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ただ、君だけをみつめて  作者: 新木 そら
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24話  1泊2日旅行(12)~2人の告白編~

僕は、スッと立ち上がって、囁く様に彼女の名前を呼んだ。


「遠藤さん」


 彼女は、何か言いたげな顔をしているの僕の気持ちを察してくれたのか、どうしたのっと言う感じで少し顔を傾けて微笑んだ。


 しゃがんで座っていた彼女に僕は両手を差し伸べると、彼女もまた、僕の両手を握りしめ、後に続いて立ち上がってくれた。


 僕は、自分の今の「想い」を知ってもらう為に、遠藤さんに素直な気持ちを伝える事にした。


「僕は、3年前のあの時から人を好きになる事、いや、なろうとする事すら避けてきてたんだ。麻衣の事を忘れないように」


 遠藤さんは、僕の目を真っ直ぐに見ながら、黙って話しを聞いていてくれていた。


「でも、本当はそうじゃなくて、また誰かを好きになって、その人が突然この世から居なくなるんじゃないか、また不幸な出来事が襲ってくるんじゃないかっていう思いを麻衣のせいにして逃げていただけなんだ」


 そう、君に出会うまでは・・・。

 

「僕の心の中では微かだけど気付いていたと思う。ただ、それを認めるのが怖くて、気付かないようにしようとしていただけで・・・」


 僕達が立ち上がり喋り出した事で、虫達は声を潜め、静寂が訪れた。


「僕は間違いなく、遠藤さんの事が・・・」

 

 そこまで話すと彼女は、右手を伸ばして僕の口元にそっと触れ、その後の言葉を遮った。それから、手に持っていたスマホに自分の伝えたい言葉を入力し始めた。


『片瀬さん、そこまで話してくれて、ありがとうございます。

 私も片瀬さんに伝えたい事があります。

 私も片瀬さんの事が大好きです。

 

 しかし、私は、大学一回生の時にある事が起きてから突然、言葉が出なくなりました。

 それで私も、人との付き合い方も変わり、人と接する事に臆病になりました。

 その時から人を好きになるのが怖くなって避けていました。

 

 でも、そんな時、私の前に片瀬さんが現れて、なんだろう、暗い中で一筋の光が輝き始めたって言うか。上手い事言えないんですが、一生に一度の出会いかもって。

 

 私もこんなんだし、片瀬さんも色々あったみたいだから、自分の伝えたい気持ちを抑えていました。

 しかし、それが今、違うんだって分かったんです。

 自分の事だけでなく、ましてや片瀬さんだけでなく、亡くなられた麻衣さんの分も含めて好きにならなくちゃって』

 

 僕は、遠藤さんの「想い」を確かめてから、彼女の名前をもう一度囁いた。


「遥」

 

 僕と遥は、少しの間見つめ合い、そして暫くしてから目を閉じた彼女は、両手を胸の辺りで軽く握りしめ、ほんのわずか踵を上げた。

 

 僕は優しく彼女を抱き寄せ、そっと唇を重ねた。

 

 まるで蛍は僕達の様子を見ていたのか、再び優雅に舞い上がり、他の虫達は、「リーン、リーン」と賑やかな音色を奏で、まるで祝福してくれているかの様に鳴り響いてくれていた。

 

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