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婚約破棄から…てか婚約破棄されない。これでは、私のハッピーエンドは?え、道連れって?  作者: 安藤昌益


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20/33

こうなったら!

 イサベラは、民衆の歓呼する姿にも、アンダルシア公が笑顔で駆けよってくる姿にも、醒めた目でしか見ることができなかった。

 数日前、逮捕され、監獄に連れて行かれようとしていた、処刑台行きが確実という状況で、民衆は、その彼女の姿に歓呼の声を上げ、罵倒の言葉をぶつけていたし、アンダルシア公はというと、我関せずと、彼女を完全に無視していたのである。

 それが、突然、牢獄から解放され、この事態である。

 改革運動の高まりは、不作、カルタゴ等との戦争に伴うパン価格の高騰に抗議した妻達の行進が王宮内に侵入する事件を契機に、国王の幽閉から絶対王政の廃止、国民議会の成立、共和国宣言にまで進み、農地の農民への解放へと急速に進んだ。最左派の水平派の力の功績が大きかった。しかし、水平派内の派閥争いから、過激派が台頭、穏健派、自由派の弾圧、粛清を開始した。イサベラは、急進的政策も、共和制も賛成したが、反対派への弾圧、自由な言論の抑圧、弾圧、虐殺には絶対反対を唱え、個々の政策にも自分の意見を言った。それは民衆の支持も、アンダルシア公の支持も受けた。水平派内の穏健派、弾圧反対派も彼女に協力した。しかし、水平派指導者で、過激派のロペスは、彼女の逮捕と処刑を命じた。しかし、その彼が、自分に反対する水平派幹部を大量に処刑したため、水平派の力、動員力を大幅に低下させ、その結果、革命保守派のクーデターを許し、逆に逮捕、処刑されてしまった。そのおかげで、彼女を含めた政治犯の解放となったのである。

 すっかり醒めてしまってはいたが、改革への情熱は失っていなかったし、態度を変えず、自分達の身の危険を顧みず、彼女を弁護し、支援し、助けた、少なくはない男女のグループがいたのを知っていたからだ。

“どんな手段を用いても、改革を実現させないと。”そう心に強く決めていた。だから、歓呼の声に応えるように、にこやかに手をふり、敢えてアンダルシア公に抱きしめられたのだった。

 「共和制の守護女神」、「自由の女将軍」、彼女に付けられたあだ名、二つ名である。新たにできた、五人の共同指導者による共和国体制の中に、彼女も招かれたが、共和国首脳にとっては飾りに過ぎなかった。それでも、彼女は飾りでない、行動を行っていった。

 時間的に少し相前後する時点で、ルイスとルシアは、すぐそばで、板に隔たれて、互いが見えず、互いの声が聞こえない場所で、周囲の者が

「?」

という反応をすることを叫んでいた。

「ヤマト!ムサシ!シナノ!お前らを絶対死なせないぞ!生きて凱旋するんだ!」

 ルイスだった。

「ヤマト!あなたは、アレクサンドロスに行くのよ!ここで沈むんじゃないのよ!」

 二人は、コリントス海軍旗艦戦列艦ヤマトにいた。ヤマトとその同型艦ムサシ、シナノは半ば孤立して、カルタゴ艦隊から、たこ殴り状態にあった。その中で、ルイスは艦隊の指揮をとり、ルシアは艦内で侍女達とともに負傷者の応急手当に奔走していた。

 ふと気がつくと、大砲の一つが、砲員が全員負傷したためか、静かにたたずんでいるのが目に入った。

「あの大砲を撃つわよ!玉を入れなさい!」

「でも、奥様?」

「一発撃てば、それだけ、勝つ、生き残れる確率が高くなるのよ!」

 ちなみに、ムサシ、シナノもルイスが命名したものである。こちらも、

「神のお告げだ。」

で、ルシアには

「君が言ったんだよ、子供の頃に。」

「また…。」

“こんな戦いばかり何だから!”

 戦場にまで同行させている侍女達に手伝わせて大砲を打ちながら、ルシアは、心の中で叫んだ。軍務に復帰後して約1年、陸に、海に、国内外でルイスは転戦している。それに、特別な従者として士官服を着て、侍女達とルイスと行動をともにしている。どの戦いも負けてはいないし、目的は果たしているし、もし敗北していたら大変なことになることばかりだった。それでも、勝利と言うには微妙だった。だから、共和国政府は、ルイスの罷免要求が度々取り上げられた。共和国政府が選んだ将校や監視委員が送り込まれて来た。見てくれで選んだとしか思えない将校にも頭を悩ませられるが、監視委員の横槍が、それがなければもっと楽勝だったのにと言う場合が多いのが困ったものだった。一度は、二人を処刑のため逮捕するとやって来た監視委員すらいたが、これは続いてやって来た監視委員に逮捕されて、本国送還、処刑台に消えたらしい。将校達は大抵、ルイスとルシアに好感を抱くようになるし、ごく最近の監視委員は友好的な人間だった。

 そして迎えたサマール沖海戦は、常に不運の連続の海戦となった。常に風向きがカルタゴ艦隊に有利な方向になったのである。何とか攻撃をしのぎ、風向きが有利な位置にたったかと思うと、途端に風向きは、またまたカルタゴ艦隊に有利な方向になるのである。それがはんぱではないのである。ヤマト、ムサシ、シナノがたこ殴りされながら、コリントス艦隊を支えていた。半ば逃げ回りながら戦っているコリントス艦隊は、この三艦がなければ完全に崩壊である。それは、戦いが二日目になっても変わらなかった。

「よし!放て!」

 ルシアが照準を合わせて、砲撃する。彼女は、自ら砲身を馬鹿でかい掃除道具で掃除して、火薬をつめさせ、砲弾を込めさせた。少しでも手が空くと、落ちていた小銃に弾を込めて放った。侍女達が、大砲の次弾装填の準備にもたもたしていると自らやった。一応、近くの敵艦に照準を合わせているが、当たるなどとは思ってはいなかった。それでも、やらないよりはましだと思った。“ゲームでも、小説でもこんな場面なかったわよね、確か。”同じ頃、ルイスも、同じように前装式ライフル銃を撃っていた。指揮の大半は、将軍や幕僚、或いは艦長に任せているので、時々手持ち無沙汰になると、甲板を何処から滑ってきたのを拾い上げたのである。次いでに、銃弾、火薬袋まで拾った。

「陸でも、海でも、こんなだな。」

 ルイスは思ったが、ルシアも同感だった。

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