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ただ、君だけをみつめて  作者: 新木 そら
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106話  まさかの出来事(4)



 何で相原が、お風呂場から出て来るんだよ!!てか、その格好は、ちょっと~・・・。


 長谷川さんもまるで銅像の様に固まり、相原の姿に目が釘付けになっていた。


 その姿は、さっきまで着ていた服装じゃないじゃないか。明らかにどっから見ても、さっきハンガーでカーテンレールに掛けていた筈の、僕が着ている男性用のカジュアル服の白いシャツだろうが~。


 小柄な相原がその白いシャツを着ると、ダボッとして大き過ぎるくらいで、お尻が隠れるかどうかの長さだ。それはともかく、ただ救いだったのは、彼女は下着を履いていてくれた事だ。


 彼女は、濡れた髪をバスタオルで丁寧に拭きながら、僕に話し掛けてきた。


「あぁ~、気持ち良かった~。片瀬さんもシャワーを浴びてきたらどうです。汗かいた後のお風呂って気持ち良いですよね~」


 汗かいた後って・・・。こっちの方が汗かくわ。


 長谷川さんの突然の出現と相原のその姿に、僕の頭の中は、もはや既にレベル5に達していて、避難勧告をする時に良く聞く、「ウィーン、ウィーン」と言う音が鳴り響いていた。


 取りあえず、この状況を理解していない相原に、何とか目配りをして長谷川さんの存在を知らせよう。


 そう思い何とか努力はしてみようとしたのだけれど、そんな気持ちとは裏腹に、髪の毛を拭いているバスタオルの隙間から僕の様子を窺っていた相原は、何とも訝しげな顔でこっちを見ていた。


「何をしてるんです?さっきから変な顔をして。あぁ~、何かいやらしい事考えてるんでしょ」


 目配りしても彼女に分かってもらえないので、「向こう、向こう」と小さく呟きながら、僕は人差指を小刻みにツンツンと押す仕草をして見せた。


 相原はふと、何気に後ろを振り返ってみる。さすがの相原も玄関先で佇んでいる2人の姿を目の当たりにして、『これはまずい!』と思ってくれたのだろう。右手の人差指で頭をポリポリと掻きながら、彼女なりにこの状況を説明してくれた筈だった、のだけれど・・・。


「いや~、えらい所を見られちゃいましたね~。何でこうなったのかを説明すると返って言い訳がましく聞こえるので~、だから、あの~、その~、ここは~ですね~、2人のご想像にお任せするって言う事で・・・」

 

 相原は苦笑いしながら、そう説明をした。


 彼女は、玄関先で佇んでいる2人にそこまで話すと、今度は僕の方に振り返って、愛想笑いをしながら話しを続けた。


「こんなんで良いっすか?」


 僕は左手で顔を覆いつつ、顔をうな垂れた。


 何て言うか、全然説明になってないし。最悪だ!!


 まるで綱渡りをしている最中に、誰かに下からボールを投げられ、バランスを崩してロープから転落している様な気分だ。


「いや、これにはですね~・・・」と、僕は間が悪そうな表情を浮かべで言い訳をしようとした。しかしその時、僕がいる洋室からは見えなかった、長谷川さんの背後で僅かにこちらを見ているもう1人の存在に、僕はやっと気付いた。

 

 えっ!!遥!?。

 

 ほんの一瞬、彼女と目が合ったのだけれど、彼女は直ぐに僕から目を背けて、その場から慌てて立ち去って行ってしまった。





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