ルイスとイサベラの思い
ルイスの姉妹、弟は特に暗躍も、過度の野心は見せなかった。弟は、まだ学生であり、姉は海外に嫁入りしており、妹ももう直ぐ結婚だから、野心を抱くのは無理があるが、だしてもおかしくはないが、3人ともルイスを擁護した。こんな困難な国のトップはお断りしたい気持ちが大きかったのかもしれない。
茶番、猿芝居とはわかっているが、
「本当に罰しろ!」
とは言い難い雰囲気もあった。
「さて、どうなることか?」
ルイスは、書斎の窓から月を見上げながら考え込んでいた。
彼は、子供の頃のルシアとの会話を思い出していた。5歳の時、10歳の彼に唐突に、
「ルイス様は、私を婚約破棄して私を罪に堕とすんですわ。でも、私にざまあされますの。」
と言いだした。初めは、断片的な内容で、聞き手の自分もまだ子供だから、よく分からなかった。しかし、それから何年かたつと話す方の話力などが向上、聞き手も、内容を考えることが出来上がるようになっていった。
最後に彼女自身がその話しを、彼にしたのは彼女が12歳の時だった。将来の夫達と出会い、行動を供にはする段の彼女の幸福感に浸る表情には嫉妬を、流石に感じたものだった。さらに、彼女の可愛らしさ、美しさをあらためて思い知った。自分を婚約破棄する婚約者と見ていることを窺わせる行動が面白かったのと、意外に気があったのと、好みの美人だったこと、そして、姉妹、母親以外では一番親しい女性だった(侍女達は対象外)ことから、婚約破棄をどうしてすることになるのか理解できなかったし、そしてするつもりもなかったし、その気も起きることはなかった。
「彼女の婚約破棄の話しを聞いたせいもあるかもな。」
婚約破棄から始まる自分の悲劇聞いたことから、彼女のもとにしばしば訪れるように心がけ、そのおかげで、彼女の美しさを認識できたし、気が合うようになった、彼女が子供の妄想だと主張する未来のために身に着けたスキル、趣味、性格のおかげでもある、それを見て、さらに自分を律してきた…かなとも思った。
「イサベラとは何だったのだろう?」
彼が卒業した翌年の入学、ルシアと同様、だったし、全く接触はなかった。あの卒業式の成績最優秀者に対するメダル授与に関することだけだった。
「できるだけルシア以外の女は見ないようにしていたからな。」
苦笑いをした、一人だというのに。
「しかし、何処で知り合ったのだろうか、俺は彼女に?色恋ざたで、婚約破棄など許されるわけはないし、学園内の揉め事で、断罪、婚約破棄、追放だなんてあり得ない。ルシアとの婚約破棄はレムス王国の裏切り行為から出来るとしても、これは彼女の話しには出てこなかったがな、なんでイサベラなんだ?女に目が行かないように、軍務、政務を熱心に勤めたが、そうでなければ、酒場やカッフェやティーショプ通いがもっとあった?進歩派の思想家、運動家にもよく会って話しをしたな。…もっと多かったら、彼女とも出会っていたか、彼女も改革派の闘志らしいからな。俺は彼女とともに、改革、革命を…。」
彼女との改革、革命の可能性に思いをはせていた彼は、ドアをノックする音で現実に帰った。
「入っていいぞ。ボナパルテ将軍が来たか?」
入ってきた執事が、
「はい。おいでになりました。部屋の前にお連れいたしました。」
「すぐに、部屋に。将軍。夜分、呼び出してすまなかった。」
小柄で、髪には嫌になるくらいポマードを塗りつけているが、有能そうで、意思の強いことが感じられる、そして、強い、輝くオーラを発しまくっている軍人が入ってきた。
イサベラは、いい加減に嫌になってきた。皆が、自分を改革の同士としてよりか、アンダルシア公の愛妃扱いするからだった。
裕福な、成り上がりと陰口をたたかれる法服貴族の男爵家の末っ子、第三子、次女として産まれた彼女は、才色兼備、贅沢や退廃に流されず、才能を努力により磨き、学業は最優秀、品行方正、歩く淑女の見本だった。その彼女の鋭敏な思考に、社会の矛盾や不公平、不公正が入ってこないはずはなかった。進歩的に思想、啓蒙思想にのめり込み、社会改革を志す人々の中に入っていった。初めは、彼女の女性としての美しさや男爵家からの財政支援をあてにされがちな存在でしかなかったが、次第に彼女の熱意、誠実さ、聡明さを知り、彼女を同士、リーダーとして集まる男女が現れた。その彼女の最初の行動は、王太子ルイスへの社会改革の建白だった。微温的、姑息な改革に明け暮れる男だったが、改革の方向は彼女と共通していたからだ。何度も、彼が学園を訪れる時を狙ったが、彼は婚約者のところに、用件が済むと一目散、二人でイチャイチャラブラブするばかり、国がこのような困難な状況にあるにもかかわらずにだ、あのバカップルは。本当に、あの、お気楽な二人は何を考えているのか、と苛立たしくなったものだ。
「でも、ルシア様、王太子妃様は意外だったわ。あの方は、進歩的な方だったわね。」
アンダルシア公に出会い、彼の支援もあり、広く、改革を目指すグループと交流が広がり、議会を通じての改革運動に加わることになった。そうなってみると、色々なグループ間の対立、暗躍の中で悩むようになった。だが、それ以上に、彼女をアンダルシア公の愛人視する動きは我慢出来なかった。彼女の改革思想、誠意、熱意、能力を否定されるものだからである。しかし、改革達成のためなら、彼の愛人になろうが、利用出来るものは全て利用すべきではないかとも思っている自分もいることも感じていた。彼の人望、人を惹きつけるカリスマ性、守旧派から過激な一派まで関係なくを持つ、懐の大きさ、清濁併せ呑む器が必要だということに、彼女も、感じていた。
「今日は、大きな会合になるぞ。」
アンダルシア公は、そう言って彼女が馬車から降りるのを手伝った。彼女が、馬車から降り、礼をいうのも待たず、すぐに彼女と腕を組んだ。そんな行動が、何故か如何にも自然で、非難出来ないオーラを纏う男だった。イサベラは、とりあえず、それに従うことにした。




