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ただ、君だけをみつめて  作者: 新木 そら
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41話  目的地は、飛行場

 7月24日、4連休の3日目をむかえた。

 

 仕事をしていた時は、1日の時間の経過が何だか長く感じていたのに、この休みの日に限っては何でだろう?あっという間に時間が過ぎていってしまい、本当に24時間を過ごしたんだろうかって疑いたくなる。

 しかもこの日は、昼から亜季と会う約束になっている。


 朝起きて掃除洗濯をし、気付けば11時30分を過ぎていた。


 うわっ、もうこんな時間。


 まるで年末年始、生番組を幾つか掛け持ちしている芸能人が、テレビ局から別の局へとせわしく移動しているみたいな感じといった所だろうか?

 

 何だか22日から、分刻みで動いている売れっ子の芸能人みたいだ。

 車を運転しながら、ふとそんな事が頭に浮かんだ。


 今僕が向かっている所は、亜季との待ち合わせ場所で、昨日、彼女を送り届けた駅のロータリーで落ち合う約束になっている。


 数分後、そのロータリーに辿り着くと、昼ご飯を食べに行こうとしているサラリーマンやスーパーで買い物に来ている人達で、僕の思っていた以上に駅前は人の往来で賑わいを見せていた。


 へぇ~、結構人通り多いんだな。どこだろう、亜季ちゃんは。


 僕の不安な気持とは裏腹に、薄暗くなった空を見上げて見ると、ひときは輝いて見える1番星をパッと見つけたように、人の往来が多い中でも彼女の姿を容易に見つける事が出来た。


 彼女は、駅下にあるコンビニの前の入り口付近で立っていた。

 

 服装は、I LOVE NY(NEW YORK)とプリントされている少し小さ目の白のティーシャツに、紺のスリムのジーンズといった何ともラフな格好だ。

 でも、麻衣の血を分けた姉妹だけにスラッとした体型で、昨日会った時と同じく、一瞬ドキッとするぐらい麻衣と良く似ていた。

 

 僕はそのコンビニの前の歩道に滑らかに車を止めると、彼女も気付いたのか僕の車の方へ駆け寄って来た。


「どうもすみませんねぇ、急なお願いで」


「仕方がないだろう、亜季ちゃんの一生のお願いなんだから」


 へへへっ、と彼女は笑顔で答えると、助手席側のドアを開けて乗り込んできた。


「亜季ちゃんの方が早かったみたいだったけど、ちょっと待った?」


「うううん、私もついちょっと前に着いたところ」

 

 そう?と聞き返してから、僕は車を発進させた。


「それで、どこに連れて行ってくれるんです?」


「着く前に言っていいの?」


「いずれ分かる事でしょ」


「まあ、そうだけどね」


「飛行場」


「飛行場?飛行場って展望台から見る所の?」


 僕は頭を振ってから、話しを続けた。

「あ~、そこじゃないよ。ちょうど飛行機が僕達の真上を通過してね、着陸する寸前を見る事が出来る場所があるんだ」


「へぇ~」


「何て言うか、ロケット花火を打ち上げたら、飛行機に当たるんじゃないかって思えるぐらいの所をかすめて飛んで行くんだよ」


「ほぅ、それは楽しみ」と、亜季はニッコリと微笑んだ。


「それよりか先に、昼ご飯でも食べに行こっか」

 朝起きてから朝ご飯を食べづにドタバタしてたから、思いだしたら急にお腹が空いてきたなぁ。


「え~と、あの~ですね~、片瀬さん」

 

 いつもと感じが違う彼女の控え目な話し方に、「どうしたの?」と僕は聞き返した。


「昼ご飯なんですけど、サンドイッチで良ければ作って来たんですけど~」


「えっ、そうなの」

 運転中にもかかわらず、僕は彼女の方に目を向けた。


「片瀬さん、前、前、前!!」


「あっ、ごめんごめん」


「もぅ、大丈夫?」


 僕は苦笑いしながら「どうしたの?」と聞いた。


「さすがに迎えに来てもらって、尚且つご飯までご馳走になったら、ちょっと申し訳ないかな~と思いまして」


「ちょっとだけ?」と聞きながら、左手でジェスチャーもしてみた。


「そう、ちょっとだけ」と彼女は笑顔で答えた。


「じゃあ、亜季ちゃんのそのちょっとだけの気持ちを噛みしめながら頂くとしよう」


「そうそう、滅多に料理しないんだから。ぱくついて食べるんじゃなくて、ちゃ~~んと味わって食べてよね~」


「はいはい。じゃあ、そこに着いたらありがたく頂きま~す」


 目的地に着くまで軽快な音楽と、他愛のない話しで盛り上がった。

 




 

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