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ただ、君だけをみつめて  作者: 新木 そら
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119話  夢の中で(5)



 それから僕達2人はこの後の事を話し合い、午後からの講義の前に腹ごしらえをするべく食堂へ行く事に。


廊下を通り抜け外に出てみると、その途中に、僅かだけど桜並木になっている。


そんな桜の木に風がもて遊ぶ様に、時折強い風がビュッと吹くと、淡いピンク色の花びらがヒラヒラと舞い落ちる。


何でこんな綺麗な子が、僕の隣に並んで一緒に歩いてるんだろう。


急に一緒に行動する事になった麻衣の事が気にかかり、ふと彼女の様子をチラッと窺ってみた。


すると、さっきまで僕の横に並んで歩いていた筈の彼女の姿は無く、何気に後ろを振り返ってみると、彼女は不意に立ち止まり、懐かしい物でも見るかの様に桜の木々を眺めていた。


「どうしたの?」


「日本の春って良いよね、桜が見れて」


「うん、確かに。でも、ちょっと花が散り始めてるけどね」


「だから良いんじゃない、その一瞬の輝きが・・・。まるで私の人生のよう」


 何だか意味あり気な言葉に、僕は彼女の横顔を覗いて見る。彼女は桜が咲いている方を見上げてはいるけれど、何だかその目はどこか遠く、過去にあった出来事でも思い出しているかの様な淋しげな表情に見えた。


「別に麻衣だけじゃないよ。僕達の人生なんて宇宙から見れば、ほんの瞬きにしか過ぎないんだから」


「そうね」


 麻衣は、僕の言葉に相づちを打ってくれた。


 何だろう?彼女とは今日初めて会った筈なのに、親近感を感じる。


「ほんと、春って良いわね」


「そうだね」


 心地良いそよ風を肌に感じながら、ヒラヒラと舞う桜を2人して眺め、春の季節を楽しんでいた。


 暫くして、麻衣が僕に声を掛けてきた。


「さあ行こう、悠。これからずっと一緒だから」


 声を弾ませながら楽しそうに彼女がそう言うと、僕は、「うん」と返事をし、そしてまた、食堂へと足を運ぶ事にした。


しかし、その先には食堂に行く通路は無く、目の前には、幅は広いけれど歩いて渡れるくらいの浅い川が流れていた。


 麻衣に続いて僕も歩き出そうとした時、60歳くらいの外国人夫婦が手に持っている紙を20歳くらいの女の子に見せて、流暢な英語でしきりに何かを尋ねている光景が僕の目に映った。


 しかし、そこの場所だけは、さっきまでの大学の桜並木とはうって変わって、とあるショッピングセンターの通路の風景だった。


「ねぇ、麻衣。あの子、何だか困ってる様に見えない?」


「そう?」


 麻衣は素っ気なく答えるだけで、振り向かなかった。


「そうだよ、多分。ちょっと助けてあげなきゃ」


「駄目よ!!」と、強い言葉で僕の行動をたしなめた。


「えっ!?だって・・・ほら」


歩いている足を止め、困っている女の子の方を麻衣にも見てもらおうとして、その場所を腕を伸ばし彼女に教えてあげようとした。


「先を急がなくちゃ」


 困惑した表情を見せている麻衣をよそに、僕は何故かその困っている女の子が気になってしかたがなった。


「でも、あの子。はる・・・か!?」


 何故か、咄嗟に出てきた名前に、僕自身戸惑いを感じていた。


 は、はる・・・はるか?


 あれ、何だろう?何でそんな名前が出てきたんだろう。何か忘れてはいけない様な・・・何だろう?


 僕が何かを思い出そうとしている間に、麻衣はどんどん、どんどんと先を歩いて濡れる足を気にせず、川の中に一歩足を踏み入れた。


「ねぇ~悠。早く行きましょう」と立ち止まって振り返り、僕にそう言うと、彼女は右手を振りながら手を高く上げて僕を呼んでいた。


 すると突然、僕の背後から「片瀬~」、「片瀬さ~ん」と、ほぼ同時に僕の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。


後ろを振り返って見ると、体格の良い男性と、その横に並んで小柄な女性が遠くの方で立って叫んでいる。






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