54話 伝言ゲーム(1)
亜季ちゃんは、近くのスーパーで買い物をしてきてくれて、消化しやすいお粥と、生姜をおろしてお湯を注ぎ、その中にハチミツとレモンを入れた飲み物を作ってくれた。
スマホを見ると、昨日の晩、遥と長谷川さんからメールが届いていた。
あっ、しまった。昨日、遥にメールしてないや。
「お仕事お疲れ様です。寝る準備出来ましたか?」
少し時間が経ってから、2件目のメールも届いていた。
「無事家に着いたのでしょうか?それとも疲れて寝てしまったのでしょうか?」
その後、時間をおいて、3件目のメールも。
「う~ん、大丈夫ですよね。もし、このメールを見たら返信して下さい。待ってます」
う~、心配しているなぁ。
熱があってしんどかったけれど、布団の中で横になりながら、遥に返信のメールを送信した。
「昨日、メール出来なくてごめんね。横になったら疲れて寝てしまってて」
暫くして直ぐに、遥からメールが届いた。
「おはようございます、片瀬さん。うううん、気にしないで下さいね。疲れている時は、早く寝るのが1番ですよ」
「ごめんね、心配かけて」
「うううん、でも事故なく無事に帰ってて良かったです。またメールしますね」
「うん、ありがとう。遥も大学、気をつけて行きなよ」
「は~い、行ってきま~す」
僕は、遥に心配かけまいと思い、風邪の事は触れなかった。
え~と、長谷川さんのメールは~、と・・・。
「片瀬、昨日帰りしんどそうやったけど、大丈夫かいな?」
あら、珍しい。心配してくれてるメールだ。長谷川さんには、電話で済まそ。
「あっ、もしもし、長谷川さん。おはようございます」
「おう、おはようさん。大丈夫かいな?」
「はぁ~、う、う~ん。今は38度半ばくらいですかね」
「ほんまかいな、結構あるやんか」
僕は、鼻が詰まっていて思うように息が出来ず、「はぁ~、はぁ~」と、口で呼吸しながら何とか話していた。
う~、話すの辛い。
長谷川さんは、しんどそうに話す僕の事を気遣ってくれたのか、手短に「お大事に~」と、ひと言って電話を切った。
伝言ゲームで怖い所は、人が多ければ多いほど、最初に伝えた言葉が最後の人に伝わった時、訳が分からない言葉に変わっている事だ。
ましてや、それが長谷川さん等になると言うまでもなく、輪を広げて大きくなっていくのは必至。
この情報化社会においては、僕の遥への気遣いも太刀打ちできず、瞬く間に曲がった情報が遥に伝わっていくのであった。




