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ただ、君だけをみつめて  作者: 新木 そら
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38話  麻衣の思い出の品

「所で、3年振りだよね。確か、あのお葬式以来だもんね」


「どう、ちょっとは色っぽくなったでしょ?」

 少し照れながら、顔の辺りで両手でピースをする仕草をして見せた。


「うん、ビックリしたよ」


「でしょ、でしょ」と、彼女は笑顔で答えた。

 

 さすが姉妹だけあって、話し方も麻衣の口調にどことなく似ているよなぁ。

 それと亜季ちゃんが着ている服、麻衣と初めてあった時に着ていた服装に間違いないと思うんど・・・。


「亜季ちゃんさ、さっきから気になってるんだけど、その服、もしかして麻衣のじゃない?」


「さっすが片瀬さんね。実はこの前、お姉ちゃんの部屋に入ったの。まあ何でかって言うと、お姉ちゃんの部屋の押し入れの中に、家族の季節物の服が仕舞ってあるんだけどね」


「へぇ~」と、僕は話しを合わせた後、アイスコーヒーを口に含んだ。


「で、そこに私の夏服も何着か仕舞ってあるから、取りに行ったわけ。そしたらさぁ、お姉ちゃんの夏服が入っているボックスを見つけて、何となくその中の服を取り出して着てみたの。これがもう、サイズがピッタリと合う服やズボンなんかが幾つかあってね。ラッキー、これで当分服を買わなくてすむぞ、って思ったの。でね、お姉ちゃんの机の上に置いてあった写真立てを見て、『お姉ちゃん、この中の服着て良い?』って話し掛けたら、お姉ちゃんが『いいわよ、大事に使ってね』って喜んで言ってくれたわ」


「へぇ~、さすが姉妹。何だったら僕の事も聞いてくれたら良かったのに」と、冗談半分で笑いながら、また彼女の話しの続きを聞いていた。


「その時そこに写ってた写真が、お姉ちゃんと片瀬さんで、その写真に写っているお姉ちゃんが着ていた服装がこれだったの。あっ、そうだ。もし、この写真に写っている服を着て片瀬さんに会いに行ったら、片瀬さんどんな顔するだろうな?ってそう考えたら、何だか会いに行ってみたくなっちゃって。で、ここに来てみたってわけ」


「それは、それは。亜季ちゃんの思惑どうりだったよ。もう見た瞬間、あっ!って、本気で思ってさ、本当に」と、素直に自分の気持を告げた。


「へへぇ、でしょ」と、彼女は屈託のない笑顔を見せた。

 

 僕は右腕の肘をテーブルについて、顔をその手に預けながら彼女の笑顔を見ていた。

 

本当、その笑顔も麻衣にそっくりだ。

 僕が、物思いにふけった顔をしてたんだろう。彼女は、それに気付いて、急にしおらしい顔つきになって話し掛けてきた。


「でもごめんね、片瀬さん」


「うん?何が」


「ちょっと悪ふざけし過ぎたかな?」


「うううん、気にしなくて良いよ」


 そうさ、そんな事あるはずなんてないじゃないか、あるはずなんてないってのは分かってるんだけど、もしかしたらまだどこか別の場所で、生きていてくれてるんじゃないかって、映画のように、いつかまた何年振りかにひょっこりと僕の前に現れて再会をはたすんじゃないかって、そんな淡い気持ちを心のどこかで期待している自分自身が確かに存在しているのも分かっている。だって、麻衣の顔をちゃんと見て別れを告げたわけじゃないんだから・・・。


「へぇ~、でもどんな写真だろ?」


「確か、お姉ちゃんから聞いたのは、初めて片瀬さんと出会った時に撮ったんだって言ってたわ。何でも片瀬さんが廊下を歩いている時に、お姉ちゃんが後ろから片瀬さんを呼び止めて、強引に友達になってもらったのって、笑いながらお姉ちゃんが話しをしてくれたのを今でも覚えているわ」


「あ~、あの時のか」

 そう言って僕は、押し入れに仕舞っていた埃がかったダンボール箱から、写真立てとアルバムを取り出した。


「この写真じゃない?」

 僕は、写真立てに入っている写真を彼女に見せた。


「そうそう、これこれ」


 僕は、その写真を見つめて、何も言わずにその時の事を思い出していた。


「多分、この時からお姉ちゃんは、片瀬さんの事を人目惚れしてたんじゃない?」


「まっさか~」


「分かるわよ~、お姉ちゃんの話し振りで。差し詰め、魚釣りの餌に食いついた魚ってところね、片瀬さんは」

 

 えっ~、と僕は苦笑いで答えた。


「そう、片瀬さんは、お姉ちゃんに釣られちゃったのね」

 まあ、麻衣に釣られれば、大体の男は喜ぶだろう。


「私は、釣られた魚を遠くから見守っている人、かな・・・」と、彼女は呟いた。


「えっ、何?」と、聞き返してはみたものの、彼女は頭を振るだけだった。


 僕は、アイスコーヒーをひと口飲んで、喉の渇きを潤した。




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