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ただ、君だけをみつめて  作者: 新木 そら
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113/136

113話  遥と亜季、再び(2)



 浮かない顔をしている亜季の表情を見て、遥は少し不安な気持ちになった。


「ねぇ、多分今来た所だろうから、まだ片瀬さんの病室に行ってないわよね」


 さっきまでの亜季の声のトーンが変わった事に気付いた遥は、片瀬さんに何か進展があったのか尋ねてみる事に。


「えっ、あ、はい。まだです。片瀬さんに何かあったんですか?」


 亜季は、体を椅子の背もたれにもたれながら肩をすくめて答えた。


「それがな~んにも。ここに来る前に様子を見に行ったんだけどねぇ」


 さっき、ちょっと前に来た所って亜季さん言ってたけど、本当はもっと前から病院に着てたんだ。


「それで、あの~、片瀬さんは・・・」


 遥が話しをしている最中に、亜季がその続きの間にわって入ってきた。


「いつになったら目を覚ますのか、って事でしょ?」


 遥は、無言で頷いた。


「こればっかりはねぇ、さすがに私達に聞かれても分からないわ」


 そんなぁ。


「後は、片瀬さん次第ってとこね。片瀬さんが生きたいって願うんであれば、自然と目を覚ますだろうし、そうでなければ・・・」


 そう言ってから、亜季は再びコーヒーを口に含んだ。けれど、遥は黙って亜季の次の言葉を待つ事にした。


「夢の中で、お姉ちゃんと再会でもしてるんじゃない、若しかしたら」


 確かに。私がもし麻衣さんの立場だったら、もう一度・・・そう、もう一度、片瀬さんと逢って話しをしてみたいって思うだろうなぁ。


 亜季は、遥の沈んだ表情に気付きつつも、その話しを続ける事にした。


「えっとさぁ、3年前に交通事故でお父さんとお姉ちゃんが亡くなったって話し、前したわよね、片瀬さんの家で」


「うん」と、遥は頷いた。


「で、その当時、お姉ちゃんと片瀬さんが付き合ってたもんだから、だからさっき、そんな事もあったりするのかなぁ~て、ふと頭に過っちゃったりしたわけ」


 亜季のその話しに、遥の心はキュッと締め付けられる思いにかられた。


「本当は2人、結婚する予定だったのよ。片瀬さんに告白されたって、お姉ちゃんすっごく喜んでたもん。でも、あの日を境に全てが変わったわ。お姉ちゃんや片瀬さん、お母さんやお父さん、そして私も。何て言うか、カラーテレビが一変にひと昔前の白黒テレビに変わったって言うか。甘い、辛い、酸っぱいといった味覚が急に味気ない食べ物に変わってしまったって言うか。う~んとね、そう、笑顔がなくなったのよ。心底心から笑えるって事が・・・」


 私の知らない所で色んな人達が、悩み苦しんでたんだ。私は、お母さんの嘘に守られて・・・。


「でもあれよね、世界には原因究明が出来ていないミステリアスな話しってテレビなんかでちょくちょく観るけど、片瀬さんも世界七不思議の1つだよね~」


 えっ?と遥は頭を軽く傾けた。


「だってさぁ、あんな乙女心が分からない人にお姉ちゃんといい、遥ちゃんといい、何で片瀬さんみたいな人とくっ付くのかなぁ。ねぇ、そう思わない?」


 津波の様に一気に押し寄せる亜季の言葉に、遥は曖昧に「は、はぁ」と、返事をするので精一杯であった。



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