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ただ、君だけをみつめて  作者: 新木 そら
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111/136

111話  病院にて(3)



 長谷川と相原が病室を出て行ってから暫くして、再びドアをノックする音が聞こえてきた。遥はその音のする方へ振り返って見る。すると今度は、看護士さんが病室に入って来た。


 消灯時間で部屋の電気は最小限だけが点いている為、看護士さんの顔迄ははっきりとは分からない。


「すみません。ちょっと血圧測りますね」


 そう言われた遥は、看護士さんより少し下がって、彼女の様子を見ていた。慣れた手つきで脈や血圧を測り容態チェックしていく。


「う~ん、数値は異常ないのよね~」


 看護士さんの独り言を耳にした遥は、ピンッと張りつめていた緊張の糸が解けたかの様に、はぁ~と、深い溜息を洩らし、ホッとした表情を見せた。


「あの~、心配で側についていたい気持ちは分かるますけど、余り根詰めると・・・」


その看護士さんが遥の方を振り返りながらそこまで話すと、一瞬言葉を詰まらせた。


「あら、遥ちゃん。な~んだ、てっきり片瀬さんの身内の人かと思った」


「あっ、お久しぶりです」


「あれ~、声が出る様になったんだ。良かったね~」


「はい、お陰様で」と、疲れた感じの声で遥は答えた。


「一緒に居たい気持ちは分かるけど、あなたも体調を崩すかもしれないわよ。私達がちゃんと看てるから、一度家に帰ってしっかりと睡眠とって、また明日にでも面会に来なさい」


「はい、有難うございます。そう言って頂けるだけでも嬉しいです」


「で、ここまでは看護士の忠告。今からは、私個人の話しね」


 少し頬笑みを浮かべて、また急に親しげな口調で、亜季は遥に話し掛けてきた。


「所でさっき救急車が来た時ね、ほんっと~にビックリしたわよ」


「えっ、あ、はい」


「いや~、それがもう突然でしょ。救急車で片瀬さんが運びこまれて来るもんだからビックリしちゃってさぁ。ましてや可愛い女の子が一緒に救急車から出て来るもんだから、もう2度ビックリって感じ~」


 看護士の亜季と、今の亜季との喋り方が全然違うので、少し戸惑いを隠せずにいた。


「てか、何で片瀬さんは、車になんか跳ねられたりしたわけ?車の運転を教える人が・・・」


「はい、あの~・・・」と答えるだけで、どこから説明すればいいのか分からず、遥は考え込んでしまった。


「あ~、いいの、いいの、気にしないで。私も野暮なこと聞いちゃって、ごめんねぇ。忘れて」


 そんな時、亜季が持っている携帯電話から呼び出し音が鳴り響いた。


「あっ、いっけな~い、急患だ。急いで戻らないとまたどやされるわ」


 慌てて病室を出ようと亜季がドアを開けた時、もう1度立ち止まって遥の方を振り返った。


「ねぇ、今度時間が合えば一緒に話ししない?」


「えっ、あ、はい。良いですよ」


「本当!良し、じゃあね~、明日の夕方、16時頃何てどう?」


「はい、良いですよ。で、どこに行けば良いですか?」


「そんじゃあね~、ここの病院の入り口の前でってのはどう?」


「はい、分かりました」


「えっと~、私の名前、覚えてるわよね」


「はい、覚えています。高科 亜季さんです」


「うわぁ、嬉しい。じゃあ遥ちゃん。また明日ね」


「あ、はい、こちらこそ」


 遥は会釈をして頭を上げてみると、さっきまでそこにいた亜季の姿はもうなかった。


窓際に居た遥は、カーテンを少し開けて窓の外を見て見ると、雲の間から光り輝く月が見えた。


 何だか風みたいな人。亜季さん。亜季さんは知ってるのかな?私の父の事・・・。



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