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ただ、君だけをみつめて  作者: 新木 そら
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114話  遥と亜季、再び(3)



 話しの間に割って入る事が出来ない所って、何だか長谷川さんに似てるな。と思いつつ、亜季の話しを聞いていた。


「うん、まさに世界七不思議だわ」


 亜季はそう言って、乾いた喉を潤す為に温くなったコーヒーを半分位飲み干した。


「でもまぁ、そんな片瀬さんでも今は遥ちゃんが側にいないとね。心の病は、お医者様でも治せないし。だからね、遥ちゃん。これだけは覚えといて。片瀬さんは眠ってるけど、遥ちゃんの声は、ちゃ~んと届いてるんだから。今までの事、これからの事、遥ちゃんが側にいて色々話し掛ける事で、あなたの問い掛けにきっと答えてくれるから、きっと。でも、もしそうでなかったら、最終兵器として私が片瀬さんの頬を往復ビンタして、目を覚まさせてあげるわ」


 そう言って亜季は、頬を叩く振りをして見せた。


 やっぱり。


 亜季の最後の台詞に、遥はクスッと微笑んだ。


「あっ、やっと笑った」


 遥の微笑みに、亜季もつられて微笑んだ。


「すみません。ただ、今最後に言った言葉が、片瀬さんの仕事場の人で長谷川さんって言うんですけど、前にも亜季さんと同じ事を言ってたなって、それで」


「へぇ~、そうなんだ。えっと~、長谷川さんだっけ、一度どんな人か会って見たいわね」


「また今度、長谷川さんと会う機会があったら、そう伝えときます」


「所でさぁ、何か私が一方的に話してたみたいだったけど、ちょっとはアドバイスって言うか、不安は取り除けたかな?」


「はい、ありがとうございます。片瀬さんの側についていっぱい話し掛けて、目を覚ましてくれるよう頑張ります。だってそうしないと片瀬さんの顔が腫れ上がってしまうじゃないですか」


 2人は顔を見合わせてから笑いあった。


 亜季さんに言わなきゃ、これまでのこと。亜季さんも話してくれたんだから、私も・・・。


「あの~、亜季さん。さっき話してくれた3年前の事故の事なんですけど、実は・・・」


 亜季は話しの途中で片手を前に出して、遥の話しを遮った。


「もう良いわ。過去を忘れるつもりはないけど、昔の事ばっかり考えていてもね、前に進めないでしょ。でもあれだよね~、神様って残酷だよね。私とあなたとを出会わせるんだもん。これも運命って事なのかなぁ」


 その時突然、「ガラガラガラッー」と雷が鳴ったかと思えば、パチパチパチッと大粒の雨が窓ガラスを叩きつけてきた。亜季は、そんな外の様子をじっと眺めていた。


 亜季さんは気付いてたんですね、私の事。だから話しを遮ってくれたんですよね、3年前の事を。


 亜季は、自分の腕時計に目を落とした。


「あちゃ~、もうこんな時間。私そろそろ行かなくちゃ」


 残っていたコーヒーを、亜季は急いで全部飲み干した。


「忙しんですね」


「これが忙しいってもんじゃないのよ、今度はいつコーヒーが飲めるか。もう時間との戦い」


 亜季は椅子から鞄を持って立ち上がると、遥も一緒に立ちあがった。


「ごめんね、無理矢理突き合わせてもらっちゃって」


「いえ、そんな」


「あっ、そうだ。連絡先って教えてくれる事出来る?」


「あっ、はい。大丈夫です」


 それから2人は、お互いの連絡先を交換しあった。


「また、何かあったら連絡するわ」


 亜季はそう言うや否や、右手を上げてその場から立ち去って行ってしまった。


 遥も、上げていた右手を静かに下ろし、そしてまた、ゆっくりと椅子に腰を下ろした。


 つい先程まで亜季が座っていた椅子を見つめながら、ぽつりと彼女は呟いた。


「ありがとう、亜季さん」





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