度あるんですか」
「え~と、確か~、何か38度から39度半ばって言ってたんやったかなぁ?」
「あの気温の変化ですからね~、そりゃ、体調も崩すでしょう」
「遥ちゃんは、知ってんのかなぁ」
「そりゃあ、知ってるでしょう。何だって付き合ってるんですから」と、ぶっきらぼうに相原は答えた。
「う~ん」
長谷川は、拭いていた手を止めて、何かを思い出す様に目を瞑りながら空を見上げた。
「どうかしたんですか?」
変に思った相原は、長谷川に話し掛けてみた。
「片瀬な、電話越しで必要以上に『はぁ~、はぁ~』言いよるねん」
「そりゃ、風邪でしたらしんど、い・・・でしょ!?」
「ほんまに風邪なんやろか」
「はぁ、はぁ、ですよね」
「そやね~ん、あの必要以上の『はぁはぁ』は怪しいで」
「一応、絵里ちゃんにメールして、情報を探らせましょう」
「うん、宜しく頼む」
「任せて下さい」と相原は、にやけながら長谷川に敬礼した。
すぐさま相原は、遠藤さんに電話を掛けてみた。
「おはよう、絵里ちゃん」
「あっ、おはようございます」
「今、大丈夫?」
「えぇ~、今、バスから降りた所ですから」
「遥ちゃんと一緒?」
「うううん、違いますよ。どうかしたんですか?」
「いやぁ~、片瀬さんが風邪をひいたらしくてね」
「あらぁ~、大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫大丈夫。所で遥ちゃんは、この事知ってるのかなぁ~と思って?何かやけに『はぁ~、はぁ~』と言ってたらしくって」
「『はぁ~、はぁ~』ですか?」
「そう、『はぁ~、はぁ~』なのよ」と、声のトーンを落として、相原はそう呟いた。
「あっ、ちょっと先に遥が歩いていますから、確かめてきますね。それでは後ほどメールにてお知らせします。それでは」
「遥、おはよう」
通話を終えた高野さんは、遥の元へ小走りに走っていった。
『あっ、おはよう、絵里』と、口元を動かして答えた。
「ねぇ、遥。片瀬さん元気?」
遥は、スマホを取り出して、文字を入力した。
『何か昨日疲れてたみたいで、横になったら直ぐに寝てしまったんだって。朝、メールもらったよ』
「へぇ~、そう、なんだぁ・・・。」
相原さんの話しと、遥の話しが合わないので、高野さんはいぶかしげな表情を浮かべた。
それを変に思った遥は、『どうしたの?』と、絵里に聞いてみた。
「う~ん、さっき相原さんから電話があって、何だか片瀬さん、風邪をひいてるみたいな事を言ってたんだけど」
『えっ、そんな事言ってなかったけど』
「そう?う~ん」
絵里は、遥に言って良いのか、言わない方がいいのかを迷っていた。
『どうしたの、絵里?』
歯に物が挟んだみたいに、歯切れの悪い喋り方をするので、直ぐに遥は、絵里に問い掛けた。
「う~ん、何かね『はぁ、はぁ』何だって」
『はぁはぁ?』と、遥は首を傾げた。
2人は歩きながら、自分の学部の掲示板の前まで辿り着くと、今日の教授の講義は休講となっていた。




