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ただ、君だけをみつめて  作者: 新木 そら
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102話  まさかの出来事(1)


 その頃、僕と相原はと言うと、帰宅途中のコンビニで色々お菓子等を調達しに寄っていた。しかし、それよりもっと酷いのは、21時前の閉店間際のケーキ屋さんの前を通り過ぎようとしたときだ。

 後ろから相原にグイッと服をつかまれて、突然、「ストッ~プ」と声を掛けられた。


「なんだよ!?行き成り」


 相原はバイクから降りてヘルメットを取ると、人差指をケーキ屋さんに向けて、満面な笑みを浮かべて僕に訴えてきた。


「今日は私の誕生日ですよね~」と。結局、直径十八センチもある苺のデコレーションケーキを買わされるはめに。

 

 う~む。今日は、とんだ出費だ・・・。そんな事を考えながら、僕が住んでいるハイツの駐車場まで辿り着いた。


 ハイツの前の住宅街の道路は、昼間、意外と頻繁に車が通行する狭い道路だけど、夜になると街灯も少なく見通しの交差点で、特に今の時間帯は、車も人も殆んど歩いていない暗い夜道となる。


 バイクから降りた僕達は、シーンと静まり返っているなか、ハイツの階段をパタパタと歩く靴音と、何の虫かは分からないが時折聞こえてくる「ジィー、ジィー」と言う虫の音だけが耳に入って何だか離れなかった。


「なぁ、相原。幾らなんでもこれは、ちょっと大き過ぎないか?」


「良いじゃないですか~、年に1度の事なんですから。これぐらい奮発したって罰が当らないでしょ」


 右手にコンビニで買ったお菓子等が入っているビニール袋と、左手にはケーキの箱を持って、買わされた僕にとっては、十分罰ゲームな気がするんですけど。


 僕の家の前で手ぶらの相原は、両腕を横に広げて、「さぁ、着いた着いた~」と、突然大きな声で叫んだ。

 

 僕は人差指を口元に持って来て、「シ~、シ~」と相原を牽制した。


 彼女は、「こりゃどうもすみませ~ん」と言いながらも、表情には、反省の色が全く見られなかった。 

 

 この~、酔っ払いめ。自分は運転しないからって、さっきのアンリの店で、ワインをたらふく飲んでいたからなぁ。


 僕は玄関を開けると、ひと言相原に「どうぞ」と言った。そんな彼女も「お邪魔しま~す」と、ぼそっとひと言言って、家に入るなり僕の部屋を見回した。


「な~んだ。思ってた以上に、整理されてるんですね」


 多少は自分でも綺麗にしているつもりではあったけれど、お世辞でも同僚とは言え、女の子にそう言ってもらえたら何だか嬉しいものだ。でも僕は「そう?」と、無理に素っ気無く答えた。

 

 ふとベランダに目をやると、朝干した洗濯物が干しっぱなしだったのに気付いた。これにはさすがに僕も、体裁が悪いと思い、急いでベランダまで洗濯物を取りに行った。


「ねえねえ、片瀬さん」と、キッチンの方から相原の声が微かに聞こえてきた。しかし、3センチ位しかドアを開けていなかったので、彼女の声は、ベランダまでちゃんと届かなかった。


「何?」


「ちょっとシャ・・借りて・・・ですか?」


「えっ~!?あ~、何でも使って良いよ~」


 洗濯物を取り込むのに夢中だった僕は、相原がその時何て言ったのか、はっきりと聞き取れないまま曖昧に返答した。


 後で思い返せば、この時の対応が僕と遥との人生の分かれ道だったのかもしれない。




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