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ただ、君だけをみつめて  作者: 新木 そら
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39話  人生の選択

「片瀬さん。教習所の指導員の仕事ってどう?」


「どうって?」


「やっぱり怖い?」


「まぁね」


 教習生も緊張しながら操作しているわけだから出来なくて当たり前だけど、ただ、急ハンドルや急ブレーキを踏まれて後ろの車に追突されそうになったりとか(てか、2回あるけど)、電柱に当たり掛けたとかされるので気を緩ませる時が少ない。


「でも、私が看護学校に行ってた頃って、確か片瀬さん、服屋さんで働いてたってお姉ちゃんが言ってたけど」


「そうだよ」


「やっぱり、あれよね。お姉ちゃんが原因だよね」


「うん、まぁね」と、僕は小さく頷いた。


「でも、よく辞めれたわよね、前の仕事。だって嫌いじゃなかったんでしょ?」


「まぁ、確かにそうだけど、でも今の仕事も面白いよ。教習生の運転が上手くなっていく過程を見ると」


「ふ~ん」


「所で亜季ちゃんは、もう看護士?」


「そう看護士」と言って、自慢げにピースサインをして見せた。


「へぇ~、凄いね。で、もう働いてるの?」


「うん」


「どこの病院?」


「ほら、つい最近、国道沿いにマンションみたいなおっきな大学病院が出来たでしょ」


「えっ、あそこで働いてるの」


「そう」


「ここからだったら電車で、隣の駅じゃないか」


「そうね~」


「へぇ~、僕等が大学生の頃、亜季ちゃん中学生だったのに。あんなにキャピキャピしていた亜季ちゃんがね~」と、ちょっと上から目線で彼女に話した。


「何よ~、その言い方~」

 反論して来た彼女に、僕は笑顔で返した。


「で、どこに配属されたの?」


「救急救命が必要な人が多く来るところかな」


「えっ、それってER?」


「まぁ~ね~」


「へぇ~、それはまた大変な所に配属されたね」


「されたんじゃなくって、志望したの」


「何で?」


「片瀬さんだったら分かるでしょ」

 少し間をおいてから、僕は黙って頷いた。


「そう言うこと」と、彼女も小さく頷いた。


 そりゃそうだよな。あの事故以来、僕だけじゃなく皆の人生が変わったんだから。


「最初は、ちょっと安易な考えで看護学校に入ったけど、お父さんとお姉ちゃんの事があってからね。考えが180度変わっちゃった」


 確かに、身内が2人も亡くなったんだから・・・。


「でも、ERに入ったら今まで勉強してたのが全く通用しないって言うか、理想と現実は違うわね。日々怒られっぱなしで」と、彼女は苦笑いを浮かべてた。


 そりゃあ、人の命を扱うんだから・・・、本当は、もっと話したい事があるんだろうなぁ。

 亜季ちゃん自身も心休める時間が必要だろうに。


「ねえ、ねえ、片瀬さん」

 僕は声には出さず顔を少し傾げて、何?っといった感じの仕草をした。


「あそこの壁に貼られてあるカレンダー、数字に赤丸で囲んでいるんだけど、あれって休みってことでしょ?」


 彼女がカレンダーを見ながらそう言うと、僕もつられてカレンダーの方へ目を向けた。


「あ~、そうだよ」


「じゃあ、明日もお休みって言うことよね」


「うん、まぁ、そうだね」


「じゃあさぁ、片瀬さん。一生のお願いがあるんだけど」と、彼女は両手を合わせて片目を瞑った。




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