戦況(本来?)
「でも、あいつは、あんなことしたかしら?」
あいつとはルイスのことでしたあり、あんなこととは、訳の分からない女将軍や女元帥の任命である。ゲームの中でも、原作の中でもなかったはずである。
レムス王国を中心とする外国の軍の侵攻とアンダルシア公率いる軍の決起である。ナバロの働きかけで近衛の一部もアンダルシア公の軍に合流する始末であったあの“歴史”“戦況”の中には、さすがにそんな馬鹿なことを彼がしたことはなかったのではないか。
今考えてみると、かなり不利の中、結構頑張っていたような?
「あ、そうだ。撤退しようと弱気になったレムス王に私が励まして、最終的に勝利させたこともあったよね。あの戦いは、だから前半は頑張ったんだよね、あいつというか共和国軍は。あの時の指揮官はというと誰だっけ?あ、あいつよね。確か、最前線にいた。それから勝因はというと、援軍が到着したからだわ。」
“あれ?”似たようなことがあったことを思いだした。
「君は、今の内に逃げでくれ!」
と言うアンダルシア公に対して、
「何を言われるのですか?私は、ともに勝利の宴を開けることを確信していますわ!」
と励まして、彼の頼みを拒否した。
“この時も、援軍が間に合ったのよね。それで、形勢逆転、大勝利。ナバロが率いる近衛軍のときだって、そうだったわ。”考えてみると、どうして援軍が間に合ってばかりなのか?相手だって、そういうことは理解しているのだから、阻止しようとするはずだろう。今の共和国政府を見ると、そんな体たらくだけど…。あれ、こいつ、王位を簒奪して…た?いつ即位?あ、ボナパルトが出てこない。あれれ、でも物語では…。”ルシアは頭が混乱した。“あれ、単なる簒奪者、暴君のバカップルよね、共和国軍だなんて…。で、でも?”
共和国を、単なるルイスの簒奪として見ていた、自分の貴族世界の感覚、主観で見ていた、それが自分が知っていた物語だったとすれば、理解出来るのかもしれないと思いいたった。王都は占領して、ざまあして目出度し目出度しだけど…。
「いやいや、その後の幸せの人生を過ごしていたじゃない!」
“それも、ざまあした時の頭の中でのこと?”
突っ込みどころの多い物語だったが、自分の抱いている疑問が裏設定、あるいは書かれていないというだけと考えれば分かる気がしてきた。“ボナパルトは、ルイス派?それなら共和国政府側?書かれていない部分で戦い続けている?連戦連勝で、もしかして?大体、どんな理由でも、外国軍は憎しみを買うものじゃない?外国の王様が、コリントスの王位についたら…。”その可能性にたどり着くと、恐ろしいものを感じたのだった。アンダルシア公やナバロではと思ったが、外国軍を引き入れた裏切り者だし、レムス王国との関係で板挟みになりそうだ。自分を巡る3人が、そういったことを無視して手を取り合うはずはない。取り合えるはずがない。
“国内の支持を集めたボナパルトは連戦連勝、外国軍を駆逐、そして…皇帝ナポレオン?私は?私は…、私は国を売った…マ、マリー・アントワネット?”
それよりも重大なことを思い出した。
“待って。イサベラは、革命側?それが変わっていなければ、ルイスも?それじゃ、それじゃ、…私って反革命派、外国の力を借りて、人民を弾圧する側?そうだ、本来の所有者に土地を返す?農地改革を否定して、農民から農地を取り上げる?さ、最低じゃない、私って!”
「もしかして、ルイスの妻でなければ、婚約破棄無しでないと、本当の意味のハッピーエンドではなかったというの?ざまあの後、同じような最後が?」
頭がぼーとなるとともに、処刑台の自分の姿が思い浮かんで、冷や汗がでる一方で、体が冷たくなった。
「どうしたんだい?ぼんやりして。」
後ろから抱きしめられた。抱きしめてきたのはルイスだった、もちろん。“寝室にいたんだった!”
「ちょっと考え事をしていて。…これからのことを考えると不安を感じて…。戦いですから、どうなるか、分からないですから…。それで、ちょっと恐くなって…。」
必死になって考えて、とにかく、口から言葉を吐き出した。
「それで震えているのかい?分かるよ、戦いはどうなるか分からない。僕もいつも怖いよ。」
「あなたが?」
「その言葉は、君に返したいね。砲の美姫様?」
「は?なんですの?それは。」
「私も最近知ったのだが、君はそう呼ばれているようだよ、我が軍の将兵から。」
「ひどいですわ。」
後ろから抱きしめながら、“彼女がいたから、勝ったと言えるな。”しみじみと思っていた。さらに、“彼女の側にいたから勝ったということかもしれないな。共和国を、革命を、人民を裏切った、裏切り者なんだ。”そう思うと、自分が惨めになってくる。“だが、俺はルシアが欲しかったんだ。”思わず、彼女を抱きしめる力が強くなってしまった。
「痛い。」
「ごめん。」
力を緩める。彼女は、彼の方を向いた。そして、自分から彼の唇を奪った。はじめは主導権を奪われていたルイスもすぐに舌を絡め出した。相手の舌を奪おうとするような激しい口づけを、息継ぎをしながら、断続的に何度も続けた末、体を離したルシアは服を脱ぎだした。そのルシアを、ベットに抱きかかえて横にすると、自分も素早く服を脱ぎ、彼女を抱きしめた。その後は、上になり、下になる、組んずほぐれつ、大きな喘ぎ声をだし、涎を流しながら、
「言ったわよね、言ったわよね。道連れだって、…私を道連れなするって!どこまでも一緒に行ってくれるわよね。捨てないわよね!お願いだから、ずっと一緒にいて!」
と言いながら、飽くことなく、ルシアは何度も求めた。
「俺は、お前を得るためだけに…。だから、道連れにして、どこまでもいたかった。だから、離さない、離れないでいてくれ。」
彼も、不安を払うようにルシアを飽くことなく求めた。
そのまま、さらに涙をも流しながら、二人は、抱き合って眠りに墜ちていった。




