35話 ま、麻衣!?
話しは1週間前にさかのぼる。
1泊2日の旅行から、やっと見覚えのあるハイツに戻って来た僕は、駐車場に車を止め、仕事の時とは違って、トン、トン、トンっと軽快なリズムで階段を駆け上って行った。ちょうど2階のフロアーに着いたと同時に、ジーンズの右ポケットに仕舞い込んでいた家の鍵を取り出し、住み慣れた部屋の玄関先に目を向けて見ると、1人の女性が僕の家の玄関に背をもたれ掛けて立っていた。
するとその女性も僕の存在に気付き、こちらの方を振り向いた。しかし、薄暮の時間帯ともあって、夕日を背に向けて立っていた為、その女性の顔をはっきりと見る事が出来なかった。
うん?誰だろう、あの人。と、そう思い目を細めてみる。
その女性は、カーキ色のカーゴパンツに小花が描かれているTシャツ、そしてその上からは白の半袖シャツを羽織っている。背丈はすらっとした体型で、髪は肩よりも少し長めのストレートヘアーだ。
目の前に立っているその姿の女性を目の当たりにして、僕は瞬間冷凍でもされたかのような感じで体が一瞬硬直した。
ま、麻衣!?と、僕は小声で呟いた。
僕の頭の中は、走馬灯のように、麻衣と一緒に過ごした日々の記憶が一気に蘇ってきた。
確か・・・あの服装は・・・あっ、そうだ。思い出した。確か大学に入学してから3日目、忘れもしない麻衣と僕が初めて出会った時に、彼女が着ていた服装とそっくりだ。
ふと、そんな事を思い出して立ち止まっていると、その女性は、両手を後ろに回し、ゆっくりとした足取りで僕の方に近付いて来た。




