36話 麻衣の妹現る!!
「お久し振りですね。未来のお兄さんになるはずだった、片瀬さん」と、彼女の方から先に声を掛けてきた。
えっ!!と、僕は戸惑いを隠せずにその場に突っ立っていると、その女性は呆れた様子で答えた。
「亜季ですよ~、高科 亜季。もぅ~、忘れたって言うんじゃないでしょうね」
彼女は、腕を組んで少し前屈みしながら僕の顔を覗きこみ、頬を膨らませた。
あっ、亜季ちゃん!?
高まる鼓動を鎮めようと息を吐く。
「ま、まさか。忘れるはずがないだろ、麻衣の妹なんだから」
「どうだか~。何か反応が遅いと思うんですけど~」
彼女は、プイッと膨れっ面な顔をして、僕から目を背けた。
「それは~、あれだ。予告も無しにいきなり現れたもんだから・・・、え~と、そう、ビックリしたって言うか何て言うか・・・」
思いついた言葉を口にしたけれど、何とも取り留めがない。
「ほんとに~、何か言い訳くさいんですけど~」
彼女はまた、僕の方に振る向くと、苦笑いを浮かべながら、疑いの眼差しで見つめてきた。
「はいはい、どうもすみませんね~」と、僕は観念して頭を下げると、彼女は勝ち誇った顔で、「いえいえ、苦しゅうない苦しゅうない、おもてを上げい」と、どっかで聞いた事のある時代劇の台詞を言って、僕の肩をポンポンと軽く叩きながら、笑顔で答えた。
「それにしてもどうしたんだよ、突然」
「そんな事より、こんな所で立ち話しもなんだから部屋に上がって、て言う台詞はいつになったら聞かせてくれるのかしらね~、お兄~さ~ん」
う~、あぁ言えばこう言う所は、麻衣にそっくりだなぁ。
「あ~、ごめんごめん、つい。でも、亜季ちゃん、そのお兄さんは止めてよ」
僕は、彼女のペースにしどろもどろになりながら、そう答えた。
「は~~い、片瀬さ~ん」
やっぱり甘えた声で言う所は、昔、僕の知っている亜季ちゃんだ。
それから手に持っていた鍵で玄関を開け、僕は「汚い部屋だけど」と言うと、彼女は「お邪魔しま~す」と、軽くお辞儀してから玄関に入って行った。
太陽はいつの間には沈み、廊下の蛍光灯が微かに辺りを照らしていた。




